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Sレポート/黙示録③

 私がその事を告げた時、カジオーは目を見開いて固まっていた。



「おめぇがあの男神サイナスだってのか……?」


「そうだ。私が創造の女神レミューリアと共にこの世界を創った神。この世界に『グリヴァース』と名付けたのも私だ」


「……信じられねぇ……」


「そうだろうな。だが事実だ。この世界の為に身を奉げ封印されていたが何かの拍子に目覚めカジオー、お前に拾われた」


「証明は出来んのかい? お前が世界を創る能力があることが証明出来ねぇんじゃ、さっきの話は無しだ」


「なるほど。確かにそうだな……こっちに来い。私の力を見せてやろう」



 私はカジオーを工房の裏の人目につかない場所に連れて行き、魔力を練った。



「サイナス……こんな所で何を……」


「世界を創るのだよ。転移門よ、開け」



 工房の壁に黒い渦が姿を現す。



「入れ」


「……」



 カジオーと共に転移門に入るとそこは真っ暗な世界が広がっていた。


 ここは私にとっても馴染みがある場所だ。



「なんだここは……真っ暗じゃねぇか」


「これは『無』の世界。かつて私もレミューリアと共にここからグリヴァースを創り上げた。これからお前が見ることになるのはそれに匹敵する所業だ。……ここに世界を構築する。いでよ、我らの居城よ」



 練った魔力を解き放つと瞬く間に宙に浮かぶ城が完成した。


 カジオーは尻餅をついて後ずさりをする。



「なっ……!? こんなの……人間業じゃねぇ……!!」


「信じる気になったか?」



 カジオーは視線を彷徨わせた後、頷く。



「これを見せられちゃ、てめぇが神なのは信じるしかあるめぇ。だがサイナス、さっきの話は本当なんだろうな? お前とレミューリアが揃えば世界を『再構築』できるって話は」


「もちろんだ。リアンは蘇り、お前は再び家族3人で暮らせる。俺とレミューリアが揃えば造作もないことだ」


「信じても……良いんだな?」


「あぁ、信じろ。信じて私について来い。ただし条件は先ほど提案した通りだ」


「準魔剣……作ってやらぁ。リアンが蘇るのなら」


「当てにしているぞ。これよりここを外典の世界、『アポクリファ』と命名する。ここから始めるのだ。世界の再構築を」



 私は世界を再構築することにした。その為には世界中を混沌に陥れる必要がある。世界の人々に恐怖を植え付け、破滅させる。


 その為に必要な力を、私はカジオーの腕に見出した。


 ――あの『魔法石を用いた刀剣』である。


 魔法石はこの世界のエネルギーの核である龍脈から作られている高密度のエネルギー結晶だ。カジオーはそれを鉄と混ぜ込む技術を会得していた。私はそれに目を付けた。


 魔法石は高密度のエネルギー結晶であるが故に使い方を誤ればすぐに暴走する。使用者の生命エネルギーを吸い尽くしてしまうことすらあるのだ。


 その力を剣に封じ込めれば、使用者を洗脳し、取り込む剣が作ることが出来る。


 私はそれを『準魔剣』と呼称した。


 そして、その力を鉄に練り込む技術はこの広い世界でもカジオーしか会得していない。つまり、準魔剣はカジオーにしか作れない。



「もう一度、家族で暮らすためなら俺はなんだってするぜ。待ってろよ……リアン」


(愚かな男だ……だが、私の計画に貢献したことに免じて亡き妻を蘇らせるくらいの褒美は与えてやっても良いだろう。私は女神レミューリアを復活させもう一度あの日々を蘇らせる……その為には多少の犠牲は止むを得ないか)



 計画は水面下で動き始めた。



(しかし、闇だけでは真の絶望は成し得ない……希望の光を探すとしよう)



 私は異世界への扉を開いた。


 眼前に広がるのは自然に満ちた世界。大陸の名はオーレリアというらしい。


 そうだな、手始めにここから探してみるか。


『救世主』足り得る人物を。

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