表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/516

楯無明人/vs黒のゴーレム

 ゴーレムはゆったりとした動きでこちらへと向かっている。


 動きは緩慢だが、一歩がでかい。


 恐らく10分もすればヘルメスに到達し、全てを破壊し尽くしてしまうだろう。



「みんな、無事に持ち場に着いた様だね」


「中、遠距離組はこういう時楽で良いよな」


「はは、そうだね」



 俺とウィルはまだゴーレムに向けて駆けている最中だ。



「ねぇアキト。あのゴーレム、なんでヘルメスに向かっていると思う?」


「俺が知るわけねぇだろ。珍しいもんでもあるんじゃねぇか?」


「珍しい物……その意見は案外、的を射ているかもしれないね」



 俺とウィルも持ち場に到着。


 黒いゴーレムまで50メートルの岩陰だ。



「アキトが言う通り、今この場所には珍しい物がたくさんある。聖槍スクラフィーガ、魔杖レーヴァテイン、聖杖コーネリアス。そして、その名も無き剣。そのどれかに引き寄せられているのかもね」



 ウィルは俺が持つ英雄王の剣に視線を落とす。



「名も無き剣? 名前ならあるぞ? 『英雄王の剣』っていう立派な名前が」


「『英雄王の剣』というのは多分、後付けの名称だよ。ほんとはもっと別の名前があるんだと思う」


「どうしてそう思うんだよ?」


「なんとなく。言ってしまえば、勘だね」


「勘かよ」



 ズシン、という地響きがした。


 ゴーレムまでの距離、約20メートル。



「そろそろだね。この戦いが終わったら美味しいご飯を食べようね? 絶対だよ?」


「死亡フラグをさらっと立てるな!」



 その時、対『瘴気持ち』の戦闘では開戦の合図に等しい声が響く。



「いきます。わたくしに力を貸して下さい……コーネリアス!!」



 最後衛のイリスさんが聖杖に込めていた魔力を開放する。



「魔を討ち祓います!」



 神々しい光が辺りを包み込み、ゴーレムが纏っていた黒い瘴気が霧散する。


 これで魔法石に対する耐性は失われた。



「これが聖女と聖杖の力……やはり稀有だね」



 続いてカヤの合図。



「ナルちゃん」


「りょーかいっす! えっとえっと……これと、これ!」



 ナルはベルトに留めてある魔法石のうち、水と風をチョイスした。


 見た所、魔法石の価値を表わす『レート』は最低レートのD。


 だがそれも【特級魔法石使い】を習得済みのあいつが使うと……。



「水の魔法石、Sレート!」



 スキル能力で高レートと化す。



「押し寄せるっす! 大瀑布!」



 ナルの前方に大量の水が出現。


 その一切が激流となってゴーレム&俺たちへと押し寄せた。



「……おい、一応確認だが、ナルのやつ最前線に俺たちがいるの知ってるよな?」


「うーん、多分?」



 次の瞬間、激流が岩陰の俺たちを、まるで意思を持っているかの様に器用に飛び越した。



「ご安心下さいっす! ちゃんと分かってるっすよ」


「アキトは流しても良かったのに」



 あの錬金術師、あとで100回殺す……!!



「続けてぇ!!」



 ナルは風の魔法石の力を解放する。



「風の魔法石、Aレート! 吹き荒べ風よ!」



 ヒュオッという音と共に暴風が巻き起こる。


 周囲の雪を巻き上げながら次第に竜巻となり、ゴーレムを包み込む。


 さっきの水といい、今回の風といい、あいつ何を?



「いっちょ上がりっす」



 竜巻が一斉に霧散した後に残ったのは全身を氷に覆われたゴーレムの姿だった。


 まるでゴーレムの琥珀だ。


 あいつ、魔法石の力であんな大きな奴を足止めしやがった!



「さぁ、あとは煮るなり焼くなりっすね!」


「今回は楽勝だったわね。このまま何事も無ければ良いけれど」



 カヤが立てたその嫌なフラグは即座に回収される。



「みなさん! 油断しないで下さい!! まだそれは生きています!!」



 イリスさんの叫び声と共に氷にひびが入る。



「あれ? しくじったです?」


「あの馬鹿力……見た目に違わず、化け物ね」



 次の瞬間、ナルの氷が砕け散り、ゴーレムが再び姿を現わす。


 

「これは、いよいよ本気で討伐しなければならない様だね」



 ウィルが聖槍スクラフィーガを構える。



「僕たちの出番だよ。アキト、準備は良い?」


「それなりに。ただ期待はすんなよ」


「期待してるよ」


「取りあえずお前は人の話を聞こうか」



 俺は英雄王の剣を構え、ウィルと共にゴーレムへと駆けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