表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/516

楯無明人/『槍使い』:ウィリアム・ベルシュタイン②

本作で100話目になります。

ここまで書けたのは読んで下さる皆様あってこそです。


ありがとうございますm(_ _)m

 カヤとウィルの決闘が終わった後、俺たちはそのまま野営をすることにした。


 5人で焚火を取り囲んでいるとウィルが口を開く。



「ウィリアム・ベルシュタイン、18歳だ」



 にこっと微笑むウィル。


 ちょっと可愛……だが奴は男だ、落ち着け俺。


 俺が自分を鎮めている間、ナルがウィルにあだ名を命名する。



「あだ名は『ウィルベル』っすね!!」


「えっ!?」



 それに対し何故か驚いたように目を丸くするウィル。



「どうかしたんです、ウィルベル? もしかして変なこと言っちゃったです?」


「あ、いや、何でも無いよ。あは、あはは」



 何かを笑って誤魔化しているような気がするが、気のせいか?



「改めて、僕を仲間に加えてくれて嬉しいよ。色々聞きたいこともあるだろうし、何でも聞いてくれ。何かあるかな?」



 紳士的な笑みで質問を誘導するウィルに対し、最初に口を開いたのはナルだ。



「はいはい! 質問良いです?」


「うん、良いよ」


「さっき言ってた、『仲間になりたい理由』についてっす」



 そう言えば話が途中だったな。



 ――理由は2つある。1つはさっき君たちが手に入れた杖。



 最初にウィルはそう言っていた。


 そう言えばウサギに夢中でその『もう1つ』を聞き逃していたな。


 ちなみにそのウサギは今イリスさんの膝の上ですやすや寝ている。


 ウサギになりたい。



「もう1つの理由はなんです?」

 

「2つ目の理由、それはね」



 ウィルは俺たちを見ながら言う。



「君たちの事が気に入ったからさ」


「俺たちの事が?」


「気に入っている、ですか?」


「どの辺がです?」



 初耳3人衆に続けて、その理由を既に聞いていたカヤが続く。



「なんでも、和気藹々としている所が好きらしいわよ。そんな理由で仲間になりたがるなんて、酔狂ね」


「ふふっ。そう言いながら、この中で君が一番楽しそうに見えるよ。イスルギさん?」



 カヤはウィルの言葉に目を見開き、顔を背ける。



「し、視力が悪いのね」


「え? 両目4.0なんだけどな」



 その後俺たちは、今までの経緯を全てウィルに話した。


 旅の目的。


 カヤの夢のこと。


 各々が仲間になった経緯。


 その全てを話し終えた後、ウィルは空の月を見上げる。



「お、もうこんな時間か。話したいことはまだまだあるけど、また明日にしよう。旅の道すがら、話すとするよ」



 テントに戻ろうとするウィルにイリスさんが端的に質問した。



「ウィルさん?」


「なんですかイリスさん?」


「その槍、スクラフィーガは、『聖槍』……ですよね?」



 イリスさんはウィルが装備している『白銀の槍』に目を向ける。


 アレが『聖槍』? マジ?



「大正解です。この槍の正式名称は『聖槍スクラフィーガ』。紛れもない聖槍ですね」



 ――聖槍。


 剣、杖、弓、槍、鎚、拳。


 合計6つある聖具の1つ。


 モルドレッドが持っている『魔槍バルムンク』と対になる槍。


 それが俺の目の前にある。



「『魔杖』と『聖槍』。12個ある伝説の武器の内2つがこのパーティにあるってかなりすごくねぇか?」


「僕の槍を入れて、合計3つだよ、アキト」



 ウィルはある人に視線を向ける。



「ですよね、イリスさん?」


「やはり、気づいていましたか。その通りです」



 イリスさんは常々大事に持っている金色の杖を取り出す。



「『聖杖コーネリアス』。それがこの杖の正式な名前です」


「伝説級の武具が3つも……偶然にしては出来過ぎね」


「うん、だからこれは必然なんじゃないかな。僕が魔杖に巡り合えたのも……ふわぁー……」



 ウィルは大きな欠伸をした。



「それじゃあ僕はもう寝るね。アキト、寝る場所は空けとくから」



 アキトは2つのテントの内、小さい方に入って行った。


 ちなみに今日からテントは2つ。


 ウィル持参のテントにより、遂に男女が分かれて寝る運びとなったのだ。


 さらば睡眠不足。


 イリスさんの谷間パラダイスは名残惜しいが、睡眠欲には勝るまい。


 ……。


 ま、勝るまいよ!!



「積もる話もあるけれど、今宵はこれにて解散としましょうか」



 カヤの合図で俺以外の3人はテントに入って行った。


 さて、俺もテントに入るとするか。



 ――事件はその翌朝に起きた。



 寝返りをうった際、確かに俺の右手が柔らかいものに触れた。


 ぷにゅん、という感触。


 ウィルの頬に触れたのかと思った俺は、顔を避ける様に少しだけ横に手をずらした。



 ぷにゅん。



「ん……?」



 すぐ隣にまた同じ柔らかい感触。


 比較的豊かな山が、2つ。



「……あ、いや……おっかしいだろ」



 この感触を俺は知っている。


 イリスさんのパラダイスと同じ柔らかさだ。


 イリスさんほど大きくはないが、確かにそれはある。



 いやしかし!



 それが、ここにあるわけはない。


 だって、


 俺の隣で寝てるのはあのウィルだぞ!? 男なんだぞ!?



「……」



 俺は恐る恐る目を開ける。


 最初に目に飛び込んできたのは男らしからぬ綺麗な寝顔。


 まつ毛も長ぇし、唇だって微かに潤いを帯びていて、無防備なその表情に俺は何故かドキドキしている。



 そして、問題の右手部分。


 俺の右手の先に、確かな胸の膨らみがあった。



「……え?」



 おいまじか……こいつ……!!



「お前! 女か!?」



 この日の朝の衝撃を俺は生涯、忘れない気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