楯無明人/カヤとマドカ②
眼下の闘技場にはカヤを含めた挑戦者が立っている。
闘技場の中央に配置されたエーテル兵器を制圧するのが今回のルールらしい。ただし、一発被弾したら即失格とかなりシビアだ。
「始まるっす」
ナルがそう言った瞬間、火蓋が切って落とされた。
ダダダッっと開戦と同時に砂埃を巻き上げながら全方位に機銃掃射を行う2台のトーチカ。数秒の連射の後、舞い上がっていた砂煙が落ち始める。
「なんだあの連射速度!? ってかカヤは無事か!?」
「この程度でやられはしないわよ」
カヤは魔術の壁で機銃掃射を防いでいた。
「カヤ!」
「エーテル兵器、まったく油断ならないわね。1人脱落とは」
不意を突かれた1人が全身を真っ青に染めて立ち尽くしている。これで残りは3人。
カヤが杖を握り、口を開く。
「さて、どうしてくれようかしら」
「私が貰いますわ!!」
マドカが我先にと駆け出し、その動きに反応するかの様に銃口がマドカを捉える。
「おっと! アトモスフィア!」
マドカは慌てて壁を構築し難を逃れる。
「相変わらずの無鉄砲さね、あなた」
「そっちこそ、相変わらずのチキンぶりですのね。あなたが様子見をしている間に、まずは1つ、このイスルギ・マドカが頂きましたわ」
次の瞬間、機銃の1つが爆発した。
あいつ今、何したんだ?
「魔術の針だよ」
隣にいたリーヤさんが俺に言う。
「魔術の針?」
「あぁ。マドカは隠れる間際、練った魔力を針の形に変えて投げてたんだよ。それが機銃の銃口に入り、爆発四散したっつー訳だ」
「そんなことをあの一瞬で……? というか、錬金術師が攻撃!?」
「錬金術師は別に攻撃が出来ねぇわけじゃねぇ。ただそんなことしたら防御壁の強度落ちちまう。事実、最初の掃射でマドカの壁にはヒビが入ってた」
さしずめ、限られたポイントで攻撃にも振った錬金術師ってところか。
「オォーッホッホ! この視線! この歓声!! いずれもこの私に注がれていると思うと、大変興奮致しますわ!
「騒がしいわね、相変わらず」
カヤはそう呟いて動き出す。
エーテル兵器の射線上に壁を構築しながら安全に距離を詰める。
「あらぁ? どうしたのかしら? 先程から防戦一方ではなくて?」
「マドカこそどうしたの? まさか、機銃をたった1つだけ破壊したくらいで満足しているの?」
「そんな訳ないでしょう!? 見ていなさいな」
マドカは両手を体の前で交差させ、指と指の隙間に細長い物を現出させる。
あの細いやつが『魔術の針』か。
「行きますわよ!」
ダダダッっと再び行われた掃射を横に飛んで躱しながらマドカは腕を振り下ろす。
「はいっ! そこっ! もう一丁ですわ!!」
次の瞬間、3機の機銃が爆発した。
これにより片方のエーテル兵器はほぼ無力化された。
「どうかしら? これがこの私、イスルギ・マドカの」
「御苦労様」
カヤは機銃が爆発した隙に更にエーテル兵器に近づいていた。
「んなっ!? ずるいですわよ!?」
「漁夫の利よ」
てかあいつら、さっきからエーテル兵器に近づいてるけど何が目的なんだ?
「2人はあの停止スイッチを押すつもりではないでしょうか?」
イリスさんが指さしたのはエーテル兵器の中心。そこにはこれ見よがしに『停止スイッチ』と書かれたボタンがあった。
リーヤさんがそれを見て言う。
「あれを押せばあいつらは止まる。が、迂闊に近づけば……あぁなる」
「ひゃっ!?」
もう1人残っていた魔導師が接近中に被弾、退場した。
残りはカヤとマドカのみ。
「これで私たちだけね。ふふ、あなたが機銃を破壊してくれたおかげで作戦が立てやすくなったわ。私の為にありがとう」
ニタっと笑うカヤ。いじわる絶好調かよ。
「な!? 決してあなたの為ではありませんわよ!!」
「そう? でも実際、私の方が停止スイッチに近いのだけれど?」
「むかっ!」
マドカは再び魔術の針を出した。
「ほんっとムカツキましたわ! この私があなたに劣っているなんて決してあり得ませんわ!」
「では劣っていない所を見せてくれるかしら? そうね、例えば残りの機銃を全て爆発させてみなさいな」
「いとも容易い事ですわ!」
マドカは6本の針を一斉に射出。
それらは真っ直ぐ銃口に飛んでいき着弾し、6つの機銃が一斉に爆発した。
「おぉーっと! マドカ選手が2台のエーテル兵器の制圧に成功! 同時にこの決闘大会の優勝チームも」
「まだ決まっていないわ」
カヤが主催者にカットインする。
「え、あなた何を言ってますの? どう見たって全部私が」
「まだよ。だって、機銃は1つ残っているもの」
カヤは壁から飛び出し、爆発炎上しているエーテル兵器に接近を始める。
すると次の瞬間に機銃から弾丸が放たれた。
「なっ!? 壊れてたんじゃ!?」
「壁は守るためにあるのよ」
カヤは全ての弾丸を躱した後、停止スイッチを押した。
「マドカの針を『1つだけ』弾いておいたの。だから、あなたの一撃では完全に制圧されていなかった。それだけのことよ」
「くっ……! やってくれましたわね!!」
これで決勝に進む2チームが決まった。




