第20話 夫婦の絆
そのあと、どっと疲れがでて、家に帰ることに。
「あー私言い過ぎちゃった」
「そんなことないですよ。あんな言い方されたら当然です。ただ……」
勇凛くんは立ち止まった。
「俺のせいでこんなことになって、七海さんに申し訳ないです」
「勇凛くんのせいじゃないよ」
「いえ、でも巻き込んでしまいました」
陽が傾く。
夜を連れてくる。
勇凛くんの顔が暗くてよく見えない。
「勇凛くん。今日、うちに泊まれる……?」
勇凛くんは少し驚いていた。
「いいんですか??」
「うん」
勇凛くんは表情が明るくなって嬉しそうだ。
「七海さんから言ってもらえて嬉しいです」
──やっぱり、勇凛くんとのこの日々を大事にしたい。
私たちはマンションに向かった。
◇
二人で部屋に入ったあと、私たちは無意識に抱き合っていた。
大きな試練が目の前に立ちはだかる中、信じられるのはお互いだけだ。
初めてこんなに人を大事にしたいと思った。
愛しいと思った。
守りたいと思った。
ただそれだけだった。
「……勇凛くん」
「はい」
「してもいいかな?」
「何をですか?」
「……察してよ」
勇凛くんが固まった。
私は勇凛くんとしっかり繋がりたかった。
◇
その後ずっと勇凛くんは挙動不審だ。
「あの……シャワー浴びてもいいですか?」
「え?」
「汗とかかいてるので、洗い流してからがよくて……」
「私は気にしないよ」
「いや、でも」
勇凛くんはためらっている。
「わかった。じゃあ一緒に入る?」
「え!?」
勇凛くんが激しく動揺している。
「冗談だよ」
でも別にいいと思っていた。
「じゃあ、すみません。浴びてきます」
勇凛くんはすぐにお風呂に向かった。
待っている時間が、もどかしかった。
でも割とすぐに上がってきた。
濡れている勇凛君を見たら、一気に緊張に変わった。
「わ、私もはいりマス……」
どうしよう。
最後にシたのっていつだっけ?
かなり前だ。
ちゃんとできるかな……。
不安になった。
でも、ここまできたら覚悟を決めよう。
たとえ上手くいかなくても、私たちなら大丈夫。
よし!!
私は上がってすぐに、体を拭いて、バスタオルで体を巻いた。
そしてそのまま勇凛くんに直行した。
勇凛くんは、そんな気合いが入った私を見て驚いて目を見開いていた。
「え、もうですか……?」
「うん。ダメかな?」
私は早く繋がりたかった。
勇凛くんでいっぱいになりたかった。
「いや、大丈夫です。ちょっと緊張して」
戸惑う勇凛くんが愛しい。
──でも
「勇凛くんが、今はそういう気分じゃないならやめておこう」
「え……?」
流石にこれはやや強引だ。
やっぱ二人が同じ気持ちでないと。
私が着替えようと勇凛くんから離れようとした時、勇凛くんに手を掴まれた。
「……俺は覚悟はできてますよ」
勇凛くんの目は真剣だった。
「かくご……?」
勇凛くん、前から少し思ってたけど、『武士』っぽい……。
私はつい笑ってしまった。
「何がおかしいんですか?」
勇凛くんが混乱してる。
「ごめん。嬉しかったんだ。ちゃんと真剣に向き合えてもらえてるんだなって」
突きつけられた現実は辛いものだけど、勇凛くんと出会えたことに全く後悔はしていない。
「勇凛くん、ベッドに座って」
勇凛くんは緊張した面持ちで頷いた。
勇凛くんが座った後、私はバスタオルを外した。
勇凛くんの目が釘付けになっている。
流石に恥ずかしい。
「あんまり見られるとちょっと……。そんなスタイルもよくないし」
「いえ……すごく綺麗です」
その言葉に顔が熱くなった。
勇凛くんも服を脱いだ。
想像よりも引き締まった体をしていた。
息を吞むほど美しいと思ってしまった。
男の子なのに。
私が触れていいのか──
勇凛くんは俯いた。
「……すみません、どうすれば七海さんを満たせるかわからないです」
「そんな深く考えないでいいよ」
私は勇凛くんにそっとキスをした。
そして、勇凛くんを抱きしめた。
温かくて滑らかな感触が心地よかった。
勇凛くんも私を抱きしめてくれた。
少し震えている。
またキスをする。
今度は深く──
だんだんと強張っていた勇凛くんの力が抜けていく。
二人の体温が上がってゆく。
私は自分より勇凛くんを満たしたかった。
勇凛くんが初めてだから尚更。
丁寧にしたかった。
「すみません……リードできなくて」
「別にどっちでもいいんだよ」
勇凛くんの肌に唇を落とす。
勇凛くんの様子を見ながら、私は確かめていた。
こんな積極的な自分は初めて。
「どう?」
「すごくいいです……」
だんだんと踏み込んでいく。
だんだんと呼吸が乱れてくる。
「勇凛くんいいかな」
「はい……」
私はゆっくりと、勇凛くんを自分の中に沈めた。
その瞬間、全身に快楽が駆け巡った。
私は何もされてないのに。
たぶん、必要なのはテクニックとかじゃない。
相手を大切に想う心だったのかもしれない。
「勇凛くん……どう?」
いつも見下ろされる私が、今は勇凛くんを見下ろしている。
「七海さん温かいです」
その瞬間、上下が逆転した。
「すみません、ちょっと抑えられないです」
「うん……いいよ」
勇凛君の頬を撫でた。
衝動のまま私たちは求めあう。
深く繋がる。
辛かった気持ちがこの瞬間全部吹き飛んだ。
「七海」
初めて勇凛くんに名前をそのまま呼ばれた。
「好きだよ」
胸が震えた。
「私も」
その瞬間、何もかも結びついた気がした。
「勇凛」
私も“くん”をやめた。
◇
終わったあと、二人でベッドに横たわっていた。
ただ見つめ合っていた。
「七海さん……ありがとうございます」
また七海“さん ”に戻っていた。
「私も嬉しかった」
恥ずかしくなって布団に潜った。
「俺、頑張ります」
勇凛君が私の手を握った。
「うん。私も」
絶対負けない。




