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第1話 傭兵と吊り橋効果?

処女作です。

気に入ってもらえたら幸いです。

どうぞ








俺があの時、強かったら





俺があの時、立ち向かえたら





俺があの時、怖気づかなければ















妹を救えただろうか?


















青い空、生い茂る木々。

走り回る小動物たちと、4つの人影…

その人影のうちの1つが声を出す。



「いやぁ、助かったよ。ちょうど人手が足りなくて」


「いいよ別に。依頼だしな」


男3人に女1人で構成されたパーティだ。

だが、男のうち1人は他3人と違う、ボロボロの風貌だった。



金髪の男が口を開く。

「ほんと助かった。1人病欠で、ソロの傭兵も他にいなくてな」

次いでリーダー格の栗毛の男が続ける。



「今回の依頼は森の魔物の討伐だ。しっかり頼むぞ」


「もちろんだ」


魔物……生き物が突然に変異して発生したとされる怪物。


どれも獰猛で人を襲うため、冒険者や傭兵が依頼を受けて退治するものだ。

多くの冒険者や傭兵が魔物退治で生活費を稼いでいる。

当然俺もその一人だ。



「最近、森の魔物が増えてきたな。おっかないぜ」


「そうだな。だからこそ俺らが退治しないと」


金髪と栗毛がそんなやり取りをする。

女がつぶやいた。


「魔物ってどこから来るんだろう」



「さあな。どの本にも生物の変異とぐらいしか書いてない」


栗毛が答えた。

魔物の発生は確かに生物が変質して起こる。

だが原因は知られていない……”一般的には”



そう、生物が魔物に変成する時、そこには必ず原因となるものがある。



俺…1人傭兵稼業を営んでいる男・トラは、その原因がこの森に来ているのではないかと踏んでこの依頼を受けた。

その原因が、俺が追っているものかもしれないのだ。


(ついでに俺の実力を試すいい機会だ…)


内心そう思い、胸を躍らせた時だった。





「来たぞ!」


金髪が叫ぶ。

それに続いて俺と栗毛は剣を、女は杖を構える。


「ギャオオオオオオオオ!!!」


そんな雄叫びと共に、紫色の禍々しい怪鳥が5匹ほど飛び出してくる。

そのサイズは成人男性ほどだ。



「迎撃しろ!」


栗毛のリーダーが叫んだ。

俺は前に出て、2匹まとめて相手する。


残りの3匹を金髪と栗毛が引き受け、女が魔法で援護に回る。

しばらく打ち合った後に、不意に奥の茂みが動いた。



「もう3匹ぐらい来るぞ!」


俺が叫ぶと、怪鳥がぴったり3匹飛び出してくる。

俺が相手していた2匹を薙ぎ払った直後、咄嗟に大きな1匹が俺を捉えて立ちはだかる。

抜けた2匹はあの3人を相手するようだ。



「ギュルルル!!」


「お前が親玉か…狩らせてもらうぜ!」


俺が踏み込むと同時に魔物のボスも動く。

かなり素早いが、なんとか切っ先が翼を捉えた。


「ギュウ!!」


負けじと蹴りを放ってくる。

余裕をもって避け、少し距離をとった。



(威力はそれほどでもなさそうだな…)


もう一度構え直し、走って一気に距離を詰める。


「ギュウウンッ!!」


今度は両脚で蹴りを放ってきた。

が、それは予測できていた攻撃だ。



「ふっ!」


2度打ち合い、3度目でかわしながら切りつける。

攻撃は見事に急所を捉えた。しかし


「ギュン!」


ボス怪鳥がぎりぎりで羽ばたいた。

剣は僅かに皮を裂くに留まる。

ボス怪鳥はそのまま大きく距離をとって着地した。



「ちっ…さすがに勘がいいってことか」


両者共に構え直し、互いの出を探る。

そしてどちらも動き出そうとした次の瞬間。


ドオオオオオオオオン!!!!


左方向から凄まじい衝撃が走り、木々が爆発したように散った。

その場の全員の動きが止まる。


「な、なに!?」「新手か!?」


いきなりの出来事に、女と金髪が狼狽える。


(…来たか!)


俺たちが見据えたそこに居たのは、一際大きな影。


『ウオオオオオオオ!!!』


この森の魔物発生の原因……瘴気の発生源にして、筋骨隆々で角と翼を生やした赤い巨人……下級悪魔のデーモンだった。






魔物は悪魔の瘴気にあてられた生物が変質したものだ。

しかし、悪魔がどこでどう発生するのかは未だにわかっていない。


だが下級とはいえ、悪魔が魔物以上に強力な圧倒的存在だということは、今対峙しただけでパーティ全体が理解した。

それは魔物も同様だったようだ。



「ギュイイイイ!!」


怪鳥たちが逃げ出した。


「ヒッ!な、なんだあれ!?」


金髪が小さな悲鳴をあげる。

栗毛は落ち着いているが、額には冷や汗が流れていた。



「ここは俺が相手する!お前らは逃げろ!」


俺は前に出る。

依頼主に死なれたら困るからだが、それ以上に理由がある。


「で、でも!」


女が抗議しようとした。


「早くしろ!殺されるぞ!」


俺が強く怒鳴る。


「っ!」


すると栗毛が駆け出し、女と金髪を引っ張って行く。

金髪は腰が抜けているようだった。



「さて…」

呼吸を整えて構える。

この日をどれだけ待ち望んだことか。


悪魔が…”妹の仇”が目の前にいる。

それだけでどうしようもなく、闘気と復讐心が燃えた。


(…朔夜…)


殺された妹の名前を思い浮かべながら、俺は構えをとった。

傭兵になったのも、強くなって悪魔を根絶やしにするという目的があったからだ。

その目的を忘れた事など、1度もなかった。


『グフフフ!人間如きが俺と戦う気か!』


デーモンが嘲笑する。

だがそんなことはどうでもいい、相手が悪魔だということだけが、今の俺には重要なことだった。



「いくぞ!」


俺は走り出した。

相手は巨体で動きは遅いはず、そう考えた。


(攻撃を誘って…カウンターで倒してやる…!)


