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第07話「フォルク討伐戦」

 しばらくするとヨーコも目を覚まし、俺とヨーコはフォルク討伐に備え、アイテムの点検や武器の手入れを始める。

 すると、部屋の扉が開き、リョッカがやってきた。

「兄ちゃんたち、起きてる? ――お、もう準備が出来てるみたいだね?」

 部屋に入ってきたリョッカの手には紙袋があった。

「? リョッカ、それはなんだ?」 リョッカに紙袋のことを問う。

「あ、コレ? これはおいらから兄ちゃんへのプレゼントだよ」 そういうと、リョッカは紙袋を俺に投げ渡してきた。

 紙袋を開けて、中を確認してみる。――入っていたのは、カードホルダーのついた黒い革ベルトだった。

 ん? ベルト、か?

「――リョッカ、なんでコレを俺に?」

「その反応。やっぱり兄ちゃん、ホルダーは持っていないんだね?」

 ホルダー? このポケットのことか?

「イツキさん。それは魔法カードを一時的に携帯しておくためのホルダーです。魔法カードは基本使い捨てですからね。その都度生成出来る環境であれば問題はないのですが、交戦中ではそうもいきませんからね。それはあらかじめ魔法カードを生成しておいて、それを携帯するためのモノなんです」

「おいらみたいな魔法使いをパートナーにしているアドベントなら、かかせないシロモノなんだよ?」

 俺はさっそくホルダーのついた革ベルトを腰に巻いてみる。

「なんか、こういうのってちょっと恥ずかしいな? ヨーコ、似合ってるか?」

「ええ。よく似合っていますよ、イツキさん」

「兄ちゃん。そこのホルダーに何枚か魔法カードを収納出来るようになってるんだよ。あと、ベルトのところにも一枚だけカードをセット出来るようになっているから、そこにはすぐに使う魔法をセットしておくと便利だよ?」

「たしかに便利そうだな? ――ヨーコ、さっそく何枚か魔法カードを出してくれるか?」

「あ、はい。ちょっと待ってくださいね。今――」

「姉ちゃん、ストップ。――兄ちゃん、今魔法を準備していたら、フォルクと遭遇する前に威力が弱まっちゃうよ? 魔法カードはフォルクに近づいた時に準備しようよ」

「へぇ。そういうものなのか」

 ……てっきり、カードの状態にすれば、ずっとそのままだと思ってたな。

「じゃあ、兄ちゃんも姉ちゃんも準備は出来ているみたいだし、もう出発しちゃっていいよね?」


 これでこの山を登るのも二回目になるな。俺たちは見知った山道を進んでいた。

 ……しかし、先頭のリョッカは適当に歩いているように見えるが、大丈夫なのか?

「なぁ、リョッカ? これで本当に道は合っているのか?」

「道? 道なんておいらにわかるわけないじゃん。――っと、今度はこっちだよ」

 おいおい。道がわからないって、どこに向かってるんだよ?

「大丈夫ですよ、イツキさん」

 俺の心配が表情に出ていたのか、何も言っていないのにヨーコが話しかけてきた。

「ほら、見てください。リョッカくんはシグナルを確認しながら歩いていますよ?」

 たしかにリョッカを見てみると、刻印から小さな球体の映像を映し出し、それを何度も確認しながら歩いている。

「まぁ、おいらのシグナルじゃあ、現在地と対象の位置関係しかわからないんだよねぇ。地図データを追加すれば、もっと細かい表示が出来るんだけど、地図データは購入するのにお金がかかっちゃうし、こまめに更新していかないと、使いモノにならなくなる場合があるから面倒なんだよね」

「ふーん。地図データねぇ。こいつにはいろんな機能が追加できるようになっているのか」 刻印を眺めながら、そう呟く。

「兄ちゃん、姉ちゃん。そろそろ奴に備えておこうよ? この距離ならもう、いつに遭遇してもおかしくないよ?」

「今回の相手は空を飛んでいますから、イツキさんが遠距離攻撃出来るように、攻撃の魔法がたくさんいりますね?」

「姉ちゃん。すでに形成した魔法をカードにするんじゃなくて、属性魔法をそのままカードにした方がいいと思うよ? 使い方に少しコツがいるかもしれないけど、その分臨機応変な使い方が出来るから」

「そうですね、わかりました。――イツキさん、今回の魔法カードは雷の魔法がそのまま入っていますので、使うときには注意してくださいね?」

 そう言いながら、ヨーコは俺に五枚の魔法カードを手渡した。

「注意って、何をどうすればいいんだ?」

「兄ちゃん。魔法カードを発動させるときに、なにかをイメージしながら使えばいいんだよ。たとえば、飛来する矢をイメージしながら魔法を発動させれば、姉ちゃんの雷魔法だと、雷は矢になって飛んでいくよ?」

「でも、昨日の照明魔法のように、その場で発動させちゃいますと、雷がその場に散って自滅してしまいますからね」

「なんか、難しそうだなぁ」 ……俺に使いこなせるのか?

