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楯無明人/決勝戦:モルドレッドvs……

 トーチカを停止させたカヤが闘技場から上がって来た。


 俺たちの祝福の言葉に対し勝利の余韻に浸ることなく淡々と口を開く。



「魔杖まで王手、といったところね」



 優勝賞品、魔杖レーヴァテイン。


 魔剣の杖バージョン、ただの武器であるわけがない。



「あれを手にすれば魔王の討伐に大きく前進することになるわ」



 カヤの言葉にイリスさんが返す。



「でも、マドカさんの手に渡った場合は逆のことが言えますね」


「したらカヤっちの夢も遠ざかるっす。それは阻止せねば!」


「お前ら、あたしの特訓のこと忘れてねぇだろうな?」



 リーヤさんが口を開いた。


 そう言えば優勝出来なかったら猛特訓みたいな話が発端だったな。



「まぁ実際のところ、お前らは十分パーティとして完成されてる。このまま送り出しても問題ねぇとさえ思う」


「じゃあ特訓は無しで良いのね?」


「あぁ。だがアキト、お前の力はまだ見てねぇ」



 ぽん、と俺の肩に手を置くリーヤさん。



「俺の力? ほぼほぼ皆無ですよ。レベルも20ちょいの平凡冒険者だし」


「平凡?」



 リーヤさんは右目の魔眼を開眼する。


 特異な模様な右目に浮かび上がり、そのまま俺を下から上に嘗め回す様に見て一言。



「驚くくらい平凡だなお前」



 魔眼のお墨付きを頂いた。


 死にたくなったわ。



「だが」



 リーヤさんは俺の腰に留められている英雄王の剣を指さす。



「その短剣は非凡だな」


「その剣はMHモデルよ。非凡なのは当然でしょう?」



 カヤの言葉にリーヤさんは首を傾げる。



「ミアが作ったんならそれも頷けるが、なんつーかその剣……もっと特別な気がしてんだよな。まるでお前専用みたいな」


「俺専用? この短剣が?」


「あぁ。お前にしか扱えない力がきっとあるはずだ。あたしのこの弓みたいに」



 リーヤさんは腰に付けた折りたたまれた武器を見せびらかす様に体を横に向ける。


 あれ、弓だったのか。双剣かと思ってたわ。



「とにかく、残りはお前らとマドカのパーティになったんだ。次が最後。悔いの無い様に全てを出しきれ。あたしは最後くらいあのクソ退屈なVIP席に戻るとする」



 リーヤさんは心底嫌そうな顔をしながら観客席の階段を上がって行った。


 俺は腰の短剣を引き抜く。



「俺にしか使えない力……それってあの」



「オーッホッホッホ!」



 この忌々しい声、マドカか。



「あなた、空気読めないの?」


「空気がこの私を読んで欲しいですわ!」


「イリりん、あの人なにを言ってるんです?」


「意味不明ですね」



 というやり取りの最中、他のマドカパーティが合流する。


 鎧の大男モルドレッドと運搬者、弓使いのパーティだ。



「ぞろぞろと……何しに来たのかしら?」


「改めて宣戦布告ですわ」



 マドカは腕を組んでふんぞり返るような姿勢こう続ける。



「それと、忠告にね」


「忠告?」


「そう。決勝では最悪死人が出るかも、という忠告ですわ」



 マドカのその言葉を聞いてこちらサイドのメンバーの表情が強張った。


 その様子を見てマドカは高らかに笑う。



「オーッホッホホ! 良いですわ、その苦悶に歪む顔!」


「……あなた、相変わらず歪んでいるわね」



 シリアスっぽい流れだが内心「お前が言うな」とツッコむ。



「うちのモルドレッドはね、手加減が苦手なんですの」



 こんこん、とモルドレッドの鎧をノックしながら言うマドカ。



「決勝のルールがもし純粋な力と力のぶつかり合いだとしたら、うっかりその人を殺してしまうかも」



 丁度その時、主催者のアナウンスが入る。



「栄えある決勝戦は1対1の決闘とします! ルール無用の力比べです!」



 最中、モルドレッドは直立不動のまま動かず、ただただぴりついた殺気を放ち続けている。



「あらら、見えない何かに導かれる様ですわね。悪い事は言いませんわ、棄権なさらない?」


「ふざけないで。ここまで来てそれはあり得ないわ」


「あら、死人が出るかもしれないのに?」


「それでもよ。死の危険があるのは普段の冒険も同じ。この場だけ特別だという訳ではないわ」


「その通りです」


「2人に同じっす」



 こうしてマドカパーティVS俺たちの構図が出来上がってしまった。


 ちなみに俺も3人に同感だ。


 イリスさんも、ナルも、カヤも自分がこのパーティーに存在する意味を証明して勝ち進んだ。


 ここで投げ出すなんて選択は下せるわけない。



「んー、それは残念ですわ。ならば精々、少しでも勝率のある人を選任するのね」



 マドカは去り際に俺を見る。



「おっと間違っても、この殿方の様な雑魚は専任しない方が身のためですわよ。こんな紙屑みたいな」



 次の瞬間、カヤがマドカの胸倉を掴んだ。



「アキトは、弱くない」


「……カヤ?」



 何でこいつ、こんな感情的に……?



「あらぁ? どうしたのかしら? この殿方の弱さが昔の自分と重なった、とか?」


「そんなんじゃないわ。ただ、何も知らないあなたがこの男を馬鹿にしているのが許せないだけよ。アキトがどれだけの辛い思いを抱えて生きて来たかを知らないくせに、気安く馬鹿にしないで頂戴」



 こいつ……俺の生い立ちを聞いてそこまで……。



「それに、この男を馬鹿にして良いのは私だけよ」



 込み上げてきた感動が消え去って行く。この女……!!



「なるほど、じゃあ決勝のルールを聞いても尚、棄権はしないと?」


「しないわ。そのモルドレッドという男がどんな力を持っていようと、私の盾ならすべてを防ぐことが出来る」


「ふぅん、大した自身ですこと。私より多少防御能力が高いくらいで良い気になって……まぁ、そこの存在自体がまるで『無意味』な殿方よりかはマシですわね」



 ……無意味……無意味か。



「カヤ」



 俺はカヤの肩に手を置き、息を吸って、ゆっくりと告げる。



「決勝は俺が行く。俺があいつを倒す」



 俺は……無意味な存在なんかじゃ……。

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