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三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚してしまった件につきまして  作者: 七転び八起き


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第15話 ギャップ萌え

「染まる……?」


 勇凛くんは頷いた。


「俺は自分の足で生きていきたいんです。親の所有物のようにはなりたくないんです」


 陽が少し傾いてきて、勇凛くんを照らした。

 勇凛くんが輝いて見える。


「兄たちのように生きるのは嫌なんです。今までは経済的理由で親の決めた学校に行ってますが、卒業したら、自分の自由に生きたいんです」


 勇凛くんは私を見た。


「結婚も……自分の決めた人としたかったんです」


 胸が高鳴った。


「うん……。話してくれてありがとう。嬉しい」


 涙が出そうになった。


「なんで私なのかな。いまだによくわからないよ。それだけは」


 勇凛くんは私の手を握った。


「初めて会った時、あなたがいいと思ったんです。それじゃダメですか?」


 ダメじゃない。

 ただ自信がない。


「七海さん。自分では気がついてないかもしれませんが……とても魅力的です。今まで会った女性の中で一番惹かれました」


 自分だとまったくわからない。


「大袈裟だよ」


「他の誰がどう思っても、俺にとって七海さんが一番なんです」


 勇凛くんの握った手に力がはいる。

 勇凛くんの気持ちが伝わる。

 自信はないけど、勇凛くんの気持ちは信頼できる。


「勇凛くんありがとう。私も今まで出会った男の人の中で、勇凛くんが私のことを一番大切にしてくれている。本当に信頼できる人だよ」


 二人の手が硬く握られる。

 絆を深めるように──


「早く家を決めましょう」


「うん」


「あと……」


「うん」


「これからラウンド2行きませんか?」


「……え?」


 予期せぬ誘いだった。


 ◇


 勇凛くんに導かれながら、私たちはラウンド2に行った。

 久々に来たな……。

 勇凛くんは受付に行ってお金を払っている。


「あああ!私も払うから!」


「いえ、俺が払います。俺が誘ったんですから」


 しばらくすると勇凛くんが戻ってきた。


「まず、ボーリングやりませんか?」


 ボーリング。

 ちょっと……いやだいぶストレス溜まっていたから、やりたい。


「うん!」


 私たちはシューズを履いて、ボーリングレーンに向かった。


 まずは勇凛くん。


 投げる前からわかる。

 目線、姿勢。これは上手い。

 勇凛くんが思い切り投げた一投。


 ──ガーター一直線だった。


 え?


 勇凛くんはショボンになってる。


「あーやっぱダメです」


「え?勇凛くん今の偶然だよね?」


「いえ……俺苦手なんです。ボーリング」


 意外すぎた。

 なんでもできるイメージだった。


「じゃあ七海さんの番ですよ」


 今度は私が構える。

 私も得意じゃない。

 ピンをじっくり眺める。


 その時、なぜか勇凛くんのお兄さんが頭に浮かんだ。

 その時の怒りをそのまま一投に込めた。


 ──まさかのストライク。


「七海さん凄いです!」


 勇凛くんが手を叩いて喜んでいる。

 ごめん、勇凛くん、お兄さんにボーリング投げつけてた。


 その後も勇凛くんはガーターと、わずかなピンを倒す程度で、そのギャップが逆に尊かった。


 私は──

 今までやってきた中で一番の高得点を叩きだした。

 これはストレスのせい……?


「七海さんすごいですよ。結構運動神経ありますよね?」


「いや……部活でバレーボールやってたくらいだよ」


 その時、勇凛くんの目が輝いた。


「七海さんのバレーボールやってる姿、見たいです!」


 唐突なお願いに戸惑った。


「暫くやってなかったから、もう無理かも」


 しかもレギュラーじゃなかった。


「じゃあ今度、市民体育館とか借ります!」


 マジか!!


「勇凛くんはスポーツやってなかったの?」


「弓道を……でもやっぱ当たる方が珍しかったです」


 勇凛くんの弓道技姿。

 死ぬほど見たい。


「え、写真とか持ってる?」


 私は必死だった。


「え、一応ありますけど……」


「見せて」


「嫌です……」


「じゃあ私のも見せるから」


「……はい、じゃあ見せます」


 勇凛くんは嬉しそうだ。


 勇凛くんのスマホに入っていた、高校時代の弓道着姿──

 カッコ良すぎる!!

 やばい、これは同じ高校に通っていたら一目惚れしてた。

 今度着てくれないかな。


「勇凛くん、ありがとう……私なんか回復してきた」


「え、なんでですか?」


「いや、気にしないで」


「じゃあ七海さんの見せてください」


 勇凛くんの真剣な眼差し。


 私は仕方なくスマホの写真の履歴を漁っていた。

 十年以上前の写真。


 あった。でも最悪だ。

 写真の私の両脇に可愛い女子がいた。


「どうぞ……」


 勇凛くんに見せた。


「……七海さん。可愛い……」


「え?」


「俺、たぶん同じ高校だったら告白していたと思います」


 一気に顔が熱くなった。


「ありがとう……。お世辞でも嬉しいよ」


「お世辞じゃないです!本当です」


 勇凛くんはまた見ている。


「これ、大判印刷して、家に飾りたいです……」


「え……」


 私の高校時代の写真を……。


「勇凛くん、画像送ってあげるから、それはやめよう。なんか嫌だ」


 勇凛くんはまたショボンに。


「だって昔の私愛でられるの複雑だよ。今の私、見てないみたいで」


 昔の方が若くてエネルギーあったから仕方ないけど!


「今の七海さんが一番好きです。でも昔の七海さんにも恋してしまったんです……」


 複雑な心境だった。


「勇凛くん、次はカラオケをやろう」


 私はこの話題から抜け出したかった。


「え……」


 凄い嫌な顔をされた。


「え、ダメ?」


「いや……七海さんが歌いたいなら、どうぞ」


 勇凛くんの反応が気になるが、私たちは次はカラオケの部屋に入った。


「勇凛くん先歌っていいよ」


「……いや、七海さん歌ってください」


「え、うん。わかった」


 私は懐メロを歌った。

 もう今の流行りの曲もわからず、青春時代の曲しか歌えない。


「七海さん、歌上手いです!」


 勇凛くんは目をキラキラさせている。


「ありがとう。じゃあ次、勇凛くん」


 マイクを渡した。


「あ……俺はいいです」


 なぜ!?


「え、聞きたいよ」


「いや、俺はちょっと」


「少しでいいから」


 勇凛くんは悩んだ末、なぜか昭和の歌謡曲を選んだ。


「七海さん、引かないでください」


 勇凛くんは歌い出した。


 それは──

 見事に音程を外しまくっていた。


「もうここまでで勘弁してください」


「う、うん。大丈夫だよ」


 ──しばしの沈黙


「幻滅しましたよね」


「ううん。勇凛くんのこういう一面が知れて、嬉しい」


「本当ですか?」


「うん、親近感湧いた」


「……ならよかったです」


 勇凛くんが安心している。


 ヤバい……。

 これがギャップ萌えというやつだろうか。

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