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三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚してしまった件につきまして  作者: 七転び八起き


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第11話 真実と告白

「どこに行く?」


 森川さんとオフィス街をフラフラ歩く。


 森川さん──


 二つ上の先輩。

 この人のプライベートのことは全く知らない。


 仕事では冷静沈着で無駄がない。

 言うべきことはちゃんと言う。

 理想的な社員だ。

 私の上司も森川さんにはなかなか言い返せない。


「森川さんって結婚してるんですか?」


 うっかり聞いてしまった。

 地雷かもしれない……。


「結婚してないよ。彼女もいない」


「え!意外です」


「川崎さんがあんな若い子と結婚する方が意外だよ」


 ハイソノトオリデスネ……。


「もっと早く動けばよかった」


「はい?」


「いや、なんでもない」


 森川さんが言ったことが車のクラクションのせいであまり聞こえなかった。


「あ、俺行きたい飲み屋あるんだ。そこでもいい?」


「はい!大丈夫ですよ」


 森川さんが向かった店は──

 私と勇凛くんが婚姻届を書いた場所。


 うわーーー。


「あの、やっぱり別のところに──」


 森川さんは暖簾をくぐってしまった。


 あーーー!


 私は身を潜めて森川さんに隠れながら店に入った。

 店長と奥さんが見える。

 まずい。

 案内された席で、メニュー表で顔を隠していた。


「……どうした?」


「いえ、おきになさらず……」


 お願い、なんとか、バレませんように……!


 その時、奥さんが料理を持ってきた。


「あら、この前婚姻届持ってきた人じゃない!!」


 ───オワタ


「あんたー!来たよあの子!」


 店長が出てきた。


「お?」


「婚姻届の子」


「え、何?なんかあったの?」


 森川さんが驚いてる。


「おー!あの子は元気か?あのかっこいい兄ちゃん」


「はい……おかげさまで」


「無事に夫婦になれた?」


 奥さんは悪気なく普通に聞いてくる。


「はい」


 店長と奥さんは嬉しそうだ。


「また一緒においで」


「はい、今度連れてきます」


 二人は店の厨房に戻った。


「婚姻届ってなんのこと?」


 森川さんが興味津々に聞いてくる。

 もうここまできたら、嘘も誤魔化しも効かない。

 森川さんは勇凛くんを知ってる。


「実は──」


 私は森川さんに真実を話した。


「告白された次の日に入籍?」


 森川さんが今まで見たことないような顔で、やや戸惑っている。


「はい。酔った勢いで……」


 森川さんは天井を見ている。


「婚姻届持ってきたんだ。あの子」


「はい。びっくりしました」


 机の上の料理を森川さんは食べている。


「それは俺にはできねーわ」


「そ、そうですよね」


「出す時も嫌がらなかったんだろ?」


「困ってたとは思います」


「……でも本気だよな。あの子」


「はい。入籍してすぐに、私を妻として扱ってくれています」


 勇凛くんのことを思い出して、胸が温かくなった。


「あんな若いのにすごいなー。いくつ?」


「二十二歳ですね……」


「まじか」


 森川さんはただただ驚いていた。


「お互いのことほとんど知らないで結婚って、話題とかあるの?」


「うーん。まだ一緒に住んでないので、そこまで色々話せてはいないです」


「そうか……。まあ幸せならそれでいいか」


 森川さんが目を伏せた。


 そのあと、色々雑談をした後、店を出た。


「いやーえらいこと聞いてしまった」


「秘密にしてください。お願いです」


 切実な願いだった。


「俺言うと思う?」


「いえ……森川さんは信用してます」


 一応。


「なんかフクザツ」


「はい?」


「突然現れた王子様に拐われたような」


「誰がですか?」


「誰でしょう」


 森川さんが意味深な言葉を言う。


「森川さん、なんか言いたいことあるならハッキリ言って欲しいんですが……。私は鈍感だからわからないです」


 その時、森川さんが止まった。


「俺、川崎さんのこと、狙ってたんだけど」


 ・・・。


「え!?」


「モタモタしてた自分が悪い……。次からは気をつけよう」


 突然森川さんからカミングアウトされた事実にただただ困惑していた。


 ◇


「じゃあ俺帰るわ」


 私がぼーっとしてたらいつの間にか駅の近くにいた。


「あ、今日はありがとうございました」


 私は頭を下げた。


「俺の言った事、あまり気にしないで。今まで通りで」


 森川さんはそれを告げると改札を抜けていった。


 気にするわ……。

 心の中で呟いた。


 そんな風に見られてたなんて思ってもみなかった。

 そんな素振りもなかった。

 このタイミングで言われても困るし。


 ぐるぐると色々考えてるうちに、私は駅から反対方向へ。

 無意識に私は向かっていた。

 勇凛くんのバイト先へ──


 そんなに遠くはない。

 きっとこのモヤモヤした感情を、勇凛くんを見ればかき消せるはず。

 そう思ってバイト先の居酒屋の近くに行くと、店の前に勇凛くんがいた。


 ナイスタイミング!


 私は声をかけようとした。


 ──が


 勇凛くんは店から出てきた女の子と話している。

 仲が良さそうに。


 勇凛くんの笑顔。

 私以外の子に向けられている。

 悲しい。

 勇凛くんはそのままその子と歩いて行った。


 勇凛くんのことを疑ったりなんかしてない。

 ただ、話してる相手が他人で、若い女の子だったことが辛かった。

 何一つ適うものがない。


 私はまた駅に向かって歩き出した。

 すると、スマホに通知が来た。

 勇凛くんからだった。


『七海さん、バイト終わりました。今日は月が綺麗ですね』


 メッセージに月を撮影した画像が添付されていた。

 私も空を見上げたら、同じ月が浮かんでいる。


 きっとまだ遠くない。

 私はまた勇凛くんの行った方向へ走り出した。

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