【5話】アクアと仲良くなる
「今回も全問正解よ!」
「わーい!」
アクアが確認テストで全問正解するたびに、エレナは頭を撫でた。
頭を撫でると、アクアはそれはもう嬉しそうに笑う。
本当にかわいらしい。
だからエレナはその顔が見たくて、何度も頭を撫でまくっていた。
そういうコミュニケーションを取っていたことで、夕方になる頃にはアクアとすっかり仲良しに。
怖がられて怯えられていた最初の頃が、今ではもう嘘みたいだ。
「エレナ様。アクア様。夕食の準備が整いました。食堂までお越しください」
書斎に入ってきたイザベルが声をかけてくれた。
その声に、二人は元気に返事。
一緒になって書斎を出た。
食堂へ向かうエレナとアクアは、通路を歩いている。
手を繋ぎ合っていて、雰囲気は和気あいあいとしていた。
「あんなに楽しい令嬢教育は初めてでした! 明日も楽しみです!」
エレナを見上げるアクアは、純粋でまっすぐな笑顔をしている。
明るい太陽のようだった。
(あぁ……かわいい)
眩しい笑顔に、エレナはキュン。
今日一日だけで、何回こうなったのかわからない。
アクアはかわいすぎる。
これからもこんな子の令嬢教育ができるなんて最高だ。
二人は食堂へ入る。
横長の食卓テーブルの真ん中にエレナが腰を下ろすと、アクアがその右隣に座った。
「私いつもは端の席で食べているのですが、今日は一緒に食べてもいいですか?」
アクアが上目づかいで見つめてくる。
「もちろんよ!」
(アクアと隣同士で食事できるなんて夢みたいだわ!)
エレナは大興奮。
ぶんぶん首を振って頷いた。
「というか今日だけじゃなくて、これからは三食ずっと一緒に食べましょ!」
「いいんですか! やったー!」
アクアは両手を挙げて大喜びする。
その隣で、エレナはうっとりしていた。
(毎日三食こんなにかわいい子と一緒……最高だわ)
幸せ気分を味わっていると、バタン。
食堂の両扉が開いた。
扉の向こうから入ってきたのは、赤色の髪をした美少女。
背中まで伸びた赤色の髪に、夕焼けを思わせる鮮やかなオレンジの瞳をしている。
顔立ちはアクアとそっくりだ。超絶かわいい。
彼女がアクアの双子の姉――フレイだろう。
しかしその表情は、笑顔のアクアとは正反対。
口をへの字に曲げていて、すこぶる不機嫌だった。
席を立ったエレナは、フレイの方へ体を向けた。
「フレイ。明日の令嬢教育はあなたも――」
「お断りよ」
言葉の途中でバッサリと切られてしまう。
その言い方は、有無を言わさないような感じだった。
「今日のごはんは部屋で食べるわ。持ってきてちょうだい」
壁際に立っているメイドへそう伝えると、フレイは食堂から出ていってしまった。
夜の八時。
エレナはフレイの部屋の前に立っていた。
明日の令嬢教育に参加してくれるよう、声をかけに来ていた。
「話をしたいの。ドアを開けてくれないかな?」
声をかけてから、ノックする。
でも、返事はない。
もう何回か声かけとノックを繰り返しているが、まったくの無反応だった。
(この感じだと、今日はダメそうね)
あまりやりすぎても、しつこいと思われて逆効果だろう。
諦めたエレナは部屋の前から去った。
私室に戻ってきたエレナは、ベッドの縁に腰を掛ける。
「どうしたらフレイとも仲良くなれるのかしら」
そんなことを考えていると、コンコンと小さなノックの音が聞こえたきた。
「アクアです。お話があるのですが、入ってもよろしいでしょうか?」
「いいわよ」
「失礼します」
部屋に入ってきたアクアは、ペコリとお辞儀。
エレナのすぐ隣に、ちょこんと腰を下ろした。
「さっきはお姉ちゃんがごめんさい。でも、怒らないであげてほしいんです」
アクアがエレナを見上げる。