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【17話】ジオルトの涙


 買い物を終えて、四人はドレスショップから出た。

 

「次はアクセサリーショップへ行こう」


 ジオルトの言葉に、エレナは眉を寄せる。

 嫌な予感がした。

 

(もしかしてジオルト様は、そこでもまた私にアクセサリーを買おうとしているんじゃないかしら!?)


 その気持ちは嬉しいのだが、さすがに申し訳ない。

 もしそう言われたら次こそはちゃんと断ろう、エレナはそう固く誓った。

 

 でも、ダメだった。

 

 双子にアクセサリーを買ったジオルトは、エレナにも同じものを買おうと提案してくれた。

 嫌な予感は的中したのだ。

 

 しかし今のエレナは、ドレスショップのときとは違う。

 今度こそは! 、と意気込んで断りの言葉を口にした。

 

 そうしたら、三人はガックリと肩を落として項垂れてしまった。

 死ぬほど落ち込んでしまったのだ。

 

 そんな反応をされたら、もう無理だった。

 結局エレナは、双子とお揃いのアクセサリーを買ってもらった。

 

 お金を払ってくれたジオルトには、本当に申し訳ない。

 罪悪感でいっぱいだ。

 

 でもそれと同じくらい、弾んでいる気持ちもあった。

 

 双子とお揃いのものを買ってもらえた。

 契約妻ということはわかっているが、家族の一員として扱ってもらえたような気がする。

 

 そういう扱いをしてもらえたことが、エレナは嬉しかった。


******


 帰りの馬車。

 エレナの対面に座るジオルトが、伺うような顔を見せた。

 

「今日は楽しめたか?」

「えぇ! 最高の一日だったわ!」

「ものすごく楽しかったです!」


 すぐにエレナの両隣から、双子の元気な声が飛び交った。

 二人とも大満足だったようだ。

 

 そしてもちろん、エレナだってそうだ。


「私もとても楽しめました。ありがとうございます」

 

 罪悪感はあるが、ものすごく楽しかった。

 一生忘れない、大切な思い出となるだろう。

 

 今日という素晴らしい日を作ってくれたジオルトには、感謝の気持ちしかない。

 

「お父様、今日はありがとうね」


 フレイがクワッとジオルトを見上げた。

 その表情には、いっぱいの喜びが浮かんでいる。

 

「私たち三人を大事に思ってくれていることが、ものすごく伝わってきたわ!」

「私もです! ありがとうございました!」


 双子からの感謝を受けたジオルトは、目頭を押さえた。

 指の間からは涙がこぼれ落ちている。

 

「すまない……お前たちにそんな風に言ってもらえる日が来るとは思わなくてな」


 ジオルトは悲しくて泣いているのではない。

 双子の感謝の言葉に感動していた。嬉し涙だった。

 

「俺の方こそ、ありがとう」


 双子を交互に見て、ジオルトは笑みを浮かべた。

 どこまでも温かい笑みだ。

 

 それは、娘たちをどこまでも大切に想う父の顔だった。

 

(素敵な家族だわ)

 

 愛に溢れた家族のワンシーンを間近で見られて、エレナは感動。

 温かな気持ちを感じていた。

読んでいただきありがとうございます!


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