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ローゼリア/この旅の目的

 タナトスを出て次の町へと向かう私たち3人。


 ロウリィちゃんがこの大陸の地図を見ながら私に問う。



「ローゼリアさん、次の目的地はミザエルで良いんですよね?」


「うん、ミザエルの転移門からカルナスに行く予定だね」



『カルナス』というのはここから北東にある大陸の名称である。



「1つ聞きたい」



 出ましたシグルドの質問タイム。



「次の町の名前は『ミザエル』。そして、この大陸の名前もまた『ミザエル』。理由があるのか?」



 なるほど、ごもっともな質問だね。私がロウリィちゃんと目を合わせると彼女は「どうぞ」という仕草をした。



「よし、私が語って進ぜよう」


「あぁ、頼む」


「結論から言うと、各大陸の名前は『転移門がある町の名前』をそのまま反映してるの。この大陸の場合は最北の町『ミザエル』に転移門があるから、大陸の名前も『ミザエル』。以上」



 私の懇切丁寧な解説を聞いて頷くシグルド。



「なるほどな。『転移門』とやらの有無が大陸の名称を決めているのか。時に、転移門とは?」


「それは私がご説明致します!」



 右手を上げて宣言するロウリィちゃん。なんかそわそわしてるなと思ったら解説したかったのね。



「転移門とは、時空間魔術で作られた門の事を差します。その昔、大召喚士レミューリア様が形作ったと言われていて、『ある場所とある場所を繋ぐ門』という認識で良いと思います。主に大陸間移動に用いますね」


「つまり、海をも越えることが可能な移動手段ということか。それともう1つ聞きたい」



シグルドが私を見て言った。



「ん? 何を?」


「この旅の目的だ」



 あれ? 言ってなかったっけ?



「え、ローゼリアさん、シグルドさんには説明しなかったんですか!?」



 これには流石にロウリィちゃんも目を丸くして驚いている。



「あ、あれ? してなかったっけ? どっかで言った気がするけど……」



 シグルドは首を横に振る。



「う、うそぉ!? じゃあシグルドは今の今まで何の目的意識も無く旅してたってこと!?」



 またしてもシグルドは首を横に振る。



「俺なりの目的ならある。この力を使って1人でも多くの人々を助ける。それが俺のこの世界での目的だ」


「だからあんた、タナトスで修理屋まがいのことをしてご満悦だったわけ?」



 シグルドが今度は首を縦に振る。



「俺は確かめたい。この旅を通して今の自分に何が出来るのかを。そして可能であれば、キールが願った『優しい世界』というものを作ってみたい。俺の中にあるのはそれだけだ」



 シグルドが発した『キール』という名前には、実は聞き覚えがあった。


 彼は時折、その名前を呟いてうなされていることがあるのだ。



 ――キール……行くな……。


 ――約束しただろ……キール……。



 そんなことをぽつり、ぽつりと呟いてうなされていた。


 あと、死ぬな、とも。


 シグルドは話を本筋に戻す。



「俺の話は良い。聞かせてくれないか? ローゼリアの旅の目的を」


「分かった、じゃあ言うね? 私の旅の目的は『準魔剣の収集』だよ」


「準魔剣?」


「そう、『人造の魔剣』の事だよ」



 それに対し、ロウリィちゃんがはいはい、と手を挙げる。



「それに関してこないだ聞いたときも不思議に思っていたんですけど、魔剣ってそんな簡単に人の手で作れる物なんですか?」


「シグルドが持っているようないわゆる『天然物の魔剣』を作るのはほぼ不可能だね。あれはどちらかというと自然発生的に出来るものだから。でも実は能力をそれに似せた物を作ることは可能なの。しかも、パッと見は普通の武器と遜色無し」


「見た目は普通の武器で、中身は魔剣ってことですか?」


「そゆこと。さすがに天然物に比べると能力は遥かに劣るんだけど、困ったことに厄介な性質は同じでさ。所有者を取り込もうとするんだって」



 私の言葉を聞いてシグルドは魔剣グラムを握る。



「魔剣は所有者を取り込む? 心当たりはないが」


「あんたは【魔剣使い】のスキルを持ってるからセーフ」



 私は話を本筋に戻す。



「おさらいになるけど私の旅の目的は『準魔剣』の回収。まぁ、普通の刀剣とほとんど見分けがつかないのが厄介なんだけどね」



 そう、『準魔剣』はパッと見ほんと普通の武器なのだ。どうやって探せばいいのよ大爺様。



「……魔剣を模した剣か……もしかしたら」



 シグルドが懐から何かを取り出そうとしたとき、ロウリィちゃんが突然叫んだ。



「2人とも! 前方100メートル先!!」



 私とシグルドは一斉に前を見る。


 その視線の先には……野盗に襲われている人達がいた。

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