003 『決闘と死の覚悟』
駄文ですが、よろしくお願いいたしまする。
この話、結構展開速く感じるかもです。
003 『決闘と死の覚悟』
「始め!!」
北山先生の合図とともに佐藤は動き出した。
手に持っていたライターから火を灯し。
「異能力『炎の宴』」
佐藤の言葉に呼応し、佐藤の背後に7つの火の玉が現れた。
これは佐藤の異能『炎操作』によって、ライターの火が佐藤の支配下に入った証だ。
「それじゃあ行くぞ」
そういって、俺に向かって突進してくる佐藤を俺は右移動し避け。
俺が唯一使うことができる異能を出す準備をする。
この異能は、一週間前に事故にあって病院に担ぎ込まれ、入院している時になぜか使えるようになった物で。
15歳での異能発現なんて、知られたら何されるかわからないので黙っていたが今は仕方がない。
いいわけならなんとでも言えるだろう。
「異能力『束縛の鎖』」
俺の言葉に呼応し、足元に闇の渦が発現しそこから一本の鎖が現れた。
黒く黒く漆黒の鎖、ただの鎖のようなのに”何か”嫌な感じがする。
そんな鎖。
俺はこの鎖を出したことが一回しかない。
出した瞬間にしまってしまった、その恨みの濃さに怨嗟の強さに。
背筋が凍るような感覚が走った、だからもう出す気は無かった。
それでも仕方ないな、能力も数も範囲もわからないけど使うしかない。
やるしかないよな、行こう。
「我望、永遠の停滞を輪廻の拒絶を。ゆえに束縛し捉えよう、この世の何ものからも」
俺の言霊の終わりと同時に、足元に現れた鎖は俺の右腕に巻きつき。
右腕がびっしり鎖に覆われ、鎖の先端を掴みそして思考で操る。
(佐藤はそこまで早くないから、まずは足を確実に捉えよう)
俺の考えどうりに、地面すれすれを鎖は進み。
生き物のように佐藤の足にまとわりついた。
「くそ、なんだこの鎖。うざってなぁ!」
佐藤は鎖が離れないことに腹を立て、必死に取ろうとしているが鎖は外れない。
束縛の鎖の能力はある程度理解し始めている。
否、なんだか懐かしい感じが、まるでこの鎖を俺は使っていたかのよう。
そんなことあるはずないのに。
まあいい、このまま全身を束縛していけば勝てるだろう。
そんなことを考えてしまった。
戦闘中に”油断”してしまった。
勝ったと、思ってしまった。
今は戦闘の最中なのに。
油断してはいけなかったのに。
なんて、いくら後悔しても意味はない。
そう、後悔なんてしないと思っていた。
するわけがないと思っていた。
だって、いつ死んでも良かったから。
両親が自殺した時何かが壊れた音がした。
音を立てて崩れていくような気がした。
だから決めたのに、後悔だけはしないと。
それなのに、それなのに。
勝てると思って、地面を見ていた顔を上げた。
そして見た。
目の前に迫り来る炎を。
いや違うか。
迫り来る小さな太陽を。
太陽と言って差し支えないと思った。
だってそこにあるだけで俺の皮膚は焼け始めていたから。
「がががががががぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ」
焼ける、灼ける、燒ける。
全身が焼ける、あの太陽によって。
あの炎の塊によって。
こんな痛みなんて超絶した痛みを、感じたことが今までに無かった。
「いたいいたいあついあついいあたいちゃいつあああああああああああ」
皮が焼ける。
髪がやける。
肉が焼ける。
血が蒸発する。
骨が溶ける。
体のありとあらゆるものが燃える。
痛みを超えて、暑さを超えて何も感じなくなった。
これはなんだろう。
今までの熱さが痛みが、まるで幻想のように。
『死』
死を感じる。
何かが零れ落ちる、剥がれ落ちる。
血が肉が、骨が魂が焼けて落ちて。
俺に残ったのは現実かも夢かもわからない現在。
遠くではこの火を出した佐藤が、何かを言って笑ってるように見える。
それを北山先生が止めてるのか、何かをしているのか。
誰も俺を助けようとしない。
観客席の生徒も先生も。
闘技場に入る佐藤も、北山も。
誰も誰も、誰も俺を助けない。
死を俺は見る。
死を俺は感じる。
死を俺は迎える。
もう痛みはない。
もう熱さもない。
匂いも視覚も聴覚も嗅覚もない。
感覚という感覚が。
神経という神経が。
全てが全て無くなった。
ああ、と思う。
死ぬのだ、と思う。
だから最後に、最後の最後に願おう。
『全ての存在を俺は恨もう。全ての存在を俺は許そう。
だから願う、力が欲しかったと。
何者にも負けない力が。
最強で最凶で最狂ですべての頂点に立てる力が。
我慢せずに生きることができる力が」
恨もう、許そう。
だから欲しかった。
力が。
ほしかったなぁ
ああ、死ぬのか。
どうでしたか、戦闘シーンは違う面で書きますので。
今回はすいません。
それではそれで