楯無明人/魔王からの逃亡
初めまして、天月と申します。
ふと小説を書いてみたくなって投稿してみました。
流すだけでも、目を通して下さると嬉しいです。
どこかのベッド。
温かい熱を額に感じて目を覚ます。
「ようやく目を覚ましたのね」
そいつは俺とそう歳の変わらない黒髪の女の子だった。
「誰だお前? それにここは?」
「異世界よ」
「……は? 異世界? んな馬鹿なこと……いってぇええ!?」
ベッドから起き上がった瞬間、おでこに激痛が走った。
右手で触れると血がべっとりと付いている。
「俺の血!? なんだよこれ!?」
「むやみやたらに起き上がるとそのまま出血多量でぽっくり死ぬわよ? 動かないで」
その女の子は俺のおでこに手をかざす。
すると不思議と痛みが引いていくではないか。白魔術士か何かか。
「死に急ぐのは勝手だけれど、私の目の届くところで死なないでね」
「なんで俺、怪我してんだ?」
「覚えてないの? あなたは避難してきたのよ」
「……避難?」
「呆けた顔がとても間抜けね」
「悪かったな」
「……気を悪くしたのなら謝るわ。口が悪いのは性分なの」
目の前の女は「さて」と言って話を続ける。
「掻い摘んで説明するとあなたは魔王から逃げて来たのよ、この異世界『グリヴァース』に」
「質問したいんだが」
「手短になら」
「マオウって、あの魔王?」
「あの魔王とやらどの魔王を指しているのかは分からないけど、その魔王よ。あなたは魔王に襲われて、そこを間一髪私が助けた。そのおでこの傷は鎌でさっくりいかれた時のものよ」
さっくりて。コミカルに言っても痛みは引かねぇぞ。
「てか俺が襲われた? 魔王に?」
ちょっとだけ過る記憶の断片。
俺はバイト帰りに黒い何かに遭遇した。
そいつは鎌を持っていて、出会い頭に俺は額を深く抉られた。
命からがら逃げるも追い込まれて……その時、俺の目の前に女の子が現れた。
「……思い出したぞ。俺は魔王に追いかけられてお前に助けられた……そしてこの異世界、グリなんたらに転移して来た、そういうわけか。面白そうじゃねぇか」
「グリヴァースよ。そして私の名前はイスルギ・カヤ。……まぁ今すぐ忘れて貰うけれど」
「は?」
「私にも事情があってね、今からあなたの記憶を消させて貰うわ。それじゃあ、お休み。……ブレインロスト」
俺の意識は深い闇の底へと落ちて行った。




