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楯無明人/黒い瘴気の正体①

 MHモデルについて話をしていた時、背後の森奥から大きな音が聞こえてきた。ズシン、ズシンという像の足音の様な低い音だ。



「ふぅ……どうやら、気持ちを入れ替えなければならない様ね」



 カヤが真っ先に杖を虚空から出現させる。



「久々の戦闘って感じがするっす」


「確かにな。カルナス来てからロクに戦っちゃいねぇしな。丁度体がなまってた所だ」



 俺とナルはそれぞれ魔法石と英雄王の剣を手に持つ。



「……御三方にお話があります」



 黄金色の杖を手に持つイリスさんが真剣なトーンで俺たちに語り始める。



「黒いスライム、覚えていますか?」


「黒いスライム? 覚えてるも何も」



 ナルの魔法石の力を吸収し、カヤの投石を砂に変えちまったあいつのことだ。スライムの癖に強かったから忘れもしない。



「あの黒い瘴気を纏ったスライムの事ね。今その話をするってことは……」


「はい、こちらに向かってくる魔物も『黒の瘴気』持ちです。間違いありません、私の目は魔の力に対して敏感なので」



 イリスさんの眼球が金色に変わる。



「そう言えば、仲間にすればあの瘴気の正体も教えてくれると言っていたわよね?」


「はい、もちろん忘れていませんよ」



 イリスさんは金色の杖を体の前で構える。



「では、詳しい後は戦闘後に」


「もったいぶるのね」


「もったいぶってるつもりはありませんが、相手が待ってくれそうにないので」



 そして森の木々をなぎ倒し、鳴き声を轟かせながら、それは現れる。


 見た目は大きなゴリラの様な魔物で、全長3メートル。全身を体毛に覆われ、頭の両脇には角も生えている。そしてイリスさんの予想通り、全身を黒い瘴気が覆い尽くしている。



「イリスさん。全権をあなたに託すわ。私たちは何をすればいい?」


「カヤさんは防御をお願いします。アキトさんは陽動、ナルさんがトドメです」



 作戦を聞いて当然ながらナルが反論する。



「え、でも黒い瘴気纏った魔物には私の魔法石の攻撃は吸収されちゃうんっすよ!?」


「吸収なんかさせません。【討魔術式】……いきます」



 イリスさんが杖を地面に軽くトンと叩き付けると、しゃりん、と杖の先端の装飾が音を立てた。



「一体何を……ん?」



 目の前の巨大ゴリラの黒い瘴気が次第に晴れていく。



「あの瘴気は言わば魔の権化。よって、わたくしの【討魔術式】で祓うことが出来ます」



 イリスさんがそう宣言し終えた段階で黒の瘴気は完全に霧散した。



「わたくしの最初の仕事は終わりです。以後、サポートに回ります」


「上出来ね。さぁ行くわよ」


「おう!」


「はいっす!」



 俺たちは散開する。


 最前衛に俺、中衛にナル、最後衛にカヤとイリスさんの隊列だ。



「アキトさん、ナルさん、聞いてください。わたくしは後位の回復魔術が扱えます。怪我をしても大丈夫ですからね?」


「大丈夫って言われて……もっ!?」



 ブンと横に振るわれた腕を屈んで躱す俺とナル。



「あれ怪我どころで済むか!?」


「一発貰ったらアウトっぽいっす!」


「あ、死んでしまったら流石に無理ですから」


「笑顔でさらっと怖い事言うなよ!? あとそこの錬金術師!! 防御どうした!?」


「あなた達なら躱せると判断したわ」


「サボりたかったの間違いじゃねぇのか!? ったく!!」



 俺は振るい終えたゴリラの腕に攻撃を試みる。短剣を強く握りしめ極太の腕に……突き刺す!



「せいっ!」



 グサりと分厚い毛皮を貫通して腕に短剣が突き刺さる。



「うお刺さった! 斬れるみたいだ!」


「……おかしいわね」



 念写の巻物を持っているカヤが呟く。



「ステータスを比較した場合、本来なら攻撃が通るはずはないのだけれど……」



 この異世界ではステータスが重要視される。極端な話、攻撃力と防御力の大小でほぼ決着がつく。


 もっとも、武器の性能とスキルでそれを補うことは可能らしいが。



「恐らく、あの剣の能力だと思われます」



 杖に魔力を込めているイリスさんの言葉にカヤが返す。



「まさか【防御無効】のスキルでも内包されているというの? それはユニークスキルよ?」


「それは分かりませんが……それにしても英雄王の剣、あれからはとても懐かしい気を感じます。やはりあの剣の元々の所有者は……」


「イリスさん?」


「……いえ、こちらの話です」



 イリスさんは杖を振るう。



「魔物を拘束します! アークライト!」



 空から数本の光の柱が落ちてくる。


 その柱は巨大ゴリラを覆い、檻のように閉じ込めた。光の柱を掴んで破壊を試みるもそれはびくともしない。



「イリスさんナイス!!」


「イリスさん、その術式は?」


「【光魔術】です。わたくしこう見えて、色々使えるんです」


「頼もしいにも程があるわね。ナルちゃん!」


「万事準備整ってるっす!」



 ナルは緑の魔法石を握って腕を振り上げていた。魔法石の魔力の余波なのか、空気が震えている。



「風の魔法石、Sレート……風の太刀!!」



 周囲の風が収束しナルの腕に半透明の刃渡り5メートルの刃が形作られ、ナルは腕をまっすぐに振り下ろす。



「せええぇえい!!」



 腕を振り下ろしたと同時にヒュオっと風が巻き起こり、次の瞬間には巨大なゴリラが縦に真っ二つに割けた。うわー、相変わらずの超火力だなナルのやつ。



「わ! 効いたっすぅ!!」



 飛んで喜ぶナル。そりゃ嬉しいよな。



「やったな、ナル」


「はい! アキトさんもナイス棒立ちだったっす」


「それ全然褒めてねぇぞ?」


「今回は私の仕事は無かったみたいね」


「無かったんじゃなくてやらなかったんだろが」


「必要な時はちゃんとやるわよ。いい回避の練習になったじゃない」



 こいつ……!



「さてイリスさん?」



 俺には目も暮れずカヤはイリスさんに話を振る。



「そろそろ、あの黒い瘴気の正体を教えて貰いましょうか?」


「はい、分かりました。その為にはあの話をしなければなりませんね」



 イリスさんは近くの切り株に座り、俺たちにも座るように促した。そして、黒い瘴気の正体について語り始める。



「皆さんは『準魔剣』という言葉は聞いたことがありますか?」

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