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くみあわせ

作者: 花花 菜

 僕は今日、高校の卒業式以来会っていなかった親友に会いに行った。

 卒業後に海外留学をしていたからとはいえ彼女に会うのは約三年ぶり。

 僕は動揺していた。

「なんか、変わったね」

 第一声は無意識のうちに口からこぼれていた。彼女に昔の面影がないのは当然のこと。分かりきっていることだった。それなのに僕はまだ少し目の前の彼女を受け入れられていない。どうしてもっと早くに教えてくれなかったのか。言って欲しかった。でもきっともう遅い。

 僕は鞄の中から徐にあるものを取り出した。

「じゃーん。ーーサプラーイズ!」

 留学先で買ったコーヒー。彼女へのとっておきのお土産だった。

「君の大好きなコーヒーだよ。前に海外のも飲んでみたいって言っていたよね」

 彼女とは高校一年の夏からの付き合いだから味の好みは大体分かっている。例えばコーヒー好きといっても甘いコーヒーは嫌いで、苦いコーヒーが好きなこと。唯一僕だけが知っていることだ。

 だから今回のお土産は、とりわけ苦いコーヒーを選んだ。

 でも僕は知らなかった。

 もう彼女がコーヒーを飲まなくなっていたことを。

 彼女が亡くなっていたことを。

 実は病気だったことを。

 でも今日初めて知ったこともある。

 僕にとって彼女は三年間同じクラスで、ただ仲が良いだけの親友ではなかった。彼女がどう思っていたのかは分からないけど、僕は今、言いたい。

「――君との相性はやっぱり最高だったよ」

 彼女への最初で最後の告白。それが届いたかは分からない。でも今ならあの時言っていた意味が分かる。

 僕がチョコレートなら彼女はコーヒー。

 相性は抜群に良いけど、深く侵入しすぎてはいけない。混ざりあってもいけない。でもそれでいい。お互いの良い部分だけが見える。

 だから彼女は病気のことを隠せた。だから僕は気付かなかった。だから僕達は最高の組み合わせだった。

 でも死んでしまった。

 確実に僕は今、深く侵入している。そして最悪だ。やっと気付いたのだから。

「君のことが最高に好きだった」





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