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43話 ベルガーの横穴。

『光石』を『星屑石』に名称変更しました。

 フェリシーに教えて貰いながら道具を買っていったけど、思っていたより道具は無難で、私の道具袋の重さはそんなに増えることはなかった。


 私の道具袋の負荷量はなんと約四十キロ、最大まで物を入れると四十三キロ程度の重りになる特注品だね、重さに応じて腰や腿に巻き付けるベルトを増やさないとパンツが落ちるけど、あまり考えずに物を詰め込めるからとても便利だ。


私自身はどれほど重くなっても構わないからいっぱい物を入れたい、とザスカーさんに頼んでみた所、現在の技術で作れる最大の負荷量を再現してくれたのがこの《トレジャーハンター一号》で、もっと負荷量の高いプロトタイプもあったんだけど、あっちはヘルべティアに『魔力が歪んでおる』なんて怒られたのでお蔵入りだ。


魔力を固定するのが難しいらしくて何も入っていない状態で三キロもするけど、私には感じない重さだから全然問題ない。



 王都から出て、四人で平原を歩いているとカナが口を尖らせながら愚痴をこぼした。


「ねえー、歩くのめんどくさーい。馬車出てからでもいいじゃんー」


 直後レティにチョップされる。

三人が手に入れた情報は本当に早いらしくて、本来ならダンジョンが見つかったと情報が出回るとダンジョンまで往復の馬車が出るらしいのだけれど、今はまだダンジョンまでの馬車が出ていないため徒歩で移動している。


徒歩で移動できる距離なのが幸いだね、王都から歩いても二日かからないくらいの近さだそうだ。


「この近さなら馬車なんて要らないじゃない、乗る人も少ないだろうし、最悪馬車出ないわよ?」


む、距離に応じて馬車が出ないとかあるのか、馬車も慈善事業じゃないし当然なんだろうけど。


「そうだ、たいれつ、へんこうある?」


「いや、今までと一緒で良いわよ、ただ、これから行く《洞窟型》のダンジョンは背後から挟まれる事も多いから、背後は任せる形になっちゃうけど平気?」


「もちろん」


 大きく頷いて答える、何もしないのは後で報酬を貰う時に罪悪感がつのるからあんまり好きではないのだ、三人とも連携がしっかりしているから戦闘中は下手に手を出せないし、背後の敵を一掃していられるならその方が良いね。


「どうくつがたって、ほかにかたちあるの?」


「うん、えっと、一般的には洞窟型が一番有名かな、他には《建物型》もたまに聞くよ、お城の通路みたいな場所だったり、広間だったりね」


「モンスターは圧倒的に洞窟型のが戦いやすいよー」


「洞窟型は虫や動物を元にしたようなモンスターが、建物型はアンデッドやゴーストとか人間を元にしたようなモンスターが多いわ、住み心地の問題なのかしらね」


「なるほど」


 私が聞くと三人が答えてくれる、そんな事を繰り返して歩いていると、私はなんとなく《ダンジョンとは何か》が分かってきた気がした。


・ダンジョンとは、自然現象から生まれる探索可能な洞窟や建物の総称である。

・ダンジョンにはまれに珍しいアイテムが落ちている事があり、それを求めて冒険者は探索をする。

・最奥には《コア》があり、細かく砕いて珠玉(ジェム)として使えるため相当高く売れる。

・ダンジョンからコアを奪わないと永遠にダンジョンの規模が大きくなり続けるため、できるだけ小さいうちにコアを抜いてダンジョンとしての機能を破壊しなくてはならない。(ただ、大きくなった所で問題はないらしい)

・ダンジョンの内部はどこに繋がっているのか不明で、一層は洞窟でも、階段を降りると突然建物の内部らしき場所と言う事が当たり前のようにあるらしい。

・ダンジョン内はモンスターが《湧く》事がある、同様に、トラップも存在する。


聞いた範囲だとこんな感じかな。

感覚的にはモンスターの巣に乗り込むって認識で良さそうだね、それ自体は何度か経験あるから問題はないと思う。



 話しながら歩いて日が暮れたら野営して、次の日もちょこっと歩いて漸くダンジョンの入り口に到着した。

切り立った崖の真ん中にぽっかりと大きな穴が空いている、まだ結構距離があるのにしっかり穴が空いているのが見えるから、そこそこ広そうだ。


ダンジョンの入り口前には既に何組かのパーティが来ているようで、入り口から少しだけ離れた所にポツポツとテントが張られているのが見える、キャンプ場みたいだね。


「よし、休憩ついでに軽食してから行きましょうか」


 私たちはテントとか持って来て無いし張る必要も無いから、そのまま草むらに直接座ってちょっと早いお昼ご飯だ。

道具袋に突っ込んでいた干し肉と炒り豆を取り出して、ちまちま食べながら洞窟を眺める。


「いりぐち、おおきいんだね」


「だねぇ、あんまり狭いと槍が振れないから良かったよー」


「洞窟内のモンスターはどれくらいの強さかしらね」


「あんまり強くないと良いね、あ、でも弱いとコア先に取られちゃうか」


 あははーなんて笑いながら話していると、一組のパーティが洞窟から出てくるのが見えた。

男性が二人に女性が二人、あまり浮かれた顔が見えないのはダンジョン探索の結果が芳しくなかったのだろう。


彼らはテントの方に歩いていたが、途中で私たちの存在に気づくと、一人の男がパーティメンバーに断りを入れてこちらに向かって来た。

短髪で無精髭の背の高い二十代くらいの男性、正直全く記憶に無い人なんだけど、レティたちの知り合いかな?


