シグルド/第3の大陸、キリアスへ
ミザエルの例に習い、この大陸カルナスの転移門は『カルナス』という町にある。
「次の大陸は極寒の大地、キリアス」
カルナスの町到着早々、ローゼリアが言った。
それに対しリーヤが肌を擦りながら言う。
「あそこすげーさみぃんだよな……絶対風邪引くぞあたし」
「大丈夫ですよ。こんなこともあろうかと……よいしょっ!」
ロウリィが鞄からいくつかの物を取り出した。
「防寒着人数分、火の魔法石を応用した発熱材多数、ストック人数分などなど、準備万端です!」
「あたしお前のこと大好きだわ!!」
「ひーやはん、くるひいでふぅ」
リーヤの胸の谷間に埋められるロウリィ。
その光景を見てローゼリアがするすると俺の横に来て呟く。
「羨ましいとか思ってる?」
「何を?」
「あ……ああいうの」
ローゼリアは自分の控えめな胸に手を当てて問う。
その顔はわずかに赤い。
「ああいうの、というと、胸の谷間に顔を埋めら」
「わぁあああ! 声に出して言わんでいいわ!」
「? お前が聞いてきたのだろう? 質問に答えるなら、別に、といったところだ。興味が無いと言えば嘘になるが」
「あんたって心配になるぐらい女っ気ないというか、女の子に興味あんの?」
――シグ、お前ほんとに男か? 信じられないくらい女っ気ないのな。俺を見習え俺を。
「……ふふっ」
不意に笑みが零れる。
キールのことを思い出して笑える日が来るなんてな……こいつが胸を貸してくれたおかげか。
「うわ、なににやけてんの? もしかしてシグルドって強烈むっつりだったり?」
「さぁ、どうだろうな?」
「否定しない辺りがもう確たる証拠よねー」
そんなやり取りをしながらロウリィが用意してくれたカルナスの転移門をくぐる俺たち4人。
転移の感覚の後、足が地面に突き刺さり冷たい感覚が襲って来た。
「む……これは……」
久方に見るが……雪景色だ。
ひらひらと舞う雪に光が反射して綺麗だ。
「ここが極寒の大陸か」
「あっれ、おっかしいなぁ」
開口一番そう言ったのはローゼリアだ。
「何がおかしい?」
「本来ならこんな場所に転移するはずじゃないんだよね」
リーヤが会話に混じる。
「転移門の座標のずれか?」
「レミューリア様が構築した物に限ってそれは無い気がするけど」
――周囲に何かの気配を感じたのはその時。
「3人とも! 俺の周りに!」
「動くな!!」
その様な声が聞こえて周囲の雪の中から何かが現れ、取り囲まれる。
雪の中に隠れて武装していたそいつらは一見では普通の人だった。
――角が生えている以外は。
「何者だ?」
俺のその質問に答えたのは部隊長らしき男。
「それはこちらが聞きたい所だ。貴様らは何故結界の内側にいる? どうやってここに侵入した? もしやあの悪魔の仲間か?」
「矢継ぎ早だな。どの質問から答えていいか分からないぞ」
「そうだな、すまなかった。では……」
俺たちに一斉に銃らしきものを向ける男たち。
「順次、取り調べるとしよう。着いて来い」
「……」
抵抗しても良いが、リスクは避けるべきか……。
「3人とも、従うとしよう。無益な争いは避けるべきだ」
「シグルドさんに賛成です」
「ったくマジで飽きねぇぜこの旅」
「はぁ……なんでこうなるかなぁ」
俺たちは謎の男たちに連行されることになった。
【シグルド編】第3章後半……終
こんにちは、天月秀です。
今作でシグルド編第3章は終了します。
謎の男達に捉えられたシグルド達がどうなるのかは4章に持ち越しですね。
次回からはアキト編3章後半が始まります。
マギステルを舞台に決闘大会に出場することになったアキト達の物語です。
更新は連休半ばか連休空けになると思います。
これからもチータレ!?を宜しくお願い致します!
(ブクマして下さると嬉しいです!!切実に!)




