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リーヤ/ヘルメス出征

 魔物の軍勢を制圧した数時間後。


 場所はヘルメスの屋敷。



「うっめぇえええええ!!」



 あたしは肉の余りの美味さに感動の声を上げる。



「リーヤさん、はしたないですよ。仮にも女性なんですから」


「仮ってなんだ仮って。れっきとした女性だぞあたしは」



 あたしは手に持っていた肉の切れ端をロウリィに向ける。



「な、なんですか?」


「てめぇも食ってみろ。叫びたくなる美味さだから」


「はぁ……淑女はどんなに美味しい物を食べても叫んだりはうっみゃあああい!!!!」



 お前も泣くぐらい喜んでんじゃねぇか。



「はっ!? い、今のは違います!!」


「はいはい、ほら残りのもたんと食え」


「犬扱いはやめて下さいっ!」



 あたしはロウリィがぶんぶん振るう拳を片手間で弾きながら周囲を見る。


 祝賀会、それが目の前で開かれている。


 エストの弟、カストルが催したものだ。



「リーヤ!」



 ロゼが駆けて来てあたしを呼ぶ。



「エスト見なかった?」


「あ? 見てねぇぞ。どっかで寝てんじゃねぇか?」


「あり得る! 屋根の上見てくるよ!」



 ロゼはどたどたと駆けて行く。


 落ち着きがねぇのは昔からマジで変わんねぇな。



「ローゼリアさん、何をしに行ったんですかね?」


「さぁ? エストをスカウトでもすんじゃね?」


「まっさかぁー」



 その数十分後。



「考えとくって言われたぁ! 断り文句の常套句! くぅ!!」



 不服そうに枕を壁に投げ続けるロゼがそこにはいた。


 投げ終えた枕をてくてくと歩いて拾いに行き、また壁に投げ続ける。



「おいおい、いい加減、あたしらの枕返せよ」


「あぁごめん! 興奮しちゃって」



 ロゼはあたしとロウリィに枕を返却してペタンとその場に座った。



「ローゼリアさん、なんでエストさんを仲間にしたいんですか?」


「すっごい強いから」


「子供かよ!」


「でも、エストさんに考えとくって言われた以上は待つしかないですよね」


「そうなんだよね……でもじっとしてらんない! あ、そうだ!」



 立ち上がって枕を振り被るロゼ。



「枕投げ大会開催しよう!」


「はぁ!?」


「そうと決まれば、リーヤさん討ち取ったり!!」



 あたしはそのロウリィが投げた枕を躱す。



「ちぃ」


「舌打ちしたかお前!? それでも金持ちの娘か!?」


「冒険を通して逞しくなったと言って欲しいですね。次!」


「おわっ!? てめぇ……! 今日は寝かせねぇからな!!」



 ……そして、3人で枕投げを夜通し行った翌日。



「……3人とも、昨日はドタバタ何をしていた? それに、目の下にクマが」


「何も言うなシグルド……まじねみぃ……」



 なんであんなにはっちゃけちまったんだ、昨日のあたしら。



「リーヤさん、本当に寝かせないつもりだったなんて……冗談じゃないですよ」



 大きな欠伸をするロウリィ。



「あたしは有言実行が座右の銘なんだ。喧嘩吹っかけてきたてめぇが悪ぃ」


「もともとはローゼリアさんが……! あれ?」



 ロウリィが視線を向けたのはヘルメスの里の入り口。


 ロゼはそこでエストが来るのを待っていた。



「エストさん、来ませんね」


「そりゃ、あいつにもやんなきゃいけねぇ事の1つや2つあんだろ」



 里から誰も出てこないと悟ったロゼは諦めた様子でこちらに歩いてきた。



「残念っ! そりゃ急だったし、無理だよね」



 落ち込んでいる様子のロゼにシグルドが声をかける。



「彼女の件は残念だが、それでも俺たちは進まなければならない」


「うん、そうだよね。気を取り直して次の町に行こうか!」




「そうじゃな、リヒテルを目指すなら次はマリンピアに向かうのが定石かのぉ」




 あいつの声が聞こえたのはすぐ近く。


 だが、姿が見えない。


 気配を消すのが上手いとは言っていたがこれほどのもんなのか。



「え? この声!? エスト!? どこ!?」


「ここじゃよ」



 そう言ってヒョコッと顔を出したのは『小さな竜』だった。


 しかも顔を出しているのはシグルドの襟首の所だ。



「「「はぁ!?」」」



 女3人の声が揃う。


 シグルドも今の今まで気付いていなかったという様子だ。



「え、エスト!? なにその恰好!? ちっちゃ!!」


「なにって、休息形態みたいなもんじゃよ。半竜人とて、竜人。こんなのは造作もないことじゃ」


「いやいや待って、待って待って、色々追いつかない!」



 混乱中のロゼを横目にシグルドが口を開く。



「俺たちの旅に同行してくれるのか?」


「うむ、あの悪魔を根絶するためと言われれば断る道理もあるまい。それにわしはお前が……よいしょ」



 ちびドラ化していたエストはぴょんとシグルドの服から飛び下りて人の姿に戻る。



「お前が気に入ったからの」



 人化したエストがシグルドに抱き着く。



「え、エスト!? 何を!! 離れろ!! 胸を当てるな!」


「ん? おぬし、女に免疫なしか? これはからかい甲斐があるのぉ」



 腕に頬をすりすりさせたり胸を押し付けたり、やりたい放題のエストを見てあいつが黙ってるわけもなく。



「えぇーすぅーとぉーさーん……!!」


「む? 殺気か? この殺気、只者ではないな」


「今すぐ離れて下さい! ずるいずるい!! ずるいです!」


「おぉロウリィか。おぬしなかなかの気の持ち主じゃな。将来有望ぞ」


「そんなことより離れろぉ!!」



 やれやれな状況だが、また仲間が増えたな。


 ――エスト・カエストス。


『竜拳』の異名をとるモンク、ってところか。



「それじゃ、行こっか」


「目的地は?」


「エストが言ってた通り、マリンピアかな」



 あたしらの冒険はまだまだ続きそうだ。



【シグルド編】第4章前編……終

いつもお付き合い頂きありがとうございますm(_ _)m

次回からまたアキト編が始まります!

更新日は明日を予定しております。


今後ともよろしくお願い致しますm(_ _)m

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