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三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚してしまった件につきまして  作者: 七転び八起き


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第7話 社畜女、年下夫に恋をする

 お風呂を沸かした。


「勇凛くん、お先にどうぞ」


「いや、俺はあとでいいです」


「勇凛くんはお客さんだからいいの!」


「……お客じゃないです」


 気まずい沈黙が流れる。


「勇凛くんに先に入ってほしいの」


「わかりました」


 勇凛くんはどこかで買った着替えを持って脱衣所に入った。

 勇凛くんが入浴中、このあとのことを真剣に考えていた。


 直近のことを……。

 どっちで寝るか全く決められない。

 もっと考えなきゃいけないことは山のようにあるのに、目の前のことで必死だった。


 暫く待ってると、脱衣所のドアが開いた。

 髪が濡れてる勇凛くんが出てきた。

 直視できずに心臓が騒がしかった。


「七海さんありがとうございました」


「ハイ、ドウイタシマシテ」


 余計なことを考えないように私も風呂に入った。

 しかし、湯船に入った瞬間、勇凛くんも入ったと考えると情緒が滅茶苦茶になった。

 急いでシャワーを浴びて風呂から出た。

 恐る恐る脱衣所から部屋を覗くと、勇凛くんがてんつなぎをしていた。


「上がったよ」


「あ、七海さん」


 勇凛くんは私をじっと見ている。


「七海さんって普段こんな感じなんですね」


 グレーのスエットのルームウェア。

 色気のかけらもない。


「そうだよ。私仕事終わったらこんなんだよ」


「親近感があっていいです」


 その時気がついた。

 勇凛くんの服もグレーだった。


「色、お揃いだね」


「はい。二人で同じものを身につけるっていいですよね」


 勇凛くんのほのぼの笑顔に癒されているのも束の間──


「七海さんそろそろ寝ましょう」


「え、まだ10時だけど」


「七海さんは退院したばかりなんですから、まだ休まないといけないんです」


 医者からも、退院後の生活に色々注意はされていた。


「うん。わかった。じゃあ私床に布団敷くね」


「手伝います」


 ベッドの横に布団を敷く。

 やっぱり勇凛くんを床で寝かせることに抵抗感があった。


「勇凛くん、ベッドで寝て」


「何言ってるんですか!」


「だって床に寝かせるの嫌なんだよ」


 そこから押し問答が始まった。

 どちらも一歩も引かない。


「わかりました。じゃあこうしましょう。俺もベッドに寝ます」


 ──まさかの展開。いや、勇凛くんならありえた。でも気が付かなかった。


 勇凛くんと同じ布団の中に入るなんて……

 眠れる訳ない!


「勇凛くん、ごめん、それは緊張する」


「あ、すみません。そうですよね、落ち着かないですよね」


 結局、私がベッドで勇凛くんは床の布団に。


「勇凛くんごめんね」


「いえ……あの、俺やっぱり帰ります」


「え?」


「七海さんに気を使わせてしまうので」


 確かに緊張はするけど、でも……


「勇凛くん、変に気を使うのをお互いやめよう」


 もう他人じゃない。

 私達は結婚してるんだ。

 私は意を決した。


「わかりました」


 その時、勇凛くんが隣に座った。


「一緒にここで寝てください」


 一瞬悩んだけど、私は頷いた。


 ◇


 暗闇の中、勇凛くんと同じベッドの中にいる。

 お互い逆方向を向いている。

 なんでこんなに無理をしているだろうか。

 たぶん、一緒にいたいからなのかもしれない。


 勇凛くんは寝ているのだろうか……。

 とても静かだ。

 だんだんと眠気が襲ってきた。

 これなら大丈夫かも……。


「七海さん」


「え?」


 勇凛くん起きてたの?

 その時、後ろから腕が回ってきた。


「好きです」


 驚いて身動きがとれなくなってしまった。


 暫く沈黙が続いた。

 でも、特にそれ以上何も起こらない。

 何が何だかわからなくて混乱していると、寝息が聞こえた。


 振り返ったら、勇凛くんは寝ていた。


「寝言……?」


 私はほっとした。

 ただ、体勢は変わらず、私は身動きがとれない。

 どうしよう……。


「七海さん」


 また寝言を言っている。

 これじゃ眠れない。

 脱出を試みた時、腕の力が強くなった。


「七海さん……」


 苦しそうな声。

 どんな夢を見ているんだ……!

 深い眠りだろうから、ちょっと力入れても大丈夫かも。

 勇凛くんの腕を振り解こうとした。


「七海さん……俺とずっと一緒にいてください」


 勇凛くんの静かで切実な声。

 寝言なのにハッキリしている。

 腕を振り払うことができなくなってしまった。


 私はそのまま眠りにつくことにした。


 ◇


 朝目が覚めると、私と勇凛くんは向かい合わせに寝ていた。

 勇凛くんの腕はそのままだった。

 その状況に焦ったけれど、私はそのままでいた。


 勇凛くんの腕の中が暖かくて、心臓は早く鳴るのに落ち着く。

 不思議な感覚だった。


 暫くすると、私のスマホのアラームが鳴った。

 ヤバい!!


 すると勇凛くんが目覚めた。


「……七海さん?え、なんで」


「勇凛くんが寝てる時にこうなってしまって……」


「そうなんですね……すみません」


「アラーム消すね」


 私は起き上がってアラームを消した。


「七海さん、今日はどうするんですか……?」


「役所に行こうと思う」


 勇凛くんが起き上がった。


「婚姻届のことですか?」


 少し不安そうな顔をしている。


「うん。ちゃんと確認したいの。私たちが夫婦になってることを」


「はい、そうですね。俺も行きます」


 私と勇凛くんは朝ご飯を食べて支度を始めた。


 ◇


 私は会社に電話した。


「川崎です。今日は午後から出勤しようと思います」


『わかった。待っている』


 相変わらず心のない上司の声。


「七海さん今日会社に行くんですか?」


「うん。流石にこれ以上休むと仕事が溜まって余計に大変になるから」


 勇凛くんは悩んでいる。


「まだ退院したばかりなのに、また同じ状態になるか不安です」


「……そこは、気をつける」


 私と勇凛くんはマンションから出て駅に向かって歩いた。


「七海さん」


「なに?」


「手を繋いでいいですか」


 手を繋ぐ……って、周りの人に見られる訳で、もう私は三十路。流石に恥ずかしい。

 私が何も言えないでいると、勇凛くんは恐る恐る私の手に触れた。

 そっと優しく私の手が包まれた。

 心まで温かくなった。


 恥ずかしい。

 だけど、嬉しい。

 勇凛くんの行動にドキドキしてる私は、彼に恋をしているんじゃないのかと、今更ながら思った。

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