ローゼリア/束の間の休息:女湯②
「ねーねーロゼちゃん、久々にお背中流し合いっこしよ?」
髪を洗い終えるとシルフィーが私に言った。
「流し合い! ほんと久々だね! 昔はよく3人でやったよね。リーヤも混ざるー?」
「いやあたしはいい。いぃー感じに温まってんだ。もう出たくねぇ。つーかこの温泉気持ち良過ぎんだろ……ってルミナ、泳いでんじゃねぇよ! エストもどさくさに紛れて胸を揉むな!!」
「うーん、あっちはあっちでお取込み中だねぇ。じゃあお姉ちゃんの代わりにリサさん!」
「ふえっ!? わ、私!?」
シルフィーが温泉に浸かろうとするリサを捕まえた。
「うん、親睦を深めるのも兼ねてどうかな?」
「え、えっと背中を洗い合うって言ったわよね? 丁重にお断り」
「ささ、こっちだよ? 私はロゼちゃんをごしごしするからリサは私の背中をお願いね」
「え、えっ!?」
リサは半ば強引に椅子に座らされ、スポンジを持たされた。
並びは手前から私、シルフィー、リサの順番である。
「ちょっと、どうすればいいの!?」
「背中をごしごしすれば良いんだよ。さぁやってみよー!」
そうして背中洗いっこが始まった。
幼い頃に何回もやっていただけあって、シルフィーは私のツボを心得ている。ただ単に背中をスポンジで擦るだけではなく、指でほどよい圧をかけてくる。それがもう気持ち良いのなんの。
「ふわぁー……シルフィーの手、やっぱ気持ちいいよ」
「そう言ってくれて嬉しいよ。こうしてると魔導院の夏合宿を思い出すなぁ。ロゼちゃんもあの頃に比べて背中が大きく逞しくなったよね。胸は据え置きだけど」
「うっさいなぁ! ねぇ、リサはどう? 洗いっこもたまには良いもんでしょ?」
「え、えぇ、他人の背中を磨くのは稀有な体験ね。不思議な気分よ。それにしてもシルフィーの肌は水を弾くのね。羨ましいわ」
「えへへ、ありがと。じゃあ後ろ前を交代しよっか?」
と、シルフィーが言ったので私はスポンジを持って振り向いた。
目の前にはほのかに紅潮したシルフィーの背中がある。リサも言っていたけどやっぱり綺麗な背中をしている。
「じゃあ始めよっか」
「お、お手柔らかに頼むわね。そっと、そぉっとよ?」
「任せてよ。そーれ」
シルフィーがスポンジをぺちゃっとリサの背中に置いた時だった。
「んあっ……!」
リサがそんな声を出した。
「リサ? 今の声なに?」
「……な、何でも無いわよ。気にしないで」
シルフィーは再びリサの背中に触れる。
「ていやっ」
「んっ……ちょっ……あっ……そこはっ……」
シルフィーの背中越しにリサの甘い声が聞こえてくる。
「……ねぇシルフィー? ここからじゃよく見えないんだけど、あんたなにやってんの?」
「別に普通に背中をごしごししてるだけだよ? でもリサさん背中がなんか敏感みたいで。例えば……こことか」
「はぅっ!?」
「こことか」
「あぁっ……んっ……!! あ、遊ばないで!」
「遊んでないよぉ。ちょっと楽しくなって来たけど。首も弱いんでしょ? ほら」
「ちょっ首筋は……!!! だめっ……! 待って、ほんと、いい加減……んあっ……」
……なんか淫靡だ。
「なぁるほど。これくらいの強さが良いんだね? 私、感覚掴めました」
「掴まないで良いわよ! ぁん……!」
シルフィーの背中越しで一体何が行われているのか……見たいような見たくないような……。
続くこと5分後。
「ふぅーすっきりしたねロゼちゃん」
満面な笑みのシルフィーと。
「もうダメだわ……終わってしまった……錬金術師としての誇りは失われてしまったわ……ごめんなさいエリカお姉さま……」
何故だか打ちひしがれているリサ。あんな隅っこで膝抱えちゃってもう。
「じゃあそろそろ浸かろうか。リサー、あんたも入るでしょ?」
「ひっぐ……私はもう少しここにいるわ……えっぐ」
「あ、また泣いてる……敏感すぎるのも考え物だね」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
お風呂を出て男湯にいた2人と合流。
何故かお風呂に入る前よりも疲れているようにも見受けられる。
「変態騎士、どうされたのですか?」
「いや……知らない方が良いこともある。特にシズク、お前はな」
「?」
あっちで何があったんだろう? ま、いっかなんでも。




