第35話 こたつ
勇輝さんはこの日は流石に定時に退社し、私も早めに仕事を切り上げることができた。
そして勇凛くんの待っているオフィスの近くのカフェへ。
カフェに入ると、勇凛くんを発見!
だけど……腕を組んで何かを考えている。
「勇凛くん……?」
そっと話しかけると、勇凛くんが顔を上げた。
「お疲れ様です」
いつもの笑顔に戻った。
どうしたのかな……?
そして二人で店を出た。
手を繋いで駅に向かう。
「これからどうしようか」
「……七海さん家に来ますか?」
家というと、引っ越した新しい家。
どんな場所か気になってはいた。
勇輝さんが勝手に決めちゃった場所。
「うん、見てみたい!」
そして私は勇凛くんの新居へ。
会社から電車ですぐの場所にあった。
──大きなマンション
え、これ、大学生の男の子が一人で住むレベルの場所じゃないよね……?
厳重なオートロックマンション。
勇凛くんについていった先にあった部屋は──
3LDK。
「一人暮らしの部屋じゃない!」
思わず言ってしまった。
「俺もびっくりしました」
勇凛くんが苦笑している。
「でも、七海さんと暮らすなら、このくらいの広さの部屋がいい気がするんです。ここに住むつもりはありませんが、色々イメージしてます」
親に挨拶したら、この試練を乗り越えたら、その暁には──
未来に思いを馳せる。
ふと見ると、広い部屋の片隅にコタツ。
「コタツだーーー!」
部屋が狭くて置けなかったコタツ。
「ゆっくり休んでください」
私はコタツに入ってぬくぬくしていた。
──すると
目の前にIHクッキングヒーターと、鍋。
「鍋食べましょう」
たくさんの野菜やお肉が並べられた皿を勇凛くんが持ってきてくれた。
「わー!コタツに鍋!嬉しい」
二人で鍋に具材を入れて、たくさん食べた。
しめは雑炊。
満腹満腹。
「あーーーお腹いっぱい……幸せ。コタツ最高」
疲れがほぐれた。
「懐かしいなぁ。昔はよくコタツで寝ててお母さんに怒られたなぁ」
「そうなんですね。俺は一人暮らしして初めてコタツ使いました」
あ……。
そうか、勇凛くんは一人暮らし始めるまでは、実家にいたのか……。
ご両親もあまり家にいなかったって言ってたし、なんだか想像すると切ない。
「このコタツは一生一緒だね」
私がそう呟くと、勇凛くんの表情が穏やかになった。
「はい。ずっと一緒です」
◇
「七海さん、ちょっと見てみてください」
勇凛くんは浴室を指差した。
勇凛くんに導かれていくと──
「湯船でか!!」
広々とした浴室、深くて大きい浴槽、モダンなデザイン。
す、すごい、なんで立派な部屋なんだ。
その時肩に勇凛くんの手が触れた。
「一緒に入りませんか……?」
心臓が跳ねた。
「う、うん……」
油断していた。
◇
勇凛くんと広い湯船に二人で浸かる。
「今日泊まっていいのかな……?」
「今日帰したくないからこうしたんです」
勇凛くんの腕の中に引き寄せられる。
その力が強くて胸が高鳴った。
「すみません、疲れてるのに」
「ううん。私も勇凛くんと一緒にいたい」
勇凛くんが優しくキスをしてくれた。
「……色々兄さんたちがすみません」
「大丈夫だよ。私はやるべきことをやるだけだから」
「七海さんはしっかりしてますね。俺は……あの会社のことも、兄たちの事もよくわかってないです」
勇哉さんの言葉から考えると、何か過去に大変なことがあったんだろうけど、それがなんなのかはわからず。
「何があったか気になるね」
「はい」
──沈黙が流れる
せっかくの勇凛くんとのご褒美タイムをあの人たちに邪魔されたくない!
私は勇凛くんに抱きついた。
「今は私のことだけ考えて」
すると勇凛くんの長くて綺麗な指が背中を伝った。
驚いて声を上げてしまった。
「じゃあ、俺の頭の中を七海さんでいっぱいにしてください」
頭の中を私でいっぱいに……!?
