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三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚してしまった件につきまして  作者: 七転び八起き


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第21話 謎の誘い

 二人でベッドの中でくつろぎながら、スマホで賃貸物件を見ていた。


 勇凛くんにお願いして腕枕をしてもらいながら。

 幸せすぎる。


「どの辺に住みますかね……」


 これからあの会社で働くなら、あっちに近い方がいいのか──


 でもなるべく近づきたくないし、プライベートまで汚染されたくない。

 ずっと働く気なんてない。

 認めさせるまでいる期間限定だ。


「勇凛くん」


「はい」


「ラウンド2の近くで探そう」


 我ながらアホな提案である。


「……いいですね。俺もっと歌上手くなるように練習します」


 ……そっちか!


「今度物件見に行こうか?」


「はい、行ってみましょう」


 嫌なことはひとまず置いておいて、私たちは夫婦としての日常を堪能していた。


 ◇


 ──月曜日


 出社して早々、上司と面談。


「すみません、一身上の都合により、退職します」


 上司は顔をしかめている。


「まいったな。君の後任が思いつかない」


 診断書のおかげで残業はかなり減り、負担は上司に回った。

 心なしかやつれている。

 私に丸投げしていた罰だ。


「退職後はどうする?」


「別の企業に行きます」


 まだこの上司の方がマシなのかもしれない。

 勇輝さんは私を潰しにきそうな気がする。


「今まで無理をさせてすまなかった」


 上司に頭を下げられた。

 驚いて言葉に詰まった。


「……はい。正直かなりしんどかったです。後任の人はちゃんと配慮してあげてください」


 新卒で入社してからここにずっと勤めてきた。

 いい思い出はあまりない。

 むしろキツかった。

 ただ、なんとかそれでも持ち堪えていた自分を褒めたい。


 上司との面談が終わって、廊下を歩いていると──

 森川さんが待ち伏せていたかのように立っていた。


「辞めるんだ」


「はい。色々あって」


「もしかして……“ 勇凛くん”関係?」


 鋭いなこの人は。


「……あの会社に入らないといけなくなったんです」


「は……?あの会社って林ホールディングス……?」


「はい」


「何があったんだよ」


 森川さんは珍しく動揺している。


「私は人質みたいなもんですよ」


 勇凛くんをあの会社に縛るための。


「意味がわからない」


 私だってこんなことになるなんて、微塵も思っていなかった。


「森川さん、色々ありがとうございました」


 森川さんに頭を下げた。


「……結婚の次は退職か」


 森川さんは私の横を通り過ぎた。

 ……と思ったら振り返った。


「連絡先聞くのはアリ?」


 連絡先……。辞めるのに?

 もう話すことなんてない。


 私が答えられずにいると、森川さんはボールペンをだして、私の手をとった。

 そして手の甲に番号を書いた。


「え!?」


「なんかあったらいつでも連絡して」


 そう言ってオフィスに戻った。


 なんて強引なんだ!


 ◇


 会社から出ると、勇凛くんが待っていた。


「お待たせ」


「お疲れ様です」


 私はすぐに勇凛くんに近寄って腕を組んだ。

 もう関係を隠すつもりもなくなり、この会社とももうすぐお別れ。

 あの会社の前では流石にできないけど。


 勇凛くんの口数が少ない。

 心なしか元気がない。


「どうしたの……?」


「あ……すみません、ちょっと兄から連絡があって」


 なんだろう……。

 嫌な予感がする。


「来週から研修を受けろと」


 え。


「本社で?」


「はい。今のところは」


「急だね……」


 容赦なく追い詰めてくる。


「バイトはもうできなくなるので、今住んでるマンションから退去しないといけなくて……」


 やばい……じゃあ勇凛くん、住む場所無くなるの……?

 まさか、お兄さん達と暮らすことに?

 私と会う時間は??

 勇凛くんと離れ離れは嫌だ。


「勇凛くん、私の家で一緒に暮らそう!」


 私は思い切って提案した。

 勇凛くんは驚いて少し微笑んだと思ったのも束の間、すぐに表情が曇った。


「俺に近づくと七海さんが危険な目に遭う気がするんです」


 ──そんな……


 あいつらの思惑通りにいってたまるか!


「勇凛くん。私たちは夫婦だよ。夫のピンチなんだから、私も一緒に戦うよ」


 私は勇凛くんの手を握った。


「……ありがとうございます」


 勇凛くんの表情が柔らかくなった。


 私のマンションの前に着いた。


「家に着いたら電話します」


「うん」


 勇凛くんが駅に戻ってゆく。


 その背中が寂しそうで──

 思わず全力で走って後ろからしがみついた。


「え!?」


 勇凛くんが驚いている。


「勇凛くん大好き!!」


 勇凛くんごめん、耐えられなかった。

 勇凛くんが私の頭を撫でてくれた。


「俺も、七海さんのこと大好きです」


 私たちはキスをして、別れた。


 部屋に戻って、余韻に浸っていると、スマホに着信がきた。

 勇凛くん!!


 ……と思ったら知らない番号。

 誰?


「……もしもし」


『私だ』


 この声は──

 勇輝さんだ。


 重い声の響きに体が震えた。


「なぜ私の番号を……?」


『君がこの前置いていった書類に書いてあった』


 最悪だ。


「勇凛くん、来週から研修って早くないですか……?」


『勇凛から聞いたのか。別に早くない。私もそうだった』


 でも、勇凛くんは内定取り消されたばかりで心の準備もできてない。


「バイト辞めなきゃいけないって悩んでましたよ。ちゃんと相談して決めるべきだと思いますが?」


『私に何も相談なく結婚した勇凛が悪い』


 勇凛くんはこの人の所有物かなんかなの……?


『それより君は自分の心配をした方がいい。いつからこっちに来るんだ』


「今日辞表だしたので、あと二週間くらいです」


『そうか……。明日は空いているか?』


「明日?仕事ですけど……」


『夜だ』


 夜?


「仕事終わったあとは特にありませんが」


『またここに来い』


 え。


「本社にですか……?」


『ああ』


「なんでですか?」


『それは来ればわかる。あと──』


 あと?


『勇凛にはこのことを言うな』


 そして一方的に電話を切られた。


 ──不安すぎる。

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