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楯無明人/真剣勝負再び?

「手合わせだぁ!?」


「うん、よろしくね?」



 謎の美青年ウィルは満開の笑顔で俺にそう言った。


 なにその笑顔、爽やかなのが余計怖いんだが。



「おい、カヤ! なに勝手に決めてんだ!?」



 俺はカヤに目一杯詰め寄って抗議をする。



「話の流れ上、そういう展開になったのよ。諦めなさい」


「どういう流れ!?」


「僕から志願したんだ。アキトと対戦させて欲しいって」



 ウィルが場違いなくらい、にこやかな笑顔で割って入る。



「は? お前が? なんで相手が俺なんだよ!?」



 俺がそう言うと、ウィルはキラキラした眼差しで強引に俺の両手を握る。


 男に相応しくないほどに柔らかい手の感触に内心驚く。



「君に興奮したからだよ!」


「マジで離せ!! は・な・せ!!」



 俺は本気の勢いでウィルの手を払う。


 何が嬉しくて男に手を掴まれて興奮宣言を受けにゃならんのだ。



「あぁ違う違う! 誤解さ。僕は君の熱い戦いに感銘を受けたんだよ」


「熱い戦いだ? 俺がいつそんなの……あっ」



 あのモルドレッドとの決勝戦か。



「あの鎧の大男との決勝戦、素晴らしかった! 特殊装甲系スキルに臆せず立ち向かい、魔槍まで相手にしながら逆転勝ちしてしまうなんて! 観ていてこう、グワッとこの身が震えたよ!!」



 ウィルは恍惚とした表情でその状況を思い浮かべるように語っている。


 俺自身、何をどうしたとかあんま覚えてないのだが。



「で、その強さをこの身で確かめたくて対戦相手に君を選んだのさ」


「はぁ、そらどうも。で、手合わせって言うが、なにすりゃ良いんだよ?」



 俺がそう言った瞬間、ウィルは今までのにこやかな笑顔を崩し、真剣な表情に変える。



「そうだね、決勝同様のルールで真剣勝負……はどうかな?」


「……またかよ」



 もうやだよあんな痛い思い。


 右腕粉々に粉砕されてんだぞこっちは。



「大丈夫、僕はあの鎧の男と違って手加減できる人間さ」


「あたかも俺より強いってスタンスなんだな? まぁ否定はせんぞ」



 だって俺このパーティで最弱だし。



「ただ……」



 俺は腰の英雄王の剣を引き抜く。



「あからさまに下に見られちゃ、男のプライドが黙ってねぇよ」


「ふふ、やる気になってくれた?」



 ウィルは体を覆うように羽織っていたマントを取り外す。


 ――そこには少々小振りな『白銀の槍』が収まっていた。



「ルールの確認をしようか。相手に参ったと言わせれば勝利、それで良いかな?」


「異論はねぇ」


「うん、良い返事だ」



 ウィルは白銀の槍を右手に持つ。


 次の瞬間、白銀の槍が巨大化し、身の丈ほどのサイズに変わる。



「サイズが変わった!?」


「アキトの光剣と同じような性質さ。僕の力に反応して展開する専用武器。名前は、スクラフィーガ」


「スクラフィーガ……その細い腕で振り回せんのか?」


「余裕余裕」



 なんかコイツ、只者じゃない気がしてきたな。



「アキトさん、頑張るっす!」


「応援していますからねー!」


「きゅっきゅー♪」



 外野の声援を背に受けて俺は武器を構える。



「アキト」



 カヤに呼ばれる。



「これは本気の真剣勝負よ。最初から光剣でいきなさい」


「言われなくても! はぁああ!」



 俺は魔力を込めて短剣へと伝達させる。


 次第に刃先から光の刃が出現し……



 刃渡り5センチの所で停止した。



「……あれ?」



 短剣よりもちょっとだけリーチが伸びただけの剣である。


 普通の片手剣よりもうんと狭いし、あの突撃槍とは比べ物にならない。



「な、なんで? あの時はもっとグワっと……あっれ!?」



 とどのつまり、英雄王の光剣にならない。



「まさか、まだ不確定要素があるなんてね」



 カヤが呆れた様な表情で言う。



「俺にもなにがなんだか……おっかしいな……」



 光剣の発動に必要な要素が足りてない……ってことか?



「ウィリアム」



 カヤが白銀の槍を構えるウィルに言う。



「見ての通り、この男は体たらくなの」



 ぐうの音も出ねぇが、ムカつく言い方だなおい。



「でも、このパーティには私の夢がかかっている。安易にメンバーは増やせない」


「うん、それで?」


「私が相手になるわ」



 カヤは虚空から魔杖を取り出して構えた。



「さぁ、やりましょうか」



 自信満々だけどあいつ防御一辺倒じゃん。大丈夫か?

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