 男が近づくにつれて、ピリッとした空気が強くなる、レティたちの知り合いでも無いっぽいね、なんなんだろう。


「よぉ、三人娘と赤目って仲良かったんだな?」


「ん、なにかよう」


 突然の馴れ馴れしい挨拶についトゲトゲした反応をしてしまったけれど、男は焦った顔をしながら両手を振って謝った。


「すまねえ、情報を渡しに来ただけだ、身構えないでくれ」


「情報ぅ?」


「幾らで売るつもりですか」


 カナとレティも訝しげな顔をして聞いている、あからさまに胡散臭いしね、ちょっと身構える気持ちも分かる。


「五万でどうだ」


「高いです、却下」


「……すまねえ、ふっかけすぎた、五千でどうだ」


「逆に安すぎて怖いね」


「まあ、アンタらなら聞かなくても問題なく進めるだろうからな、正直な所タダでも良い話なんだ、ちょっとした雑談よ」


 なるほど、私たちの事を二つ名で呼んでいたし、私たちの戦闘力がしっかり分かっている人なんだね。

でもフェリシーが安すぎて怖いって言うのも分かる、私たちは相手の事が分からないから、何かしらの罠にかけようとしている人な可能性もあるわけだし。


「なら、話だけ教えて、情報に対する金額はそのあと決めるわ」


 レティが男に告げると、男は頷いて喋り出した。


「うちらのパーティはダンジョン探索を放棄する事に決めた、被害は無かったが、ちょっと厄介な相手が二層を守っててな」


「厄介?」


魔甲機兵(ゴーレム)だ、鉱石のランクは分からんが鉄以上、こっちの攻撃が何一つ通らなくてな、諦めた所だよ」


「二層への順路は?」


星屑石(ほしくずいし)に赤い斜線を付けてある、入り口から全部付けてるから、迷ったらそれを辿ってくれ」


「ゴーレムへの攻撃方法は?」


「剣での物理攻撃が二人と、魔法攻撃が一人、魔法は《アイシクルピアス》と《ストーンフォール》を使ったけど無傷だった。動きは速いが二層の門の前からあまり離れようとはしない、守ってるみたいだな」


「ゴーレムの攻撃方法は?」


「物理だ。近接格闘だったが、うちらが戦っている間は『警告、直ちに戦闘行動を中止しエリアから離れて下さい』なんて声が聞こえてたから、ただの威嚇だった可能性が高い」


「他に、攻略しそうなパーティは?」


「ゼロだ、有名どころは誰も見てない、あのゴーレムには勝てないだろ、もし無視して先に進めたとしても、二層の探索は危険すぎる、あんなもんが入り口を守ってるんだからな。ただ、一層は少なくとも五パーティくらいが見て回っているからアイテムは期待できそうにないな」


「一層は広い?」


「そんなに広くはないと思うが、分かれ道が多くてな。うちらはほぼ一直線に二層への道を見つけちまったから、広さは分からん、モンスターと戦っても二時間はかからなかったと思う」


 レティが聞き、男が答える、なんて事を繰り返した後、レティは「なるほど」と呟いて大金貨を取り出した。


「価値はあるわね、本当ならだけど。一万で良い?」


「ああ、そんだけ貰えりゃ御の字だ」


「じゃ、交渉成立ね、また何かあったらよろしく」


 一万グリス手渡された男が去った後、私たちも休憩を終えて道具の最終点検に移る。


「さて、さっきの話を聞いたように、一層は無視するわ、さっさと二層のゴーレムを倒して奥のアイテムを根こそぎ頂きましょう」


 レティが作戦会議のように私たちから一歩離れて伝え、ちょっと気になった私は手を挙げて質問する。


「ごーれむほっといたら、ぼうけんしゃ、みんなあきらめるんじゃない?」


「と、トートちゃんそれは悪魔的発想だよ……!」


 両手で口を隠してフェリシーが青い顔をする、後から来た他の冒険者にもし抜かれたら嫌だなと思ったけど、ダメなのかあ。


「実際問題、ゴーレムを倒せるパーティが混じっている可能性がごく僅かにでも存在する以上、それはやめておいた方がいいと思うわよ、時間が経つほどダンジョンも深くなっちゃうし、噂を聞きつけて強い冒険者に来られても面白くないしね」


「たしかに」


「もう異論はないわね? 道具の点検が終わったら行くわよ、目指すは二層、ゴーレムをサクッと倒しちゃいましょう」


 おー! と三人の掛け声が響き、私たちは洞窟の入り口へと向かった。

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