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【20話】妹との再会


 四人のところには、多くの貴族たちが挨拶にきた。

 周囲をぐるっと取り囲われてしまう。

 大きな権力を持っているドゥランシア公爵家に、少しでも自分の家の名を売っておきたいのだろう。

 

 背筋をピンと伸ばしたエレナは、口角をグイっと上げて笑顔で対応していく。

 

 いつもより大げさな笑顔をしていることで頬が吊りそうになるが、笑顔を絶やしてはならない。

 このパーティーでのエレナの役割は、ドゥランシア公爵夫人として相応しい振る舞いをすることにある。

 かなり辛いが、ここは我慢だ。



 しばらくして、周囲を囲っていた貴族たちがいなくなった。

 

(やっと少し落ち着けるわね)


 エレナは上げていた口角を元に戻す。

 頬の筋肉はカチカチに突っ張っていた。


「俺はこれから、パーティーの主催者と話をしてこなければならない。悪いが少し外させてもらう。フレイとアクアを頼めるか?」

「わかりました」


 やっと落ち着けたというのに、ジオルトはまだ挨拶が残っているようだ。

 名家の当主というのは大変だ。


(タフな人ね)


 離れていくたくましい背中に、そんなことを思う。

 なんとも頼もしい。


「なんだか疲れちゃった。休憩したいわ」


 肩を落としてるフレイは、両腕をだらんとさせていた。

 顔には疲れの色が濃く出ている。

 

 アクアはなにも言っていないが、状況はフレイとそう変わらない。

 しんどそうにしていた。

 

 そして、エレナも双子と同じ。

 ずっと挨拶をしていたことで、疲労がたまっていた。休みたい。

 

「お休みしましょうか」



 双子を連れて、エレナは会場の隅までやってきた。

 

 人の目はまだあるが、先ほどまでいた場所と比べたらずっと少ない。

 ここならゆっくりできるだろう。

 

(疲れたけど……パーティーはいいものね)

 

 少し後ろの方で飲み物を飲んでいる双子を見て、エレナは微笑んだ。

 

 挨拶をしてくる貴族の中には、お揃いのドレスを褒めてくれる人もいた。

 社交辞令かもしれないけど、エレナはそれが嬉しかった。

 

 パーティーへ来てよかった、と思っていたそのとき。

 

「お久しぶりですね!」


 隣からやってきた女性が、声をかけてきた。

 

 ピンク色の長い髪に、くりっとした青色の瞳。

 整っている顔立ちは、庇護欲をくすぐるようなかわいらしさを放っている。

 

 彼女は、エレナがよく知っている人物だった。

 

「メイリア……!」

 

 エレナから上がったのは、喉奥から絞り出したような声。

 表情に浮かんでいるのは、大きな驚きだ。


 彼女の名前は、メイリア・ハーシス。

 四つ離れた、エレナの妹だ。


 もう二度と会うことがないと思っていた。

 それだけに、衝撃が大きい。


「まさかこのような場所で、再び会うことになるとは思いませんでしたわ。それにしてもお姉様は、相変わらず醜い姿をしていますわね。美しい私とは大違い」


 勝ち誇った笑みを浮かべたメイリアは、見下している視線を向けてきた。

 

 その言葉。その表情。その視線。

 ハーシス子爵家にいたときとまったく変わらない。

 

(メイリアは、私を嘲笑するために声をかけてきたんだわ)


 数多く嫌がらせを受けてきたエレナには、それくらいのことはわかってしまう。

 

「……行きましょう」

 

 フレイとアクアを連れてここを去ろうとする。

 

 メイリアのことだ。

 エレナだけでなく、双子にも罵声を浴びせるかもしれない。

 

 自分が言われるだけなら、まだ耐えられる。

 でも、フレイとアクアに言うのはダメだ。それは絶対にさせない。

 

 だからそうなる前にここから離れようとしたのが、

 

「なに言ってんのよ! あんたなんかよりエレナの方がずっと美人よ! 鏡見てからもの言いなさいっての!」


 フレイがブチギレた。

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