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リーヤ/骨董市とナンパ男

 ――カルナス最西端の町ミルズ。


 魔導兵器の影響で砂漠化した西側の町であるため、当然この町も緑一つない殺風景な町だ。さっそくレコンが恋しくなっちまった。



「着いたぁ! 骨董市はあの広場の向こう側だって! 行こうよ! 買い物はスピード勝負!」



 ピューっと脱兎の様に走り去って行くロゼ。


 あいつ、子供の頃から変わってねぇな。



「リーヤさん、ローゼリアさんって昔からあんな感じですか?」


「あぁ、ロゼは基本マイペースで没頭したら周りが見えなくなるタイプだな、昔から」


「ふっ、やれやれだ」



 ロゼが駆けて行った路地の方へ歩いて行くと、人だかりが見えて来た。



「うっわぁー! こんなに人が集まる骨董市初めてです!!」



 と言ったのはロウリィだ。



「お前何回か来たことあるんだろ?」


「ありますけどこんなに人がいるのは初めてです! 久々の開催だから熱気も凄いですね!」



 視線を前に向けると売った買っただの声があちこちから聞こえてくる。どうやら競売はもう始まっている様だ。その光景を見てシグルドが口を開く。



「久々となると、持ち寄られている品数も例年よりも多いかもな。コレクターが数年温めていた品物だらけで期待値も高いだろう。これは、戦士としても胸が躍るな」



 ふふ、と微笑みを浮かべるシグルド。あたしはそんな彼に疑問を振ってみる。



「なぁシグルド、お前最近なんか変わったよな?」


「ん? そうか?」


「あぁ、なんかこう……柔らかくなった。前よりももっと良い男になった気がする。あたしが言うんだから間違いねぇ」


「俺が良い男? 止せ、褒めたって何も出ない」



 照れた様子で頬を掻くシグルド。


 ほら、やっぱ何か違う。ちょっとくっついてからかってみるか。



「照れんなってぇ」


「リーヤ!? 離れろ、歩き辛い」


「ほぉ、歩き辛いだけか?」



 胸をぐいぐい当ててみる。



「あ、いや……嫁入り前の女が気安く男に触れるな……離れてくれ、頼むから」



 赤面するシグルド。


 なにこいつ……ちょっとキュンとくんじゃねぇか。



「リ、ィ、ヤ、さぁーん……」



 背後から殺気にも似た気配。そちらを振り返るとロウリィがじとーっとした眼差しであたしを見ていた。おーこわ。恋する乙女、刺激するべからずだな。



「おっとロウリィ悪ぃ悪ぃ」


「べっつにー。全然気にしてませんよ? ふふっ……ふふふ……私にもっと胸があれば……!! 谷間か……谷間なのかっ!?」



 がくっと肩を落とすロウリィ。


 いやそういうことじゃねぇだろ。てかこないだ見たけどその歳にしては標準よりあると思うぜお前。



「ローゼリアを見失う。行くぞ」


「あ、シグルドさん! 置いてかないで下さいよぉ!」


「人が多い。俺から離れるな、ロウリィ」


「は、はいっ! あ、その……袖を掴んでても良いですか?」


「袖? はぐれないようにするなら……ほら」



 右手を差し出すシグルド。



「こっちの方が良い」


「ててっ、手ですか!? え、えっと……お、お言葉に甘えて……あ、ありがとう……ございます、シグルドさん」



 仲良し兄妹宜しく手を繋いで人込みに消えていく2人。


 ロウリィの顔が見た事無いくらい真っ赤だった。シグルドお前……天然ジゴロかよ。



「ったく、罪なやつめ」




「ちょっとそこのべっぴんさん」




 後ろから声をかけられた。



「あ? あたしか?」


「そうそう、そこの銀髪ポニーが素敵な君のことだよ」



 振り返ると膝を付いた男がいた。求婚でもするかのように顔を俯けて右手を差し出している。



「……誰だお前?」



 男は顔を上げる。整った顔つきの爽やかな男だった。


 腰には剣を携えている所を見ると冒険者だろうか?



「おぉ! 俺の見る目は間違ってなかったぜ。後ろ姿も素敵なら、正面はもっと素敵だ」


「あたしの話、聞いてるか?」


「あぁ、声まで美しい」



 あ、話通じない系の男だなこいつ。



「で、あたしになんの用だ?」


「この殺伐としたミルズの町に相応しくない程の美貌を持つあなたをデートのお誘いに、ね」



 ウィンクすんなキモい。



「ほぉ、見る目はあんな。だが、あたしは自分より弱い奴に興味はない」



 あたしがそう言うと男はキリッとした眼差しでこう言う。



「強さ、その点なら俺は問題ない。なぜなら俺は最強だからな」


「は?」



 シグルドの様にガッチリした体系ではなく、どちらかと言うとこの男はひょろい。


 それで強いと言われてもなぁ。



「あたしにはお前が強い様には見えないが?」


「おう、それは困ったな……どうすれば俺の強さを証明できるか……あっ」



 なんと、男はおもむろに上半身の服を脱ぎだした。



「ばっ!? お前変態か!?」


「これでどうよ?」



 男は下の軽装鎧以外を脱ぎ放ち、どんとあたしの前に立つ。


 そして、一目見て気付いた。その身体の異質さに。



 引き締まった身体つきよりも先に、無数の切り傷や矢の跡に目がいった。全身の筋肉は動物の様にしなやかで、それが全身にくまなく行き届いている。


 一言で表すなら、歴戦の猛者。戦士として完璧に近い身体つきだ。


 この男……かなり出来る。



「どうだい? これで俺の強さが」



「ちょっとそこの君」



 男はがしっと腕を掴まれる。掴んだのはこの町の保安官。



「はえ!? 何だっての!? 俺は男に抱きつかれる趣味は無いんだが!?」


「過度な露出は認められていない。こちらに来て貰おう」


「え、まじ!? あとちょっとだったのに!」


「あとちょっとでもねぇよ。あたしはお前みたいな軟派な野郎は嫌いだ」


「次! 次は落として見せるから! 待っててくれ! ぎゃああぁあ!」



 男は保安官にずるずると引きずられて行った。

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