デーモンの目の前まで肉薄しながら、剣を前方に構える。

だが次の瞬間、それが甘い考えだと思い知らされた。


『グオオオオ!!!』


巨腕が動く。



(…速い!?)


デーモンは俊敏な動きで拳を繰り出した。

それをぎりぎりでかわし、拳が腕を掠めた。


予想が外れた、それだけだというのに動きがわずかに鈍る。


『フン!!』


デーモンが更に拳を繰り出す。

それをもう一度ぎりぎりで避け、腕に剣を突き立てる。



「オオッ!!」


力一杯に剣を押し込む。


『グアアア!!貴様アア!!』


怯んだが、デーモンはもろともせずに俺を掴んだ。


「しまっ…」


必死に抵抗するが、凄まじい力で押さえられる。


『死ねぇい!!』



そのまま投げ飛ばされた。

俺は樹木に叩き付けられ、背中を強く打った。


「うぐっ…!」


衝撃で意識が飛びかけるのをなんとか堪える。

しかし身体は痺れたように動かせなくなってしまった。


『たかが人間の分際で…!』


憤慨した様子で巨人が近付いてくる。

強烈な殺気を放っていた。




(ああ…死んだな俺…)


そんな言葉が頭を過ぎる。

勝てるという自信を持って来たのに、蓋を開けてみれば結果は惨敗だった。



『終わりだ。死ね!人間!』

そんな声が聞こえる。



(ちくしょう…)


目蓋を閉じる。

次に凄まじい痛みと骨が折れる鈍い音が……しなかった。



かわりに聞こえたのは、重い物が落ちる音と血が噴き出す音だった。


『ヌワアアア!!?』


そしてデーモンの悲鳴が続く。


(なんだ…?)


閉じていた目蓋を開けようと力を入れる。



『き…きさまは』


言葉の続きは聞こえなかった。

聞こえたのはキンッという軽やかな音と、先程と同じく物が落ちる音、血が噴き出す音だった。


「くぅ…」


俺はようやく目を開ける。

そこにあったのは……デーモンの死体と、少女だった。



「なっ……」


デーモンの死体に俺は絶句する。


(この女の子がやったのか…!?)


思わず少女の特徴を確認する。

歳は10歳ほどで、セミロングの銀髪が特徴的だ。


深い青のコートに黒いシャツとミニスカートを着ていた。

そして左手には…鞘に納めた刀を持っている。



「………………」


少女は何も言わずに立ち去っていく。

声を出そうとしても出なかった。

そして視界がブラックアウトしていく……



…………………………………………………………………………………………………………………………



目を覚ますと、そこは宿屋だった。


(…気を失ったのか…)


とりあえず降りて、依頼主のパーティに話を聞くことにした。





「不安になって戻ったら、君が倒れていたんだ。化物の死体も見たよ」


「すげーな!あんなの倒しちまうなんてよ!」


「怪我は大丈夫?」


反応はそれぞれだった。

しかし、共通して悪魔については知らないという風だった。


少女についても聞いてみたが、見ていないという。


(とりあえず酒場に行って報酬を貰うか…)


報酬は酒場でギルドから渡される仕組みだ。

俺は身支度をして宿屋を出た。








街の真ん中、木製の扉の前に立つ。

大きく「ギルド」と書かれた看板が目印のこの酒場こそが、傭兵や冒険者たちが依頼を受けるギルド酒場だ。


俺は改めて少女の特徴を確認しながら店内に入り、いつも通りにまっすぐカウンターへ進んだ。


「いらっしゃいませ。少々お待ちください」


店員が営業スマイルでそう告げる。



(先客か……銀髪の子供…ん?)


目の前で報酬を受け取る少女を見る。


「……………………」


見覚えしかなかった。


(傭兵や冒険者は16歳からでないと……いや、そうでなく!)


見れば見るほど間違いない。

この少女こそがデーモンを屠ったあの少女だ。



そこからは早かった。


「おい!」


声をかける。



「………………」


少女が振り向いた。

サファイアブルーの瞳が美しく、肌も絹のようだ。

表情は鉄面皮だが、どこか鬱陶しそうだった。


「昨日は…ありがとう。助かった」



「…それだけか」


威圧的な男性口調でそう言う。


先に言っておこう、俺は嘘が嫌いだ。


「いや、あともう一つ」


だから、思ったことを素直に口にした。






「俺と付き合ってくれ!!」






酒場が静まり返った。


少女は鉄面皮を崩さない。


これが一週間前に起きた、俺の人生の転機となった出来事だった。

感想よろしくお願いします。

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