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三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚してしまった件につきまして  作者: 七転び八起き


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第34話 林家の事情

 ──朝


 アラームで目覚めると、勇凛くんからのおはようメッセージ。


 そして、森川さんからも。


『会社の挨拶用に土産とか買うから、先帰ってて』


 森川さんももうすぐ林に来る。

 一体どうなるのか見当もつかない。


 その時、勇輝さんからもメッセージが。


『今日午後から社内会議がある。それまでに出社するように』


 今日も会議……。


 私は三人に返信をした後、ホテルからチェックアウトをして空港に向かった。

 そして、福岡から東京へ──


 ◇


 羽田に着いて、搭乗口から出ると、そこに見覚えのある姿が。


「勇凛くん!?」


 勇凛くんが立っている。

 確かに何時に着くかは言った。

 でも来るとは言ってなかった。


「夜に会おうと思って我慢してたんですけど、無理でした」


 勇凛くんの恥ずかしそうな笑顔に、いろんな思いが込み上げてきて、周りの目も気にせず抱きついてしまった。


「会いたかったよー!」


「俺もです」


 勇凛くんの温もり、匂い、私の居場所。


「今日は大学……?」


「はい」


「そうかー」


 ほぼ顔は合わせられないけど、同じビルにいる方が安心する。


「ちゃんと迎えにいきますよ」


 優しい声。


「うん。早く終わらせる」


 二人で手を繋いで歩く。


「あ……七海さん、うちの両親の帰国、来週になったんですけど大丈夫ですか……?」


 う


「う、うん。大丈夫だよ……」


「今週は七海さんの実家ですね……。緊張します」


 完全に忘れていた。


「その日のことは具体的に確認してまた教えるね」


 姉ちゃんにも紹介しなくちゃ。


 そのあと、勇凛くんと会社の最寄駅に向かった。


「兄は出張の時はどうでしたか……?」


 神妙な面持ちの勇凛くん。


「案外優しかったかも……」


「え?何がですか??」


 今度は焦り出す勇凛くん。


「いや、結構冷たくあしらわれると思ってたけど、案外普通だったというか」


 優しいとは違うか。

 それよりも、勇哉さんの奇行が厄介だ。


 ──と思って駅の改札を抜けようとすると、改札前で待ち伏せている。


 私をやや睨んでいる。


「兄さんなんでここに……?」


 逃げたい。

 でも私何も悪くないし!!


 二人で恐る恐る改札を抜けると勇哉さんがユラユラと近づいてきた。


「七海ちゃんに逃げられたし……俺助けてあげたのに」


 余計なこと言わないで!


「え……なにがあったんですか?」


 勇凛くんが青ざめる。


「俺、わざわざ持って行ったのに」


「勇哉さんその件については後で話しましょう!」


「いえ、ちゃんと言ってください」


 勇凛くんの表情に怒りがにじみだす。


「じ、実は──」


 ◇


「七海さんの出張について行ったんですか!?」


「だって七海ちゃんのためだもん」


「え?」


「あれなかったら、七海ちゃんは兄貴に見放されてたからね。たぶん」


 確かにそう。


「それは……七海さんを助けてくれてありがたいんですけど、七海さんは俺の妻です。これ以上距離を縮めないで下さい」


 勇凛くんは真剣に勇哉さんに言う。


「……お前はいいよな。末っ子で可愛がられて、甘やかされて」


 勇哉さんの表情が曇った。


「兄貴がどんな仕打ち受けたかも知らないで」


「え……?」


 勇凛くんが戸惑っているうちに勇哉さんは去っていった。


 一体何があったの……?


 勇哉さんが去ったあと、二人で呆然と立ち尽くしていた。


 その時、会議のことをふと思い出した。


「勇凛くん、とりあえず私行くね!終わったら連絡する」


「……はい。連絡待ってます」


 勇凛くんは複雑な表情を浮かべたままホームに戻った。

 私は気持ちを切り替えて会社に入った。


 ◇


 早速昨日の会議の議事録を作成。

 その間に電話対応、次の会議の準備。


 すると秘書室のドアが開いて勇輝さんが入ってきた。

 結構疲労が溜まっている感じだ。


「会議資料を」


「はい、こちらです」


 書類を渡すときに触れた指先が熱かった。

 もしかして……


「副社長、熱がありますか……?」


「問題ない」


 彼は何事もないように部屋から出ていった。


 ──そして午後の会議


 一見体調の悪さを感じない。

 気のせいだったのかと思うほど。

 でも、会議が終わって社員が会議室から全員出ていった後、深いため息をついた。


「お休みになられてはどうでしょう」


「……そうはいかない。俺は失敗は許されない」


 え?


 勇輝さんは立ち上がって会議室から去った。


 勇哉さんの言葉といい、彼のことが気になった。


 ◇


 秘書室に戻ってしばらくすると、ドアが開いた。

 見なくても誰かわかる。


「お疲れ様です」


 勇哉さんは隣の椅子に座った。


「兄貴、ヤバそうだよな」


「そうですね……体調悪いのにかなり無理されてますね」


「兄貴は昔親父が会社でやらかしたことの尻拭いをさせられて、色々大変だったんだよ」


 そんな過去が。


「そうだったんですね……」


「兄貴が今踏ん張ってるからこの会社が安泰なんだよ」


 ただの冷酷な御曹司だと思ってたけど、そうならざるを得なかった……のかな。


「教えていただきありがとうございます」


「……俺べつに兄貴のこと言うために来たんじゃないんだけど」


「え?」


「七海ちゃんと一緒にいたい」


「……」

「もう勇凛とかいいじゃん。俺なんでも七海ちゃんの願い叶えてあげるよ?」


「じゃあ、私に付きまとうのをやめてください……」


「俺の気持ち知っててひどい」


 デスクに顔をうつ伏せてる勇哉さん。

 非常にめんどくさい。


「だいたいあなた、結婚するんですよね?」


「あー。そうそう。だるすぎ」


「結婚しないとダメなんですか?」


「……」


 勇哉さんが立ち上がった。


「モヤモヤするから仕事終わったら森川くんと遊びに行こう」


 森川さん可哀想……。


「あ、森川くん来るの明日からだから」


 ・・・。

 え?


「俺の部下だから〜。じゃね」


 勇哉さんの部下にされちゃったとか、ものすごい被害者……。


 私もモヤモヤしていた。

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