九
彼女の口から衝撃的な言葉が出てからだいぶ頭がこんがらがったがだいぶ落ち着いて着た。
「これから話すのは、父から聞いた話。私が小さい頃ママはどこ?って聞いたら教えてくれたの。私はだいたいお母さんに年に数回くらいは父にお願いして会っていたの。さっきの写真もその時撮ったの。」
「母と意外と会ってるんだな。」
「はい。その時に優也さんの事も少し聞いていました。お母さんは優也さんに私と私の父の事を伝えたくないみたいで、優也さんには私のこと話していないと思いますが。」
「そうだったんだ。あのー母さんと蘭さんのお父さんがどうして知り合ったのか知っている?」
「お母さんは、お金を稼ぐために風俗で働いていたらしくそこで出会ったそうです。そしてお互いの仕事の休みの日によく会っていたようです。ただお母さんの方は、優也さんがいたので一線を超えないようにしていたらしいんですが2人ともお酒に酔った時に超えてしまい、私を妊娠しました。その当時父とお母さんが結婚して家族になるという考えもありましたが、お母さんが私を産んですぐに体調崩したらしく父が私を引き取ったそうです。そのままこの状態が続いたわけです。」
「お父さんってどんな人?」
「IT企業の社長をやっています。結構優しいですし真面目な方だと思います。あっ絵をよく描きます。私も父から絵を教わりました。ただ家にいる時間は短かったので家政婦の方やお婆さんに育ててもらった感じです。」
「そうなんだ。蘭さんって何月生まれ?」
「10月です。」
「じゃ年齢的に僕が2歳くらいの時に蘭さん産まれたんだ。確かにアルバム見て不思議に思ったことあったんだよな。母さん亡くなる前にアルバムみかえしたんだけど丁度2歳くらいの写真が無いんだよね。幼稚園の時とか赤ん坊の時とかは、山ほどあるのに。」
「そうだったんですか?たぶんその時は出産や入院で忙しかったのだと思います。」
「あっそうだ。さっきの手紙。いつもらったの?」
「お母さんの入院中です。父と2人で一回だけお見舞い行った時に渡されました。自分が死んだあと優也さんに渡すようにいわれました。ただ私コミュ障で渡すの遅くなってしまいました。すいません。」
「あっ気にしなくていいから。手紙読むね。」
「はい。あっじゃ私お風呂入ってきますね。1人の方がいいですよね?」
「あっごめん気いつかわせて。」
「大丈夫ですよ。」
彼女が部屋から出たのを横目で見つつ手紙を読んだ。久しぶりに見た母の字が懐かしくて少し泣きそうになった。
優也へ
元気に過ごしてますか?お母さん優也にある事を隠してました。蘭にもう聞いたかな?この手紙を渡した子は、あなたの異父の兄弟で私の娘。隠していてごめんなさい。優也のお父さんが亡くなってすぐなのに違う男の人と関係を持っていたとは知られたくなかったの。本当自分勝手な母親だごめんなさい。そして私のために必死に働いてくれてありがとう。体に気をつけて頑張ってね。
気づけば僕は、泣いていた。泣きながらその手紙を何回も何回も読んだ。蘭さんがいなくてよかった。今僕はひどい顔をしている。封筒の中に1枚の写真を見つけた。それは、小さい僕と母と産まれたばかりの蘭さんと蘭さんの父親っぽい人が写っていた。
蘭さんがお風呂から上がって部屋に入ってきた。
「一応兄弟だし蘭って呼ぶことにしたから。優也って呼んでもいいよ。」
「えっいいんですか?」
「いいよ。あとこれ。封筒に入っていた。」
4人の写真を出して見せた。
「私たち会っていたんですね。」
蘭は写真をじっと見ながら答えた。
「そうだな。なんか奇跡の写真みたいだ。」
「あの?もし良かったら一緒に住みませんか?」
いやいくら兄弟でも若年の男女だ。 しかもホームレスと社長令嬢。住む世界が違う。
「いやーそれは申し訳ないよ。」
「でもこれから寒くなりますし。そうだ一回父に会ってみません?お母さんのこと私より詳しく知っているし。今はアメリカですけどもう少しで帰国します。」
「会いたいけど。いやーでも僕ホームレスだよ。ちゃんとした服なんてないし社長に会うなんて。」
「大丈夫です。父は、そんな厳しい感じじゃないですし、服は私が買いますから。」
「買ってもらうのはさすがに。」
「優也。気にしなくていいから。」
何だかんだ蘭にまとめられ2週間後に蘭にの父に会うことになった。僕はお風呂に入り、広いフカフカのベッドで寝た。衝撃の事実を知ってしまったからか、隣のベッドから可愛い寝言が聞こえてきたからかわからないが、寝付くまでかなりの時間がかかった気がする。