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楯無明人/紫の石刀

「あ、そうだ。装備を与えるのを忘れていたわ」



 カヤがそう言った。



「装備? そういうの待ってたわー。鋼鉄の剣とか鎧だろ? 一式くれ」


「一式? なに贅沢を言っているの? 1つだけしか与えないわ」


「この薄情者が!」



 カヤはふんと鼻を鳴らしてこう返す。



「残念ながら、そういう決まりなのよ。コール」



 煙と共に現れたのは『雑魚宣告書』もとい『念写の巻物』だ。



「さぁ、これを持って」


「爆発とかしないよな?」


「しないから早く」



 俺は嫌々その憎きを手に持った。



「んで、これを持って何をすれば?」


「念じて、どんな装備が欲しいのかを」


「念じる?」


「そう。あなたの念に反応して1つだけ装備が手に入るわ」


「まるでソシャゲのガチャだな。やり直しは出来んのか?」


「出来ないわ」



 ふむ、ソシャゲの様にはいかないか。



「ホントに念じるだけで良いんだな? 最強装備出すぞ?」


「えぇ、出せるものなら出してみなさい。そうなれば私も楽が出来るから」



 俺は右手に握る巻物に力を込める。


 さぁ何を願う。


 聖剣か? 無敵の鎧か? それとも瞬間移動を可能にする装飾品か?


 いずれにせよ俺の生存率を少しでも上げられるすげぇアイテムが良いな。


 

「ぐぬぬ……来い……強い装備よ来い!!」



 俺は強く念じ続ける。



「ぐぬぬぅ……おぉっ!?」



 俺の手に何かある。


 重量はそれほど重くない。というかほとんど感じない。何だったらそれを目にするまでほんとに装備が手に入ったのかを疑っていたくらいだ。


 全部カヤの悪い冗談で、俺をからかって何が面白いんだと文句を言ってやろうともした。が、確かに『それ』は俺の手に握られていた。



「なにこれ?」



 ……何て言えば良いんだこれ……何かに形が似てるんだが。



「まるで、矢尻の様ね。弓矢の先端に付いてる。あれよりは大きいけれど」



 あぁ、そうか、矢尻か。


 色は淡い紫でアメシストを連想させる。矢尻とは明確に異なるのは持ち手があるということ。シルエットだけを見れば酷く不格好な短剣にも包丁にも見えなくも……てかそろそろ良いか?



「いらねぇよ! やり直し希望!」


「出来ないと言ったでしょう? それがあなたの初期装備よ」



 これでどうやって戦えというのだ。


 もはや間接的な死刑宣告だろこれ。



「冗談だろ!? どう見たってその辺で売ってる短剣の方が強そうだぞ!?」


「ペーパーナイフとして使えば良いじゃない」


「お、確かにそれなら……そういうことじゃなくてだな!」



 最低の能力値に? 使い道の分からない武器? 雑魚以外の何者でもない。


 これであのおっかねぇ魔王を討伐するのなんて不可能以前の問題だろ。逆に「え、そんな装備で討伐に来たの? 片腹痛し」って引かれるわ!!



「大丈夫よ。あなたには何も期待していないもの……はぁ」


「ため息やめて。傷つくから」


 

 この初期武器、本当に役に立つのか?

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