第26話 英気を養うひととき
「いい映画だったねー私も原作読むよ!」
「はい、ぜひ読んでみてください」
もう陽が傾いていた。
「次はどうしようかなー」
今度はもっと色々調べよう。
「七海さん、猫アレルギーとかあります?」
「ないよ」
「じゃあ猫カフェ行きませんか?最後に」
「猫カフェ……?」
聞いたことあるけど行ったことはなかった。
「この近くにあるんですよ」
勇凛くんについて行った。
するとそこは、一見普通の建物。
中に入ると受付があって、店員に注意事項を説明された。
そして、上の階に上がって扉を開くと──
猫、猫、猫
至る所に猫がいる。
そして机にも椅子にも。
座る場所がない。
私は実家で犬を飼っていたけど猫とはあまり関わりがなくて、ただ傍観していた。
勇凛くんは猫に近づいて撫でている。
猫が羨ましい。
なぜか勇凛くんに猫が群がる。
勇凛くんは包囲されている。
私が近づけない!
猫に嫉妬していた。
「七海さん、可愛くないですか?」
勇凛くんが抱き上げている猫を見せてきた。
「う、うん」
恐る恐る猫に触れようとしたら猫パンチをされた。
「痛い……」
「あ……この子は頭に触って欲しくないみたいですね……」
私は猫と相性が悪いのが何となくわかった。
そして、そのあと一時間くらいのんびりして猫カフェを後にした。
もう外はだいぶ暗かった。
「勇凛くんはよく行くの?あそこ」
「いえ……あそこは保護猫活動をしていて、俺も捨て猫をあそこに連れて行った縁があるんです」
優しい……。
惚れ直す。
「あ!勇凛と七海ちゃんだ」
その声に私たちは硬直した。
そして振り返らなかった。
走った。
「待って〜」
私が足が遅いせいで捕まった。
「どこ行ってたの?」
満面の笑みの勇哉さん。
勇凛くんは悔しそうだ。
「七海さんに触らないでください!!」
私の腕を掴んでいる勇哉さんの手を払った。
「いいな〜俺もデートしたい」
知るか!!
「あ、勇凛、来週から頑張ってね〜森川君もそのうち行くから〜」
森川さん……
何とかこの男を制御して……
「じゃあ俺これからクラブ行くから〜じゃあね〜」
せっかく楽しかったデートの余韻をぶち壊して行った。
◇
私たち無言のまま帰路を辿っていた。
こんな気持ちのまま終わらせたくない!
「……七海さん。今日うちに来ませんか?」
「うん、わかった」
よかった。
まだ一緒にいられる。
勇凛君の家に向かった。
◇
勇凛君の家に向かう途中、スーパーを見つけた。
「今日夕飯どうしますかね。何が食べたいですか?俺作りますよ」
勇凛くんの料理姿、また見たい!
でも──
「今日は私作るよ!」
私も惚れ直してもらいたい!!
「え!嬉しいです!」
私たちはスーパーで必要な食材を揃えてすぐに勇凛くんの家に向かった。
私は着いて早々キッチンの前にたった。
「勇凛くん、エプロンある?」
「はい、これどうぞ」
黒いシンプルなデザインのエプロン。
勇凛君がつけているのを見たい。
我慢して私はエプロンをつけて、唯一まともに作れるカレーを作った。
そしてサラダやスープは勇凛くんが作った。
テーブルに料理を並べる。
二人で「いただきます」をしてカレーを食べた。
「カレー美味しいです!七海さんありがとうございます!」
勇凛くんが嬉しそうにカレーを食べてくれるのが、本当に嬉しい。
「早く二人でこういう生活がしたいです」
勇凛くんが呟いた。
「そうだね……。楽しみだね!」
「はい」
毎日勇凛くんと一緒にいられるようになるために、頑張らないと。
打倒、林正輝!!
◇
食べ終わって二人でテレビを見てゆっくりしてたけど、そろそろ帰ろうかなーと思った瞬間。
背後にいた勇凛くんに、首筋にキスをされた。
不意打ちに驚いて全身が震えた。
やばい、それをされると、スイッチが……!
「七海さん、今日可愛くて、ずっと我慢してました」
勇凛くんの瞳が熱を帯びている。
「え……、そうなの?そんな風には見えなかったよ」
「せっかく遊びに誘ってくれたのに、そういうこと考えてるのバレたら情けなくて……」
勇凛くん……。
「これから素直に言っていいよ」
「……はい。ありがとうございます」
その瞬間勇凛くんに押し倒された。
「このままいいですか」
え
「今日歩き回ったからちゃんと洗ってからがいいんだけど……」
「すみません。待つのきついです」
ジリジリと勇凛くんが迫ってくる。
「……いいよ」
もうあるがままの私を差し出そう。
まともに服を脱ぐ余裕もないまま、勇凛くんと深く繋がってしまった。
「七海可愛い……好き」
そう囁かれると頭が回らなくなる。
この時だけ理性も敬語も外れる勇凛くん。
「兄さん……七海に触れて……許さない」
表情がやや怖い。
こらえきれずに声を漏らすと
「今の声また聞かせて」
とねだってくる。
別人みたいだ……。
そして、若くて体力があるせいか果てしない。
もう無理!と思っても、なぜか体はしっかり受け入れているという。
きっとこれが、相性がいいというやつなんだな……。
──その日は結局泊まった。
私の退職日はもうすぐ。
あの男の元へ行く前の英気を養うひとときだった。




