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ロウリィ/脱獄作戦決行

 夜も深まった頃、その日最後の見回りが行われた。



「5名全員いるな。よし、戻るぞ」


「それにしても、カストル様も酷な宣告をなさる。預言者様のお告げとはいえ、実の」


「おい、無駄口が過ぎるぞ」



 そんな会話をしながら見回りの兵士は牢を後にした。


 寝たふりをしていた私たちはそれを確認してそーっと体を起こす。



「みなさん起きてます?」


「起きてるよ、ロウリィちゃん」



 最初に返事をしたのはローゼリアさんだ。


 続けてシグルドさんとリーヤさんが返事をした。



「あぁ、起きている」


「ふわ……寝起きはつれぇぜ。もう少し寝てても良いか?」


「リーヤさんだけ置いて行きましょうか?」


「ちょ、冗談だよ。てかあたりがきつくねぇか?」



 いつもシグルドさんのことで私をからかうからですよー。



「全員起きたようだな。エスト、準備は良いか?」



 シグルドさんが隣の牢にいるエストさんに声をかける。



「ぐぅ……すぅ……ぐぅ……んん」



 彼女はぐっすりと眠っている最中だった。



「エスト? 起きろ、時間だ」


「……むにゃ……うぅむ」



 シグルドさんの呼びかけにうんともすんとも言わないエストさんに対し、リーヤさんが小さな石を拾って投げた。


 そして見事、頭に着弾。



「ほわっ!? 何をするのじゃ!?」


「するのじゃ!? じゃねぇよ! お・き・ろ!」



 エストさんは頭を振る。



「お、おぉ、そうじゃったそうじゃった。逃げるんじゃったな」


「てめぇ、自分が処刑の数時間前だって忘れてただろ?」


「あ、いや忘れとらんぞ。ただ睡眠も大事じゃろう?」



 ふわぁっとのん気に欠伸をするエストさん。


 リーヤさんが呆れた様な表情で私を見る。



「……おい、あいつおかしなやつだな」


「リーヤさん並の睡眠欲ですね」


「あいつと比べんなっつーの」



 ギィ、と牢の扉が開く。



「さぁ、出るよ」



 ローゼリアさんの言葉で一斉に牢を出る私たち。


 私は出て早々、今までの仕返しとしてリーヤさんの背後から殴打を試みる。



「てやっ!」


「おっと、そう簡単には殴られねぇぜ」


 

 案の定、ひょいと避けられてしまったけど。


 くっ……いつかひっぱたいてやりますから!


 そのさなか、シグルドさんはエストさんの手枷を外してあげていた。



「よし、外れたぞ」


「うむ、感謝するぞシグルド」



 久々に自由になったであろう両手の感触を確かめるエストさん。



「うーむ、爪が伸びすぎじゃ」


「気にするのはそこなのか」



 シグルドさんとローゼリアさんが先陣をきって地下牢の階段を昇り、屋敷の廊下に出たところで立ち止まる。



「そういえば私たちの武器って何処にあるの? 没収されたままだよね?」



 それに答えたのはシグルドさん。



「場所は不明だが、相応のスキルを創造すれば見つかるだろう。待っていろ」


「まぁ待て。それには及ばんよ」



 エストさんが私たちの先頭に立つ。



「おそらく武器庫に放り投げられていることじゃろう。こっちじゃ、ついて来い」



 私はリーヤさんと目を合わせる。


 ついて行くしかなくね? という視線を飛ばして来たので揃ってエストさんについていくことにした。


 すいすいと進んでいく彼女に対し、シグルドさんが問う。



「この屋敷の事情に詳しいんだな」


「なにせ住んでおったからの。それはそうと、ほれあそこじゃ」



 エストさんが顎をしゃくった先には大きな扉があり、その前には見張りの兵士が立っていた。



「ふむ、さすがにおるか」


「任せておけ」



 シグルドさんは右手を兵士にかざし、いつものようにスキルを発動させる。



「【技能創造】……【空間停止】」



 詠唱の終了と共にぴたっと兵士が動かなくなった。



「よし、行くぐほぉ!?」



 ローゼリアさんがシグルドさんを小突いた。



「何をする!?」


「あんたがちゃちゃっと【時空間魔術】の奥義クラスを創造するからむかついたの! 私だって習得に苦労したのに!!」


「だからといって小突く必要はないだろう!? ご丁寧に魔力を纏った右腕で!」


「あんたの体頑丈だから、こうでもしないと私の手が痛いし」


「こいつ……! とにかく行くぞ」



 武器庫に目掛けて駆けて行く4人の背中をじっと見つめる。



「ロウリィ? どうした?」


「あ、はい。今行きます」



 あんな風にシグルドさんと接することが出来るローゼリアさんがちょっと羨ましいな……なんて思ったらダメ、かな?


 そんなことを考えながら私は武器を求めて武器庫へと足を踏み入れた。

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