プロローグ -Ragnarøk-
私はあなたを救うことができたのだろうか。
もし救うことができたなら、私はこの呪縛から解放されるだろうか。
私は何度もこの世界の崩壊を見てきた。
だけどその記憶もまた消え去って、また全てを忘れてしまうのだろうか。
あらゆる時代の喜びを見てきた。
あらゆる時代の怒りを見てきた。
あらゆる時代の悲しみを見てきた。
あらゆる時代の楽しみを見てきた。
ある人は民衆のために。
ある人は生きるために。
ある人は愛する人のために。
ある人はこの世界で認められるために。
ある人は―、運命を壊すために。
私は忘れてしまう。なにも残らない。
この記憶も。意思も。肉体も。何もかも全て。
思い出した時にはもう遅い。全てが始まっている―。
もし生まれ変わるとしたら何になるのだろうか。
木の上で何も考えずに生活しているナマケモノがいいだろうか。
それとも、誰にも負けない強さを持った百獣の王、ライオンがいいだろうか。
いや、透き通った美しい海のサンゴ礁を優雅に泳ぐカクレクマノミもいいかもしれない。
でも私にはそんな選択肢は無い。
また、地球上で唯一の破壊種「ヒト」になるほかないだろう。
そして、また世界の崩壊を見て、また後悔する。
「何故、早く思い出せなかったのだろうか」と。
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「もう一度、あなたを救うことができたなら私はこの呪縛から逃れることができますか―。」
次話からはもう少しボリュームアップしていきたいと思います。