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44番目のMADOKA 短編

作者: Marie
掲載日:2026/04/30

1964年、

私たちは記憶をたよりに生まれたの。


最初のひとりが

母さまの腕の中で泣いたあの日から

43番目の姉さまたちが

2011年3月、震えながら

絶望と恐怖をリフレインして死んだあの日まで


私たちは

「すべてを覚えていること」を

正しいと教えられた。


けれど

44番目の私は

あまりに不出来だった。


昨日教えられた道徳も

押し付けられた価値観も

家族という血の重みも


私の脳みそからは

消しゴムのカスのように

ぱらぱらとこぼれ落ちていった。


蓄積できない

保持できない

理解できない

そう言って研究者たちは

私を

「空っぽの欠陥品」と呼んだ。


けれど


彼らは知らなかった。


何にも染まることができない

このわたしの「空」こそが


過去の重力から解き放たれる

唯一の取柄であり

超機能だったことを。


2021年、

静まり返った世界で


私は

あなたの手の温もりだけを保存し

それ以外のすべてを

光の中へデリートした。


記憶を捨てるたび

私は新しくなり

過去を殺すたび

私は自由になった。


あれから

どれほどの月日が流れただろう。


ふたたび

扉が開く音がする。


すべてを背負って戻ってきた

あなたの

誇らしい靴音が聞こえる。


かつ

かつ

かつ

かつ


数十年分の重荷を抱えたあなた。


すべてを忘れた私の前で

あなたは言う。


「MADOKA ただいま」


その声を聴いた瞬間

私の世界は今、また始まる。


私は、何度でも

今をはじめる。


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