「大丈夫だよ、兄ちゃん。兄ちゃんならすぐに使いこなせるって。――おいらの魔法は炎の魔法だよ。カードの色が違うからわかるよね?」

 リョッカからも、五枚のカードが手渡される。

 たしかに、ヨーコからもらったカードとリョッカからもらったカードは、それぞれ黄色と赤色になっていた。

 ……ヨーコの雷魔法が黄色で、リョッカの炎魔法が赤になっているのか。わかりやすいな。

「あ、兄ちゃん。この魔法も渡しておくよ」 そういってリョッカは、俺に水色のカードを一枚手渡してきた。

「? これはなんだ、リョッカ?」

「それは霧の魔法だよ。……その魔法はもしもの時に使ってよ。たとえば、撤退が必要になった時に目くらましとして使うとか、ね。その魔法はそのまま発動させても自滅することはないから、心配はいらないよ。もちろん、イメージして使えば、ピンポイントに霧を発生させたり出来るから効率はいいけどね」

 さっそく、受け取った十一枚のカードをリョッカからもらったホルダーに入れてみる。

「――っと、こいつは一緒に入れない方がいいな。ベルトの方にしよう」

 霧の魔法は攻撃用ではないので、ホルダーに入れるのをやめ、ベルトの方にセットした。

 リョッカが刻印の球体映像に触れて、球体を拡大表示する。ターゲットに近づいたので、シグナルの表示を詳細の分かる拡大表示に切り替えたのだろう。

「なんか不思議な感覚だね、兄ちゃん。昨日までは勝てる気がしなかったっていうのに、今日は逆になんか負ける気がしないよ」

「そういう事は勝手から言え」 ……だが、気持ちはわからんでもないな。

「……本当に不思議な感覚。わかってる、リョッカくんの言っている負ける気がしないって感覚は。でも――」

 ヨーコの『でも』の後に続けた言葉は、俺には聞き取れなかった。

 彼女は、こう口にしていたのだ。

「――でも、負ける気はしないのに、嫌な予感がおさまらない。それどころか、どんどん強くなってきている」

 リョッカの刻印の球体に映し出されている二つの光る点が徐々に重なり始める。

「来るよ? 兄ちゃん、姉ちゃん――」

 巨大な影が俺たちの頭上を横切っていった。

 リョッカはアームガンを生成し、ヨーコはいつでも魔法が出せるように身構える。

 そして俺は、バスタードソードを背中から抜いた。

「いいか、狙いは奴の片翼だ。気づいたら動かせなくなっていたって状況を作るんだ」

「あいよ、兄ちゃん」 リョッカが銃口を影の主――フォルクに向けた。

 殺気を感じ取ったのか、上空のフォルクは旋回し、俺たちの方に向かってきた。

「兄ちゃん、攻撃は左の方の翼に集中させるよ」 魔法カードを作り出し、そのカードをアームガンのカードスロットにセットする。

 セットした炎の魔法が銃口に収束し、銃口に火球を作り出す。

 火球をフォルクに向けて撃ち放った。――その火球に合わせて、ヨーコもフォルクに向けて雷の魔法を放つ。

 火球がフォルクの左翼に命中し、爆発を起こす。

 その爆発と同じ箇所に、ヨーコの放った雷が命中し、フォルクは苦痛のためか、雄叫びをあげた、

 俺は赤い魔法カードを三枚手にした。

 リョッカのアドバイス通りに、頭の中にイメージを固める。

 飛来する三本の矢を頭の中に描き、魔法カードを投げ放った。

 矢は三本とも命中し、フォルクにさらなるダメージを与える。

 ……フォルクは、連続でダメージを喰らいながらも冷静に反撃の対象を選んでいた。

 そして、その狙いを一番与えたダメージの少なかったイツキに定めた。

 奴は鋭い爪を立て、俺に向かって急降下してきた。

「直接攻撃にきたか。――願ったり、だ」

 不慣れな魔法射撃より、コイツでぶった斬る方が圧倒的にやりやすい。

 降下してくる奴の動きに合わせ、俺はバスタードソードをおもいっきり振り上げた。

 奴の鋭い爪と、俺のバスタードソードが激しくぶつかり合う。

 辺りに、鈍い金属音が響きわたった。

 互角、とは言いがたいか。しばらくは鍔迫り合い(つばぜりあい)の均衡状態が続いたが、この状況、今は俺の件に奴自身の全体重がかかっている状態だ。

 奴の巨体に、俺の剣はどんどん押されていく。

「――なんて力だ、くぅ」 懸命に剣を押し上げようとするが――

「! 兄ちゃん、右――」 リョッカの声が耳に入ってきた時には、すでに遅かった。

 奴がその場で強引に身体を捻っていた。

 それにより、奴の巨大な右翼が俺の身体を激しく殴打し、俺は茂みの方へはじき飛ばされてしまった。

