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三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚してしまった件につきまして  作者: 七転び八起き


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第41話 それぞれの道

 勇凛くんのお父さんは、数日後に海外に帰ってしまった。

 勇凛くんのお母さんには会えないままだった。


「うーーーん」


 スッキリしない気持ちを抱えながらパソコンを睨んでると


「どうしたの?」


 突然話しかけられた。


「わっ!」


 勇哉さんである。


「びっくりしましたよ!」


「ごめん、なんか深刻な顔してたから様子見てた」


 勇哉さんはいつものように、読めない表情。


「七海ちゃん色々巻き込んじゃってごめんね〜〜〜」


 ──今頃何言ってるのコイ……この人

 いやもっと早くその言葉を聞きたかった。


「まあ、私も後先考えないで飛び込んだ道なので」


「え、そうなの?」


「……はい」


 婚姻届を役所に持って行って提出したのは私だ。

 巻き込まれた訳ではない。


「そうかー。俺さ、しばらく旅に出るわ」


「そうですか」


 ・・・。


「え?」


 旅って


「会社どうするんですか?」


「森川くんがどうにかしてくれるよ」


 いや森川さん来て少ししか経ってないよね!?


「それは無責任すぎるのでは……」


 勇哉さんは椅子の背もたれに寄りかかり、のけ反って天井を見ている。


「自分の人生に責任を持つために、リセットしたいんだよ、心を」


 意外な言葉だった。


「でも、結婚はどうするんですか……?」


「頭下げてキャンセルするよ」


 ひ


「すごいお金かかりそうですね……」


「まあなんとかなるよ〜たぶん」


 ニコニコしている。


 訳がわからない人だけど、この人なりに人生をちゃんと考えているのだと、やっと少し理解できたような気がする。


 ただ深く関わりたくはないから、この距離感でいたい。


「じゃあ七海ちゃん、元気でね」


「え……もう行くんですか?旅に……」


「うん、兄貴には前言ってOKでたから」


 じゃあこの人とはしばらく会わなくなるのか。


「お気をつけて」


 最後なら少しくらい笑顔を、とほんの少しの作り笑顔をした。


「あーーーそういう顔されるとつら」


 私は顔を背けた。

 笑顔なんてするんじゃなかった。


「帰ってきたら沢山かまってね」


 そう言うと部屋から出て行ってしまった。


 やはり嵐のような男だ。


 ◇


 午前中の会議が終わり、私が会議室を片付けていると勇輝さんが来た。


「話したいことがある」


「なんでしょうか?」


「これから会社の体制が変わる。秘書課の人員配置も変える。何人かまた社員を戻す」


 それは……


「認めてくれたってことですか!?」


「それとこれは話は別だ」


 冷静な男だ。

 そうか、社長になる……のか。


「勇輝さん、社長になったらもっと忙しくなりそうですね。体調気をつけてくださいね」


「は?」


 凍てつくような視線で睨まれた。


「失礼しました……」


 今は仕事中。

 馴れ馴れしかった。


「私が忙しくなれば君も忙しくなるな」


「……私続投なんですね」


「まだ君の力量をちゃんと測れてないからな」


 そう告げると彼は会議室から去った。


 多分認めるなんて一生言われる気がしない。

 ただ、クビにならなかったってことが、私がここに存在していい証明なのだろうか。


 ──それより


 今日は勇凛くんが会社にいる日。


 私はずっと我慢していた。

 でも今なら……


 私は勇凛くんが研修しているフロアに行った。

 そして、勇凛くんがいる部署を覗く。


 スーツを着た勇凛くんが、先輩社員と真剣に話している。


 あああああ

 尊い。


 これだけ見られれば私はここで生きていける。


「何してるんだよ」


 背後から声をかけられた。


「わ!森川さん……?」


 たった一週間かそこらで、もうすっかりここの社員ですオーラが放たれている。

 確かに森川さんがいると、安心する。


「ちょっと栄養補給を」


「自分の夫でか……。変な夫婦だな」


「いいんですこれで!」


 そんな毎日見てる訳でもないし。


「じゃあこれからもほどほどに頑張ってね、社長秘書サン」


 森川さんが私の頭にポンと触れた。


 森川さんは勇凛くんの方へ向かって、何か説明している。

 そんな姿を眺められる今をとても幸せに感じた。

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