表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

5色に輝く真実の石

私は8歳ころ、父と河原の散歩中に、不思議な岩を拾った記憶がある。

5色に輝く、てのひらサイズの岩である。

私は今その石を握っている。まるで加工を加えたように滑らかその岩肌からは、もとは巨大な岩だったが、河を流される間に削られていったことが容易に想像でき、時の流れを感じることができた。


ちなみにこの石、光の角度によって色が5色に変化する、というありがちなものではない、石は触れている人の感情によって、色が変化するのだ。

喜=橙色 怒=朱色 哀=藍色 楽=黄色 その他=白

と、いうように。


この石を見ると父との思いでが蘇る。

私は父が大好きだった。毎朝私が起きてくるころには仕事に出かけ、眠ったあとに帰ってくる。しかし、毎晩仕事から帰ったあとに、部屋に入り、寝顔を確認していることを私は知っていた。去年、高校に進学したあとも反抗期などを迎えることなく、父を尊敬しているし、愛していた。不安で眠れない夜には、父の帰宅を待ち、ドライブに連れていってもらう。どんなに疲れている日でも、父は笑顔であたたかく了承してくれた。目的地のない心地よい車の振動に揺られ、父と会話をしながら私は眠りにつく。そして、朝を起きると私はベッドにいる。父が運んでくれているのだ。


そんな父が、先週交通事故で他界した。あまりに突然の出来事。なぜか私は悲しくなかった。悲しみを感じない私が、信じられなかった。あんなに大好きだった父。その父の死に対し、私は一粒も涙を流すことが出来ない。許せなかった。自分が憎い、そうとさえ感じた。毎日泣き崩れ、父の遺影にすがりつく母。実感がないわけではない。はっきりと、わかっているのだ、父が死んだ、ということを。私には感情がない、欠落した人間だ、と思った。何も感じず、大切な人の死を偲べない。

赤子のように丸くなり、ベッドの上でうずくまる。そんな時、ふと、あの岩のことを思い出した。たしか、なぜか色が変わる岩を、父と一緒に見つけたんだ。記憶の糸を手繰り寄せ、しまってあったその岩を探し当てた。


「見つけた時は岩だと思ってたんだけどなぁ。この大きさじゃ、石ね。」

小さな小さなその石を手に取る。真っ白だったその石は、藍色に染まった。




私は泣き崩れた。

時系列は 中盤 最後 最初 の順番です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