ローゼリア/女性を魅了せよ:朝礼にて
シーラムの長老から続いてのシチュの発表があった。
「次はズバリこれじゃ! 登校中にぶつかった女の子は実は同じ教室の転校生だった、というシチュじゃ」
なにその偶然!?
しかもその場面でどうやって女の子をキュンとさせんの?
同じクラスだってことが発覚した場面からのキュンってムズくない?
「シグルドさん、お願いしますね! お姉ちゃんの仇を取って下さい!」
次の人質はシルフィーだ。
先程のリーヤの無念を背負ったシグルドは先手を願い出る。
「固定概念が俺を悩ませる。なまじアルトリウスのお手本を見たが故に上手く行かなかった! そうに違いない! 俺は俺らしく、行く!」
先手、やる気に満ち溢れたシグルドのターン。
「転校して来ました! 今日から宜しくお願いします!」
また先ほど同じ獣人の女の子が転校生を演じている。
朝にぶつかった女の子が偶然同じ学び舎にやって来た、その偶然に対して何らかのリアクションを取らなければならないみたいだね。
さぁシグルド、あの子を魅了するなら出だしが大事だよ!
「ほぅ……奇遇だな。パン女」
冷たいっ!! すっごい冷ややか過ぎる対応じゃん!
てか『パン女』ってなに!?
「あ、さっきの変な男!? さっきはよくも説教くれたわね!」
シグルドに対して魅了とは程遠い感情を抱いているご様子のその女の子。
これは一筋縄ではいかない感じになっちゃってるなぁ、ここの返しはすごく大事だけど……。
「俺は礼節を弁えない女性とは関わるなと教わっている。離れて座れ」
だぁああー……もう終わった。
「離れるもなにも隣の席なんですぅ! 出来ないし!」
「では、なるべく俺と関わるな」
「言われなくても! あなたみたいな野蛮人はこっちから願い下げよ!」
競技終了。
結果はもう確かめるまでもない。
ちなみにアルトリウスのターンはこんな内容だった。
「あれ? さっきもお会いしましたよね?」
「まさか同じ教室だったとはね。運命の赤い糸が君との間に視えるよ。これは偶然なんかじゃあない。もう立派な必然だ」
いぃー! なんか寒い台詞! 赤い糸て!
でも言われた本人及び広場の女性は既にアルトリウスにメロメロである。何やってもキュンとなりそうな雰囲気が漂っている。
これ、世界がひっくり返っても勝てないんじゃないの?
「授業も大事だが、俺はもっと大事な物を見つけてしまったようだ。どうだい、これから授業を抜けて一緒にお茶でも」
「はいっ!」
競技終了。
またもや女の子がお持ち帰りされてしまい、シグルドの敗北が決まった。
「お姉ちゃんの所に行ってきますうぅー!!」
「シルフィイイイィイーー!!!」
連行されるシルフィーに手を伸ばして叫ぶシグルド。
あーさっきも同じ光景見たんだけど。
「なんで皆さん、シグルドさんの魅力に気付かないんでしょう? 礼節は大事ですよ? シグルドさんはあの女性のことを思って言ってあげてるのに」
ロウリィちゃんも大概ぶれない子だ。
「くっ……俺が不甲斐ないばっかりに!」
シグルドが心底悔しそうに地面を叩く。
「女性を魅了するってなんだ!? どうすれば良いんだ!?」
本人は至って真剣なのに空回りしてる感がすごい。
対してアルトリウスは演目の空き時間に広場の女性も口説きにかかるほどの余裕ぶりである。
あ、たった今やりすぎてリサに杖で引っ叩かれたけど。
「さて次のお題じゃが」
そうこうしている間に長老が次なるお題を宣言する。
「次は修学旅行の夜というシチュエーションじゃ」
ん? 修学旅行って、なんぞ??




