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ホームレスの僕と彼女  作者: つくし
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2週間後蘭の父親に会う日がやってきた。昨日蘭とショッピングモールに出かけ申し訳ないほど服を買ってもらった。本人は値段なんて気にしなくていいと言われたが男として兄として悲しくなる。台風の日蘭の家に泊まってから蘭とよく会って話した。今でもダンボールハウスで生活しているが、あの日から生活は明るくなった。蘭がホームレス仲間に食料や布団を持ってきてくれたりよくしてくれる。本当にありがたい。




蘭の父とは、かなり高級そうなホテルで会うことになった。蘭いわく政治家御用達のホテルらしい。今までで一度も入ったことのないような場所だ。大理石の床なんて歩いたことないし。なんか異世界に来た気分だ。

「こんにちは。優也くん。蘭の父親の啓介だ。蘭を助けてくれてありがとう。」

そう言ってオシャレな名刺入れから名刺を取り出した。

「こんにちは。いえいえこっちこそ助けてもらってばかりです。」




蘭の父親啓介さんの案内でホテル内を進む。着いたのは、オシャレなカフェテリア。先ほどのロビーとは、打って変わり落ち着いた雰囲気だ。

「どうぞ。座って。折角だし今日はゆっくりして行こう。」

「はい。」

啓介さんは、どこにでもいそうなサラリーマンに思えた。身なりはキチンとしているし、高級そうなスーツを着ているが、いかつい叔父様って訳でもなく穏やかな人柄がにじみ出ている顔だし、なによりとても優しい。

「今日は、お茶でも飲みながら君のお母さんのことと今後のことについて話したいと思う。蘭から大体のところは、聞いていると思うが聞いて欲しい。」

「わかりました。よろしくお願いします。」

「君のお母さんの晴子さんは、君の知っての通り優しくて強い人だ。僕自身そこに惹かれた。僕と彼女が出会ってからずっと僕の片思いが続いていた。しばらくして彼女が僕のことを好きになりつつあるのは、感じていたけれど、どこか君のお父さん武蔵さんのことが頭にあったのだと思う。確かあの頃は、武蔵さんが亡くなって1年くらいだったからな。」

「そうですね。」

「僕と彼女は、出会って数ヶ月でだいぶ仲良くなっていたと思う。だいたい会うのは、お互い忙しく短時間だし、公園でただ話をするだけの時もあった。ある日僕は、欲求に負け彼女をホテルまで連れて行った。確か優也くんは、保育園のお泊まり会で居なかった日。

そこで2人で夕食をとりお酒を飲み愚痴を言いあった。そして一線を越えた。僕たちは、付き合っている訳ではなかったがお互いがお互いのことを信頼していたし、好意をもっていた。その時に身ごもったのが、蘭だ。僕は、妊娠を知り、申し訳なくなった。だけど正直内心は、好きな女性と結婚できるチャンスだと思った。しかし彼女は、蘭を産んですぐに体調を崩し入院。優也くんは、覚えていないと思うけど彼女が入院していたあいだ大半は僕の家にいたよ。」

「そうだったんだ。」

「あー。その当時僕も大変だったよ。僕の父が社長だった時父に貧乏で病弱な女とその息子のことは、忘れろとか二度と会うなとか言われてな。彼女は、退院するまで半年かかった。その間僕は赤ん坊だった蘭のとりこになり蘭は、僕から離さないと決めた。僕は、本当は結婚して4人で家族になりたかった。しかし父は猛反対だし、君の母もあまり乗り気じゃなかった。それでこうなった。ただ結婚しないにしても両家仲良くやっていきたいと思っていた。しかし父にことごとく邪魔され年に数回会うことくらいしか出来なかった。」




啓介さんは、一回話をきりコーヒーを飲む。僕もコーヒーを飲む。すごく美味しい。こんなコーヒー初めてだ。




「ふー話を戻すよ。だいぶ長くなるな。僕と蘭は年に数回君の母そして蘭の母である晴子さんに会っていた。晴子さんは、優也くんと私たちを会わせようとしなかった。たぶん僕たちを見ると優也くんと君の父武蔵さんに申し訳なく感じたのだろう。僕は、彼女と会うたんびにお金を渡そうとした。彼女が貧乏なのは知っていたから。しかし毎回丁寧に断られた。彼女の性格からしてそこまで疑問じゃないが。彼女は、蘭にとても優しかったことだ。そしてよく優也くんのことを話していた。その時毎回のように言っていた。今は無理だけどいつか優也と兄弟みたいになって欲しい。彼女は、強いただ弱い面も確かにあった。彼女が亡くなったと聞いて僕はすぐに駆けつけたかった。しかしイギリスでの大事な取引の途中だったためそうは、いかなかった。すまない。」

「いえ。」

「あのー。母にはよくしてもらいましたし、あの時優也さんのそばで支えるべきでした。だけどあの時優也さんに会うのも怖かったし、私に勇気がなかったんです。」

聞く役に徹していた蘭だ。

「それで提案なんだが、優也くんはいまホームレスやっていると聞いた。これからの時期寒くなる。だからとりあえずちゃんとした家に住んで欲しい。蘭の家の近くにほぼ使っていない別荘があるからそこにこないか?仕事もうちの会社に空きが出たし雇えるぞ。」

想像以上にびっくりした内容だ。しかも話が良すぎる。

「えっでも本当にいいんですか?」

「あー蘭の家の近くだから何かあれば頼ればいいし。」

「僕、なんか頼ってばっかりですよ。」

「いいんだ。いいんだ。とりあえず仲良くな。兄弟なんだから」




そんな良すぎる話の数日後僕はホームレスを卒業する。







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