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『白き死神の英雄譚』〜How much is your life?〜  作者: 和服座 天六
第1章 『一年生の1学期』
5/7

004 『死神の言葉』

この話、意味がわからないという方がいるかもしれないです。

次話担ったら、全てわかるかも。


それでは

 

 004 『死神の言葉』


 死んだはずだ。

 焼けて灰になったはずだ。

 それなのに。


 この『白い場所』はなんだろう。


 体はない。

 それなのに意識ははっきりしている。

 目はないのに”見える”。


 この何もない白”しかない空間。

 白だけしかない空間。

 動くこともできないけど、見ることだけができる。




 どのくらい経ったか。

 ある程度現状の把握ができた。

 気がする。


 はずここはおそらく『意識だけの空間』

 そして俺は、死ぬ前か死んだ後ここにいる。

 夢か現かわからないが、それでも俺はいる。

 生きてはいないかもしれないけど。

 居る。


 初めにここに来たと実感してから、体感時間で2時間経ったと思う。

 たぶんで、きっと。

 そして初めの時と変わったことが一つ。

 この白い空間に、白い少年が居る事。


 その少年は5歳くらいの背丈で、真っ白な外套を頭からかぶっている。

 何をするではなく、しかし存在する。

 俺の意識的空間だと思ってたのに、他の誰か居る。

 おかしいと思って、いろいろ考えた。

 それである答えが出た。

 だから、しゃべる事はできないと思うけど。

 試しに話しかけてみる事にした。

 俺の意識的空間なら、それくらいできると思って。


「君は、俺なんだろう」


 そう、話しかけた。

 すると、少年は外套を脱いだ。

 脱いで、こっちを見た。

 その顔は俺の子供の頃と全く同じなのに、何かが違った。

 ああ、そうか。


「髪が白いんだね」


 少年の髪の毛は、色素が完全に抜けていた。

 それに、少年の目からは何も感じなかった。

 感情はあるのだろう、けれど冷たい目をしていた。

 くらいくらい目をしていた。


「お前は、俺だ」


 少年は始めて喋った。

 その声を一言で表すなら”無”だった。

 なんの気持ちも、感情も、思いもない声。


「お前は俺で、俺はお前だ」


 そうだね、と返す。


「でも決定的に違う事がある。

 お前は知らない、人間の醜さを。

 お前は知らない、人間の卑怯さを。

 お前は知らない、人間の傲慢さを。

 俺は知っている、人間がやった事を。

 俺は知っている、人間が求めた事を。

 俺は知っている、人間が行った結果を。

 だからお前は俺だけど、完全な同一じゃない」


 そう、なのかもしれない、と思った。

 その声は悲しみに溢れていたから。

 その声は憎しみに満ちていたから。


「だからお前は死ぬんだ」


 ああ、そうか。

 少年がここに来た意味を俺は、わかってしまった。


「お前が求めたんだ、人間との共存なんてものを」


 少年の声が悲しみを強く帯びていく。

 それと同時に、悔しさも滲み出ていく。


「俺は言った、人間なんて醜い生き物だと」


 ああ。


「俺は言った、人間に期待するなと」


 ああ。


「俺は言ったぁ、人間は決して俺たちを受け入れないと」


 ああ、君は俺のために泣いてくれるのか。


「おれわぁ、おまえがぁきずつくぅのがいやだぁった」


 少年は––––否、彼は泣きながら喋った。

 何も写していない悲しい瞳に涙をためて。

 その涙が頬を流れて、白い空間に落ちた。

 そして、現れたそれは。


「おれは、お前のために生まれた」


 彼は、涙が落ちたところに現れた黒い渦に手を入れた。

 そして手を引き抜くと、大鎌が現れた。


 二メートルはあるだろう大鎌。

 黒い黒い、全てが漆黒の鎌。

 柄には漆黒の鎖が巻き付いていた。


「その鎖は『束縛の鎖』」


 見覚えがあった。

 さっき使ったものだったから。


「ああ、この鎖は死者の魂を束縛するための鎖。

 巻きつき束縛したものは、何があってもおれ以外には解除できない。

 だから俺が、お前が、持つ為の武器だ」


 そう、だね。


「この鎌は生物の”死”を刈り取る鎌」


 知ってるよ。


「そして」


 ああ、彼らも来てるのか。

 彼の後ろから、二頭の龍が現れた。


「こいつらは、魂を輪廻の輪に送る龍『ウロボロス』

 しかしその性質は、全てを飲み込み死に還す『黒龍』

 そして、全てを再生し生き還す『白龍』

 この二つの龍が一つの存在として存在する時のみ『ウロボロス』として存在できる。

 だからこうして、今ここにいる」


 ああ、そうだね。

 君が来て、彼らも来て、じゃあ彼女も。


「来ている」


 彼は俺の意思を理解して答える。

 すると、彼の上から彼に向かって白い外套が降ってくる。


「この外套は死と再生の証。

 この外套を少しでも俺が持っていれば、どのような死も再生する。

 だからこそ、この全てを完全に扱うことのできる俺はこう呼ばれる」


 そうだったね。


「白き死神、と」

『白き死神、と』


「全部思い出したか、俺」


 ああ。


「ならもう、いいな」


 行くのかい?


「ああ、俺はお前だけど完全な同一じゃないから」


 そう、だけど、それでも。


「ゆうなよ俺、俺はお前が生きてくれるのならそれでいい」


 そうだったね。、君は。


「ああ、過去も現在も未来もずっと変わらない」


 ああ、じゃあ俺も決めるよ。



「「我何なりや」」


「「我、白き死神なり」」


「「生と死を司る死神なり」」


「「全ての生物は死によって帰結し、解離され」」


「「人生という名の呪縛に、生という鎖から」」


「「だから存在する」」


「「死と生を司り、死と生を管轄する存在が」」


「「ゆえに存在する」」


「「我という白き死神が」」



 なつかしいな。


「そうだろお」


 彼はもう体の3分の2を消失していた。

 そういうことだろう。


「そういうことさ」


 もう最後かな。


「いや違うさ、俺とお前は生物が存在する限り存在する」


 故に、必然的不老不滅。

 懐かしいね。


「ああ、だからお前はいつものお前でいろ」


 いいのかい?


「その為の俺だろ」


 はは、と彼は笑った。

 そして、無くなった。

 体の全てが消失し、無くなった。


「世界が崩れるな、そろそろ行かなきゃ」


 この白い空間に亀裂が走り、空間が崩壊を始める。


「ありがとう俺、そしてすまない」


 俺は謝る。

 俺に対して。

 俺という俺に対して。


「さあ行こう、世界に死と生を与えに」


 彼がここにいたら、たぶんこう言うだろう。


「あなたの命はいくらですか?」






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