「兄ちゃんっ」 リョッカが、俺の飛ばされた茂みに駆け寄ってくる。

 奴は、俺をはじき飛ばすとすぐさまに上昇を開始していた。

 俺に駆け寄ることで、奴に背中を見せる事になってしまったリョッカに向けて、奴がくちばしから無数の針を吐き出した。

 針がリョッカに命中しようとした時、フォルクとリョッカの間に、一枚の魔法カードが投げ込まれていた。

 その魔法カードは、その場で盾に姿を変え、飛来する針をすべて防いだ。――カードを投げたのは、ヨーコだ。

「どけ、リョッカ」

 俺は茂みから飛び出し、リョッカを押し退ける。

 頭の中に奴の身体を巡る激しい電撃をイメージし、魔法カードを投げつけた。

 奴に向けて、赤い雷が襲いかかる。

 赤い雷が奴に命中すると、炎が奴の身体を巡っていった。――電流が身体を巡るのと同じように。

「な、なに、今の炎は? おいら、あんな炎の魔法は知らないよ?」 初めて見る炎の魔法に、リョッカが驚きの表情を見せる。

 俺の手から赤い魔法カードが消えるのを確認した。

 俺は黄色のカードを使ったつもりだったんだが、カードを間違えたのか? ……だが、イメージだけでここまで変化するんだったら――

 俺の脳裏に、一つの策が浮かび上がっていた。

 黄色の魔法カードを手に取り、イメージを固める。――イメージは、投げ縄だ。

 縄状の雷が奴に向かって飛んでいく。――だが、それはダメージにすらならなかった。

 縄状の雷が奴の翼に当たっただけで、電流は奴の身体に流れない。雷の縄は、奴に当たった後そのまま落下していき、空中で消滅した。

 ……重心がなければ巻き付けられないか。あと、あれでは長さも足りないな。あの倍以上は欲しい。だとすると、一枚だけではダメだな。

 失敗点を見直し、イメージを固め直す。

 だが、さっきの縄の攻撃で、奴は再び俺を攻撃対象に選んでいた。

 奴が大きく息を吸い込む。

「兄ちゃんっ、針が来る!」 リョッカが大声を上げる。

 そんなリョッカに、ヨーコが落ち着いた口調で声をかけてきた。

「リョッカくん。強力な魔法を溜める準備をして」

 そして、リョッカにそう言いながら、ヨーコ自身もすでに雷の魔法カードに魔力を溜めていた。

「ね、姉ちゃん? ……姉ちゃん、今魔法を放ったって、また逃げられるだけだよ?」

「大丈夫です。……今、イツキさんが何かしようとしています」

 奴は俺に向かって真っ直ぐ降下を始めた。――降下しながら、嘴を開く。

 奴の嘴から、俺に向けて針が吐き出された。

 回避困難なくらいの無数の針が俺に降りかかるが、俺はなぜかこの針が命中するとは思えなかった。

 針は俺の髪をかすめ、俺の足下に刺さっていく。

 針の飛来する中、俺は新しい投げ縄のイメージを固めていた。

 奴が俺に向かって降下してきたため、今、俺と奴との間合いは、投げ縄を仕掛けるのに絶妙な間合いになっていた。

 黄色の魔法カードを三枚手に取った。

 その内の一枚は、縄を巻き付けるための重心となる分銅をイメージし、残りの二枚は充分な長さの縄をイメージする。

 奴が俺に最も接近してきた時、俺は三枚の魔法カードを分銅付きの投げ縄に変え、奴に向かって投げつけた。

 縄は奴の左翼に命中する。そして、分銅が重心となり、慣性と遠心力によって雷の縄がどんどん奴の左翼に巻き付いていく。

 縄が完全に巻き付くと、雷の分銅縄は放電を開始した。

 その激しい電撃に、奴は悲鳴とも取れる雄叫びを上げて暴れ狂う。

 たまらず、奴は上昇のために翼を大きく羽ばたかせる。

 が、その羽ばたき方がおかしい。

 左翼を下にして、右翼だけを激しく羽ばたかせる。

 その結果、奴は思うように飛び上がれず、細かく旋回を繰り返しながら、ゆっくりと螺旋状に上昇していた。

「今だっ! ヨーコ、リョッカ。撃ち落とせっ」

 俺の言葉を聞く前に、すでにヨーコとリョッカの手にはそれぞれの魔法の塊が生成されていた。

「言ったでしょ、リョッカくん? イツキさんがなんとかしてくれるって。――一斉に攻撃するよ、リョッカくん」

 ヨーコの雷の塊と、リョッカの炎の塊がフォルクに向けて撃ち放たれた。

 二つの魔法の塊が、フォルクの頭部に直撃し、奴はそのまま地面に向かって墜落していく。

 俺たちは、勝利を確信した。

 

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