表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/17

#シズクをマモレ

通称ふくろうハウスとお別れして、木の上で暮らすのがアタリマエになった。北の大地は、夏から秋へ。この季節は食べ物がいっぱいあるので、寒くなる前、今のうちに沢山食べて大きくなるんだよとパパとママは声をそろエル。その言いつけ通り、ウチはモリモリ食べてビュンビュン空を飛び回っタ。

「ナギ、お前は兄弟姉妹の中で一番大食いで、一番エネルギーを消費しているな」とパパは目を点にして言う。褒めているのか、呆れているのか、今いちよくわからナイ。


その日もよく晴れていて、絶好の食べ物探し日和、空遊び日和だった。

ウチは兄弟姉妹やパパママよりも高く飛んで、眩しいお陽様と涼しい風を浴びていた。シズクも負けずについてきてウチの真似ができるようになった。姉としては大変嬉シイ。



ン? チラっとお陽様の陰が遮られた。

何ダロウ?

遥か下の方にいるパパに伝える。

「パパ、お陽様の方向に何かいるヨ」


見上げたパパの小さい目が大きくなった。そして今まで聞いたことがない大きな声で叫んだ。

「ハイタカ襲来! ツィーリリリ!(全員急降下! 退避! 退避!)」


ウチたち兄弟姉妹は慌てて羽をたたみ、地上を目指す。ワガ家は時々避難訓練をやるけど、パパの声を聞いて『コレハ訓練ではナインダ』と緊張感が走っタ。

避難場所に決めていた、エゾ松の根元の茂みに身を隠す。ウチが一羽対一羽で守ることになっているシズクもウチにくっついてイル。大丈夫……大丈夫ダ。

そのまま声を潜め、息を潜め、上空からハイタカの気配が消えるのを待つ。マツ。マツ。


やがて、空気が柔らかくなるのがわかった。もう恐い鳥は去っていってしまったノカ? でもパパからもママからも『避難解除』の鳴き声が上がらない。


「もう、じっとしてらんない」

とシズクが体をモゾモゾと動かし、ウチたちの団子の塊りから離れ、地面にぴょんと降りた。

「シズク、まだダメダ。こっちに戻って」

ウチはヒソヒソ声だけど強く妹に呼びかけた。


その時。


低空飛行で何かが近づいてクル!

ハイタカがウチたちの気配に気づいて近くで待ち伏せしていたノダ。


ウチは咄嗟に飛び出していた。

「「ナギ! 戻れ」」

パパとママが同時に声をかけた。

それはデキナイ。うちがシズクをマモル。そしてあんなヤツ、かわして見せる!


ウチは、地面に降り、シズクを抱きとめ、エゾ松の根っこの隙間に押し込んだ。そしてヤツが飛んで来る飛行線を予測し、それを避けて飛び立った。

しかし。


ギャッ!

背中に熱さと激痛が走る。ウチの羽毛が舞い上がる。

パパから気をつけろと言われている、奴のジグザグ飛行に騙されてしまった。

背中に爪が食い込み、もう逃げることはできナイ。



ツィリリリ!

ヒリリリ!

ピリリリ!

ツィーリリリ!

ヒリリリ!

ピリリリ!


ウチの仲間たちの威嚇声が響く。

パパやママ、そして、お手伝いのお姉さんやほかの家族の大人たちがハイタカに体当たりしてイル。


「ウチはもうイイ、みんな逃げルンダ!」

そう声を振り絞ったが、誰も攻撃をやめナイ。


遂にウチはハイタカの爪から離れ、空中に放り出されタ。

ドスンと柔らかな針葉樹の落ち葉の上に落ちタ。


「キッキッキッ…」


辛うじて薄目を開け、見えた空には、沢山のウチの仲間たちに追いかけられ、逃げていくハイタカの姿。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