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シグルド/マギステル潜入作戦、決行

「ここが、マギステルか」


 

 都市の中央には城の代わりに大きな工場が築かれており、周囲の鉄塔からは体に悪そうな黒い煙が立ち上っている。それに、住民の視線から怯えを感じる。



「あのど真ん中の工場で魔導兵器を作ってんのか……あそこを停止させれば……」



 拳を強く握るリーヤにローゼリアが諭す。



「気持ちは分かるけど今は堪えて。エルフのあなたはそれだけで要注意対象なんだから」


「だな。今は我慢する」



 フードを目深に被り直したリーヤと共に商人の振りをしながら先へと進み、『工場区画』の入場ゲートへとたどり着く。



「おい、止まれ」



 想定通り、武装した憲兵に止められた。



「はい、何でしょうか?」



 俺が愛想よく返事をすると横から小さな声で



「シグルドさんの笑顔、レアですね?」


「あいつ笑えんじゃんねぇ。いつもああだと良いのに」


「おぉ、無愛想なくせして意外に可愛い笑顔だな」



 という言葉が聞こえた。放っておけ。



「お前らは何者だ? 今日は誰も通る予定はないはずだが?」



 憲兵は俺たちに怪しげな視線を向ける。そう簡単にはいかないか。



「私たちは……」



 頭を働かせろ。この場に相応しい言葉はなんだ……大陸一の軍事力を有する都市で、自然な選択肢……一か八か、言ってみるか。



「本日は武器のご紹介に参りました。とても強力なものですので、一刻も早くご紹介したくて」


「強力な武器だと? 噂の剣か?」


「左様で御座います」



 憲兵の表情が険しくなる。選択を間違えたか? 



「となると、お前らはリヒテルの使者か。通って良いぞ」



 憲兵が門を開けた。



「有難う御座います。それでは」



 よし、第一関門突破。



「武器商人に成りすますなんて、シグルドさんは機転が利きますね?」


「力に溺れる奴らだ。強力な武器と聞けば通すと考えた。ある種の賭けだったが、成功して良かった」


「この期でブラフかますとは面白い奴だな。子供の頃にうっかり家宝ぶっ壊した時のハラハラを思い出したぜ。シルには悪いことしたな」


「妹のせいにしたのか……可哀想に。さて、侵入出来たは良いが製造元がどこか、情報を入手しなければならないな」



 ローゼリアがこれに返す。



「でもそう簡単に情報が集まるとも限らないよね? 魔導兵器はどこで作ってんの? って聞いて親切にここだよって教えてくれるとも思えないけど」


「あぁ、お前の言う通りだ。だからここは1つ工夫を凝らすとしよう」



 俺は工場区画を少し進んだ塔の前で眠そうに欠伸をしている憲兵に目をつける。



「一先ずはあいつが良い。3人ともついて来い」



 俺たちは武器商人を装いながらその憲兵に近づく。



「む、何者だ?」


「あぁすみません。道に迷ってしまいまして。なにぶん、まだ2度目なもので。お恥ずかしい」



 またしても背後からこんな会話。



「あんなシグルドさんもレアですね」


「あいつ意外に表情一杯持ってるじゃんねぇ。なんでいつもぶすっとしてるかなぁ」


「お前ら、シグルドをどんな扱いしてんだよ?」



 全くだ、とリーヤに同感しながら目の前の眠そうな憲兵との会話を進める。



「で、どこに行きたいんだ?」


「製造区画です」


「製造区画だと? それならこの先を真っ直ぐに……って、あそこは普段立ち入り禁止のはずだが?」


「なるほど、場所を知っているということで良いんだな?」


「は?」



 俺は右手で憲兵の頭を掴む。



「【精神支配】……眠いのだろう? 良かったな、眠ることが出来て」



 ばた、と倒れる憲兵を見て慌てた様子で3人が駆け寄ってくる。



「ちょっとぉおお! あんた何やってんの!?」


「落ち着け、眠らせただけだ。これから眠らせたこいつから情報を入手する」


「どうやって?」


「こうやってだ。【技能創造】……【記憶閲覧】」



 俺は記憶を覗き見るスキルを創造し、製造区画の場所を盗み見た。



「なるほど、あっちだな」



 俺は憲兵を裏道に寝かせた覗き見た記憶をもとに歩き出す。


 歩みながらリーヤが俺に問う。



「おいシグルド、さっきのスキルは?」


「俺はスキルを意のままに生み出すが出来る。それであの憲兵の記憶を覗かせて貰った」



 絶句するリーヤ。



「……なぁロゼ、こいつ何言ってんだ? 普通に反則じゃね?」


「あ、そう思った? だいせいかーい、味方で良かったよねほんと。召喚した私に感謝しなさい」



 控えめな胸を張るローゼリアを横目に進み続けると大きなトンネルの前に到着した。



「着いたぞ。ここが『製造区画』の入り口の様だ」


「ロウリィ、念のため地図に書き込んでおいてくれ」


「分かりました。それにしても、この感じ……あの悪魔と同じ雰囲気を中から感じます」



 ロウリィの言う『あの悪魔』というのはイリスを助けた時に遭遇したあいつのことを言っているのだろう。



「それだけ準魔剣の気配が近いということだろうな。やはり、魔導兵器と準魔剣の2つには関連性があると見て間違いないか」



 その時、ビィビィとけたたましい音が鳴る。



 ――警告、警告、侵入者あり。


 ――警告、警告、侵入者あり。



 赤いランプの点灯と共に目の前のトンネルの金属扉が下り始める。



「うそ!? 潜入がばれた!?」


「そうは思えないが、取り敢えず中に入るぞ」



 俺達4人は滑り込むように製造区画に入り込んだ。



 ――警告、警告、『廃棄区画』に侵入者あり。至急対処する様に。繰り返す。廃棄区画に……



「ん? 廃棄区画? ここって製造区画だよね?」


「あぁ、そのはずだ。この警告を真に受けるならば、俺たち以外にもう1組いるようだな、侵入者が」


「あたしたちの同志ってことか?」


「それは分からないが、そいつのせいで警戒度が上がってしまったとも取れるし、ここが手薄になったとも取れる」


「つまりは、善は急げってことですね?」


「あぁ、行くぞ」



 製造区画を進む俺達を待ち受けるものとは……。

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