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三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚してしまった件につきまして  作者: 七転び八起き


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第16話 告白と暗雲

 私たちは次はクレーンゲームをやっていた。


「うーーーん」


 なかなか取れない。

 好きなキャラのぬいぐるみが。


「七海さんそのキャラクター好きなんですか?」


「うん。好きなアニメの推しキャラなんだ」


 なかなか取れないまま、三千円投入。


「もう諦める……」


 私はその場を離れた。

 もうそろそろ帰ろうか、と思った時。


「七海さん、あの、これ」


「ん?」


 勇凛くんの方を振り向くと、勇凛くんがさっきのアニメのキャラのぬいぐるみを持っていた。


「え!?取れたの?」


「はい。七海さんがほしいキャラではないんですが、こっちが落ちてきて」


 勇凛くんのとったキャラは、アニメの推しではなかったけど嬉しかった。


「ありがとう。これ大事にする」


「すみません、取れなくて」


「ううん。私のためにありがとう」


 私はそのぬいぐるみを優しく抱きしめた。

 そして、ラウンド2から出た。


「今日は楽しかったね!」


「はい。七海さんが楽しんでくれてよかったです」


 勇凛くん、ボーリングもカラオケも苦手で、でもここに来たってのは……。


「勇凛くん、もしかして私のために?」


 勇凛くんは頷いた。


「七海さんの笑顔が見たいんです」


 勇凛くんのはにかむような笑顔が、愛しいと感じた。

 毎日毎日勇凛くんへ募っていく想い。

 不安はあるけど、勇凛くんの気持ちは揺らがない。

 この先待ち受ける現実が厳しくても、二人で乗り越えたい。


「……勇凛くん」


 私は立ち止まった。


「はい」


 勇凛くんが振り返る。


 私は勇気を出した。


「私、勇凛くんのこと、好きだよ」


 やっと言葉にすることができた。


 勇凛くんが固まっている。

 そんな驚く様なことなんだろうか。


「……ありがとうございます。俺、たぶん今までの人生で一番嬉しいです」


 大袈裟すぎる。

 でもそうやって言ってもらえると私も嬉しい。


「勇凛くん、これからもよろしくね」


「はい、よろしくお願いします」


 私達は握手をした。


 最初はどうなるか不安だったけど、ここに辿り着けてよかった。

 やっと私たちはスタートラインに立つ事ができた気がする。


「あ……七海さん。土曜日のことなんですけど……」


 その時、我に帰った。

 忘れていた。

 大いなる試練を。


「う、うん」


「13時に、本社で会うとこになりました」


 本社……?


「え、まさか、林ホールディングスの……?」


「はい」


 あのでっかいビルで……?

 とんでもないプレッシャーがのしかかってきた。


「ゆ、勇凛くん、じゃあ私はこの辺で帰るね」


「え、夜ご飯一緒に食べようと思ってたんですが」


「ごめん、ちょっと用事が……」


 勇凛くんは寂しそうだ。


「はい、わかりました。では気をつけて」


「じゃあ、また用事終わったら連絡するね!」


 私はダッシュで駅に向かった。


 ごめん、勇凛くん。

 でも私居ても立っても居られなくて。


 そのあと、別の駅で降りて、駅ビルのアパレルショップに直行した。


 ちゃんとした服装で行かなきゃ……。

 私は当日をイメージして、念入りに服を探していた。


 完璧にしなくちゃ。

 勇凛くんの一番上のお兄さんは、あの会社の副社長……。

 相応しい女を演じなければ。


 その後、二時間かけてやっと服が決まった。

 そして、その後もバッグや靴を探して、自宅に着いたのは夜がかなりふけてからだった。


 ◇


 勇凛くんと挨拶に行く日が目前になり、私は夜も眠れなかった。

 寝不足で出勤してフラフラとオフィスを歩いていると、森川さんと遭遇した。


「……どうしたの?」


「なんでもないです……」


「いや、明らかになんかあったでしょ」


「まあ、色々あるんですよ……」


「色々って?」


 しつこいな……。


「もしかして、あの子のこと?」


 あの子?


「勇凛くんのことですか?」


「勇凛くんっていうのね」


 つい言ってしまった。


「私の夫なんで、あの子とか言うのやめてください」


「……ごめん」


 森川さんが珍しく、少し反省している。


「話したら少し楽になるかもよ?」


 まだくらいつく森川さん。

 でも、胃がキリキリするし、不安すぎて聞いてほしいとい気持ちが湧いてきてしまった。


「誰にも言わないでくださいよ……?」


「うん」


「勇凛くんは……勇凛くんの家族は、林ホールディングスの経営者なんです」


 沈黙が流れた。


「……それはハードだな」


「はい……」


「どうなるかわからないけど、とりあえず挨拶して帰ればいいんじゃないの?」


「それだけで済めばいいんですが……」


 勇凛くんのお兄さん、勇哉さんのことを思い出した。

 きっとあの人もいる。

 会いたくない。

 また煽ってくる絶対に。

 冷静でいられるだろうか……。


「じゃあ、気晴らしに飲みに行く?」


「いえ、お酒はもうこりごりです」


 また何かしでかしたらヤバい。


「俺となんかあったら大変だもんね」


「え?」


「じゃあ頑張ってね」


 森川さんは何考えているかわからない笑みを浮かべて去っていった。

 あの人も私で遊んでるだろ絶対!


 ◇


 仕事が終わってフラフラとビルから出ようとすると、スマホに着信があった。

 勇凛くんからだった。


『何時に仕事終わりますか?』


 勇凛くん……。


『今終わったよ』


 既読。


『今からそっちに行ってもいいですか?』


 ──会いたい


『うん、待ってる』


 それから勇凛くんをしばらく待っていた。


 ぼーっと景色を眺めていると、だんだんと音楽のような音が聞こえてくる。

 煩い。

 目の前に高級車が停まっている。

 あれ……あの車って。


 嫌な予感がする。


 車の窓が開いた。


「あー!七海ちゃんだ!何してるの?」


 ──なんでまたこいつ……この人と会うんだこのタイミングで。

 こんな偶然が何度も起きるなんて、私は神に見放されたのか?


 勇哉さんは車を路駐してこちらに来た。


「明日うちの会社来るんだよね?楽しみ〜」


 ニコニコしている。

 悪魔みたいだ。


「何してるの?」


「……勇凛くんを待っているんです」


「え?あいつこれからここに来るんだ。俺も一緒に待つわ」


 ──え、なぜ?


 よくわからないまま、タバコを吸い出したこの人から目を逸らして勇凛くんを待った。

 すると、遠くから勇凛くんが見えた。

 私と目が合って笑顔になったかと思いきや、隣の人のことを見て青ざめている。


 やっぱり苦手なんだ。

 勇凛くんも。

 勇凛くんは慎重にこちらに来た。


「あ、勇凛久しぶり〜」


「……なんで兄さんがここにいるんですか?」


 勇凛くんの険しい顔。


「ここ車で通ったら偶然七海ちゃん見かけた」


「七海ちゃん……?」


 勇凛くんの声が低くなった。


「七海さんのこと、そんな呼び方しないでください」


 ほぼ同じ顔の二人が睨み合っている。

 でも勇哉さんは特に何も変わらず。


「勇凛本気なんだね。安心した〜」


「何がですか?」


「別に。じゃあ明日本社で待ってるから、気を引き締めておいで」


 ただでさえ不安なのに余計に煽ってくる。

 勇哉さんはヘラヘラしている。


「俺これから同伴だからさー。ばいば〜い」


 そのまま車に乗って行ってしまった。


 私と勇凛くんはしばらくそこに立ち尽くしていた。

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