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第二話 不幸がちょっとした幸せに変わる時

二、

「あ?あのときはごめんね?傷、大丈夫?」

「い、いや………こんなのかすり傷だし………」

「あの時は遅刻しそうで君を踏んづけてしまってごめんね?」

「き、気にしないでいいって………」

 な〜んてとても都合のいい展開にはどうも転がってくれそうにもない。

「………惨めだし、帰るか………」

 俺は首をすくめて誰もいなくなってしまった教室から帰宅することにしたのだった。

――――――

「右よし、左よし、上よし、下よ………」


どごすっ!!


「ぐはっ!!」

 確認したはずの右から何かが飛んできて俺を左の方向へと引っ張っていく。そして、ちょっとの間宙に浮いている感覚を味わうと俺は自分の倒れる地面を見て………

「!?」

 犬の糞があるのを確認した。しかも、体が回っているので計算として………背中に糞があたる!?

「そ、そうはさせるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 俺は両手、両足にいっぱいの力を入れる………と、どうだろうか?衝撃はかなりのものだったのだが、背中に糞がつくことなく空中可変ブリッジという俺にしては上出来の技を俺は見事にこなして見せたのだ!

「お、おお〜」

 周りからは俺を賞賛する声が聞こえてくる。

「…………妙だな?」

 俺は立ち上がって首をしかめる。

「………いつもの俺だったら見事に背中に犬の糞を引っ付けていただろうし、あの転校生に不用意に近づこうとしていたに違いない。ところがどうだ?現実は何故か考えを改め、見事に飛んできた石膏を避けた……………例え、考えを改めていたとしても石膏が自ら動き出したりして自分につっこんできたのかもしれない。

「うん、俺にも運がまわってきたのかな?いや、油断は禁物だな、うんうん………」

 思えば右頬に何かがつっこんできたのだ。そう、それさえなければ空中可変ブリッジなどしなくて良かったのだ。

「………で、何が飛んできたんだ?」

 俺は当たったものを探して見つける。

「鞄か?」

 そこに転がっていたのは俺が通っている学園の通学用鞄だった。

「俺の?じゃないな…………じゃ誰のだ?」

 飛んできた方向を見る、すると、一人の女子生徒がこちらへと走ってきたのだった。

「す、すいませーん!!」

 頭から血を流して…………いや、別にホラーでもなんでもない。きっと、こけたりしたのだろう………額から血は流れているのだが別にざっくりと切っているようでもないようだ。

 俺のもとへとやってきたその子は頭をなんかいもなんかいも下げる。

「すいませんすいません!!」

「え、い、いや…………ところで、頭から血が出てるけど………」

「あ、こ、これはただちょっとこけただけなんです!あの…………」

 そういって百メートル以上も離れた場所を指差す。

「………場所でちょっと小石に躓いて転んでしまって………」

「…………」

 見えん、というか………こんなに鞄が飛んでくるものだろうか?俺の体をちょっととはいえ、吹き飛ばしたのだ。

「し、信じてもらえませんよね?」

「え?」

 怒られた犬のような顔をする…………ちょっと幼い感じのする女の子がそうするだけで俺は別に必要のない罪悪感を感じてしまった。

「あ、いやいや………ご、ごめん…………」

 何故、俺は謝っているのだろうか?と考えてしまう………

「そ、それより血が出てるからほら………絆創膏。ちょっと頭、見せてくれ」

「ふぇ?」

 頭に砂とかついていないようなのでとりあえず、応急処置として大き目の絆創膏をおでこに張ってあげる…………とてもこっけいな女の子になってしまった。

「くふ………おっと、さ、これで大丈夫だから」

 少々笑いそうになったのだがそこは自分のお尻をつねって我慢…………俺はそういって転がっていた自分の鞄を掴む。

「あ、ありがとうございました!」

 女の子はそういうと走って去っていってしまった。

「…………名前、聞いておけばよかったな〜」

 同学年にはちょっと見えなかったのできっと新しく入ってきた女の子なのだろう。ああ、ああいう女の子と付き合うのもいいなぁ〜………と、考えていて俺は辺りを見渡した。

「いやいや、俺は何を考えているんだ?よし、今度はもう大丈夫だよな?」

 また鞄が飛んできて空中ブリッジなどをしたくない。俺は再び不幸が襲ってくる前にその場を後にしたのだが…………

「ん?」

あと半分ぐらい歩いていたらアパートであるというところまで来たのだが、俺の足元に何か白い封筒のようなものが落ちていた。

「…………」

 どこからどう見ても怪しい、トラブルの種だ、拾うのはやめておけ……………といった感じで俺の頭はそれを見ないようにして通り過ぎようとしたのだが…………俺は好奇心に負けてしまった。

「…………これって?」

 中に入っていたのは誰かが手書きで書いた地図で、ここからそう遠くない倉庫のところに×印がつけられている。もしかしたら何かのお宝でも入っているかもしれない…………とまぁ、どうせいたずらか何かだろうかと思っていたのだが、意外と何かあるかもしれない。俺はその方向へと向かったのだった。

―――――

「ん〜っ!ん〜っ!!」

「え?」

 裏口から倉庫に入ると、近くに猿轡をされて縄で縛られている女性がいた。その女性は俺の通っている学園の女子制服を着ていた。

「だ、大丈夫ですか?」

「ぷは〜っ………ありがと、王子様」

「王子様?」

 俺は首をかしげ、ああ、この人を助けたからか〜と考えていた。

「さてと、これから犯人の暴露をしないと…………これ、お礼」

「え?あ、ど、どうも…………」

 渡されたのは一枚のメモ帳で、電話番号が書かれている………

「これは?」

「私の携帯電話…………何か用があったら連絡してね………バイバイ」

 彼女は手を振り(俺はぼーっとしていたのだが、手を振り返した)裏口から去っていった。

「…………ここ、なんかやばそうだな………逃げよう」

 俺が完璧に倉庫から出て行った後、怪しげな男たちが俺を通り過ぎて言った。そのとき交わしていた会話が

「あの女が逃げた!」

というもので、俺は少々びびったもんだ。その夜、あの倉庫の地下にいた犯罪グループが匿名情報で逮捕されたとTVでやっていた。


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