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ローゼリア/旧友との再会


 第2の大陸、カルナス。


 魔導都市マギステルが保有する『魔導兵器』によって陸地の半分が死滅した大陸。


 別名、死に逝く大陸。


 実は、私が生まれた大陸でもある。


 ――もう、その町は砂になってしまったけど。



「やはりこの気配は準魔剣のもので間違いないだろう。俺が所有するこの2本ともぴたりと重なる」



 森の中を歩いているとシグルドがそう言った。


 彼の腰には『短剣』と『直剣』がぶら下がっている。短剣はフェネット家殺害に使われた物。直剣はイリスちゃんを襲った野盗が持っていた物だ。


 いずれもステルケンブルク家が探し求めている『準魔剣』と呼称される代物で、数年前から世界に流通し始めた『人造の魔剣』である。


 シグルドが口を開く。



「ローゼリア。今向かっているレコンという町、そこに行けばこの大陸の問題解決の糸口が掴めるのか?」


「レコンは反魔導兵器を理念に掲げている町なの。直接的な解決策は無いかもしれないけど、この大陸の近況は聞けるかも知れない」


「なるほど。ではその町で情報を……止まれ」



 森の中を歩んでいたその時、シグルドが私とロウリィちゃんの前に腕を出して制止させた。



「そこにいるのは誰だ?」



 シグルドは数十メートル先の巨木に向かってそんなことを言っている。


 誰かがいた気配はなかったけど……【気配消失】持ちの誰かが隠れているのだろうか?



 

『答えろ、お前らは誰だ?』



 返って来たのは女性の声。



『お前らの敵はレコンか? それともマギステルか?』



 その声が聞こえるのはやはりあの巨木の方だ。


 女性の声ではあるものの、男っぽいその喋り方。


 シグルドはその声に答える。



「その質問の意図はどこにある?」


『あたしの関係をはっきりさせるためだ。敵だと判断した場合、あたしの弓が速やかにあんたの脳天をぶち抜く』


「弓……射手か。2人とも俺の後ろから出るな」


「はい!」



 ロウリィちゃんがこれまた嬉しそうにシグルドの背中にピタッとくっ付いて隠れている。


 どさくさに紛れて何してんだあの子。



 にしても……。



 ――あたしの弓が速やかにあんたの脳天をぶち抜く。



 なんか聞いたことのある物言いなんだよなぁ……この声といい、強気な感じといい……まさか?



「ねぇ、もしかしてあなた……リーヤじゃない?」



 私がおそるおそる聞いてみるとその声の主がすぐに答えた。



『え、その声は……ロゼ?』



 あ、間違いない。彼女だ。



「そう! ローゼリアだよ! あなたリーヤでしょ!?」



 私がシグルドの前に立ってアピールすると巨木の枝の陰からエルフの女性が姿を現した。


 巨大な弓を携え、長い銀髪を頭の後ろでまとめている。



「ロゼ! 久しぶりだな!」



 その女性は巨木をとんとんと軽快に下り、こちらに駆けてきた。


 私もそれに合わせて駆け、抱擁を交わす。



「久しぶりだねリーヤ! 元気だった!?」


「元気も元気、超元気さ。ロゼも元気そうだな」


「うん!」



 そのやり取りの最中、後ろからシグルドとロウリィちゃんが歩いてやってくる。



「ローゼリアさんのお知り合いですか?」


「うんそう、私の幼馴染みたいなもんだよ。名前は、リーヤ・ハートネット」



 彼女の名前を告げるとシグルドが顎に手を当てて呟く。



「ハートネット? エインヘルのギルドにいた受付嬢のエルフもその様な名前だったが?」



 それに対して、リーヤが直々に答えた。



「シルを知ってんのか?」


「あぁ、短い間だったが世話になった」


「そうか。あいつもちゃんと頑張ってんだな」



 リーヤがシグルドに右手を差し出す。



「あたしはあいつの双子の姉だ。さっきは弓を向けて悪かったな」


「いや、構わない。俺はシグルドだ」



 握手を交わすシグルドとリーヤ。



「よろしく。にしてもよくあたしが隠れてるって分かったな? 隠れるのには自信あるのに」


「殺気には敏感でな。こいつはロウリィだ」


「ロウリィ・フェネットです。宜しくお願い致します」


「お前は礼儀正しい奴だな。好きだぜ、そういう奴」



 リーヤは続けてロウリィちゃんとも握手を交わし、私に視線を戻した。



「で、ロゼが何でこんな所に? シルからはしばらく屋敷で修行するって聞いてたけど?」


「それがさぁー、って長くなるから省略ね。正式に諸々継いだから今はこの3人で旅してんの」


「旅? その途中でここに?」


「そゆこと。で、例の兵器について情報が欲しくてさ。レコンに行こうと思ってるんだ私達」



 リーヤは私の言葉を聞いて少し俯き加減でこう返した。



「ついて来てくれ。ちょっと今はゴタゴタしててあんま人は入れたくないんだが、特別にあたしが案内するぜ、レコンに」



 ――新緑の町、レコン。


 そこで私たちが目にしたのは、凄惨な光景だった。

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