一体どうすればいいんだろう。
色々考えてもなかなか思いつかない。
悩んでる私を見て、勇凛くんは少しイタズラな笑顔を浮かべる。
「俺のことを好きって言って」
耳元で甘く囁く。
クラクラする。
「勇凛……好き」
「うん。俺も七海が好き」
勇凛くんの大きな手が私の胸を包んだ。
「俺だけが触れていい場所」
触れてくる部分に快感が走って、思わず声が漏れた。
「もっと聞きたい」
指がさらに下へ滑っていって──
「ちょっと待って!」
ここでされるのは恥ずかしい!
「隠さないで」
湯船の縁に座らされてしまった。
丸見えである。
「恥ずかしいよ。綺麗なものじゃないし」
「恥ずかしがるから見たくなるんだよ」
いつも見せない表情。
獲物を狙うような目。
ゾクゾクする。
もう私を把握している勇凛くんは、ゆっくりと的確に私の本能を揺さぶって、私はすぐに達してしまった。
私の力が抜けると、柔らかいタオルで包まれ、ゆっくりとベッドまで運ばれた。
そして、私は勇凛くんで何もかもいっぱいになった。
そしてまた登りつめる。
果てる。
二人で繰り返す。
何度も。
「勇凛は私でいっぱいになってる……?」
「俺は初めて会った時から七海の事で頭がいっぱいだよ」
「うん。いつも考えてくれてるよね。ありがとう」
勇凛くんを愛しむようにキスをする。
「愛してる」
どちらが言ったかはわからない。
ただ私たちが同じ気持ちであるのは確かだ。
◇
勇凛くんとたくさん触れ合ったあと、私たちは着替えてまたコタツに入った。
勇凛くんがみかんを持ってきてくれて、みかんを食べながら二人でテレビを見ていた。
ちょうど福岡のグルメを紹介する番組だった。
「あ!このラーメン屋、私行ったんだ!」
「そうだったんですね。どうでしたか?」
「すごい美味しかったよ~。森川さんが紹介してくれて……」
──余計なことを言ってしまった。
「森川さん……?」
勇凛くんの表情が曇ってきた。
ヤバい……。
「あの、勇哉さんが福岡に来ることを事前に知っていたみたいで、それで来て……」
「……で、どうだったんですか?」
勇凛くんの視線が鋭い。
「勇哉さんから助けてもらったよ。それだけ」
勇凛くんがまた凹んでしまった。
私が悪い。
せっかく二人で愛を確かめ合ったのに。
「俺も行けばよかった……」
すごく悔しそうだ。
「ごめんね。森川さんも来ていたことに私もかなりびっくりして」
勇凛くんは寝転がって天井を見ていた。
「七海さんはそれだけ魅力的な女性ってことですね……」
そうではない気がするんだけども。
「私は誰に何をされても、勇凛くんが一番なの」
「それは、わかってます。信じてます。でも、俺は、七海さんの全てを守れる存在になりたいんです」
勇凛くんの思いが痛いくらい伝わった。
でも──
「勇凛くん、私は守られるだけのお姫様じゃないから!私だって、自分で自分を守れるようになりたいし、なんなら勇凛くんも守りたいよ!!」
もともとか弱い女の子が性に合わない。
夢は見ない。
好きなキャラは王道の少年漫画の主人公。
「……わかりました。すみません。何もできなくて情けなくて。でも、俺は俺の方法で七海さんを守ります」
「うん。ありがとう」
勇凛くんは複雑な表情を浮かべつつも、私が手をのばすと抱きしめてくれた。
勇凛くんはわからないんだ。
この腕の中にいることが、私の全てを満たしてくれることを。
いつの間にか日付が回っていて二人で寝ようとした時。
「七海さん……すみません」
「なに?」
「あまり負担にならにようにするんで……」
服の裾がめくられた。
「え?」
「最後に……いいですか」
勇凛くんの嫉妬心と独占欲に火がついてしまった。
そこからラウンド2が始まってしまった……。
私が撃沈したあとに勇凛くんにすごい謝られた。
もっと体力をつけようと思った夜であった。




