【16話】四人でお買い物へ
その日。
先日約束した通り、四人は街へ買い物に来ていた。
舗装された道の上では、大勢の人が出歩いている。
道の端には、露店がずらっと並んでいた。
にぎやかな声が、あちらこちらから聞こえてくる。
街は活気に溢れており、大いに賑わっていた。
そんな光景に、フレイとアクアは大興奮。
キラキラと瞳を光らせて、ウキウキしている。
そしてエレナも、同じように大興奮していた。
でもそれは、双子とは違う理由でだ。
左手にフレイ。
右手にアクア。
エレナは今、美少女二人と手を繋ぎながら街を歩いている。
まさに両手に花。
歩いているだけでも楽しい。
エレナの隣を歩くジオルトは少し寂しそうにしているが、浮かれに浮かれているエレナはそれにまったく気づいていなかった。
「まずはここだ」
ジオルトの足が止まる。
そこはドレスショップの前だった。
ジオルトはきっと、フレイとアクアにドレスを買ってあげるつもりなのだろう。
最初にそれをすれば、双子の心をガッと掴める。距離がさらに縮まること間違いなしだ。
(ナイスです!)
良い作戦だ。
エレナは心の中で大きな称賛を送った。
四人はドレスショップへ入る。
高級感溢れる店内には、色々な種類のドレスが飾られていた。
そのドレスは、どれもが美しい。
エレナとジオルトの先を歩いていく双子は、店内の様子に感嘆の声を漏らしていた。
「気にいったものがあれば言ってくれ。それを購入しよう」
フレイとアクアが、いっせいに振り返る。
ジオルトの顔をバッと見上げた。
買ってもいいの? 、と言いたげだ。
口元に笑みを浮かべたジオルトは、二人へ頷いた。
「近々社交パーティーが開かれるのだが、実は四人ともそこに招待されていてな。四人で参加するパーティーは初めてだ。せっかくの機会だから、新しいドレスを着て出席するのもいいと思ってな」
フレイとアクアは嬉しそうに笑ってから、いっせいにドレスを選び始める。
そしてほぼ同時に、
「決めたわ!」
「これにします!」
ドレスを決めた。
フレイは赤色、アクアは青色のドレスを選んだ。
両方とも滑らかな高級素材で作られていて、両方とも金色の星の刺繡が入っている。
(そっくりなデザインのドレスを選んだのね。……うん? そっくりというか、これは……)
両方ともまったく同じデザインをしている。
違うのは色だけだ。
つまり、同じドレスの色違いだった。
さすがは双子。
服のセンスまで似通っているらしい。
「二人は決まったようだな。で、エレナはどうするんだ?」
「……へ?」
「金ならもちろん俺が出す。遠慮はいらないぞ」
ここへ来たのは、フレイとアクアのドレスを買うためだと思っていた。
それなのにジオルトはさも当然のように、エレナもドレスを買うだろ? 、みたいな雰囲気を出している。
(どうしてジオルト様はそんなことを……。私のドレスを買っても双子との距離は縮まらないのに)
ジオルトの考えは読めないが、ともかくドレスを買ってもらう理由はない。
だから断ろうとしたのだが、
「そうだ! エレナも私たちと同じデザインのドレスにしなさいよ! 大人サイズもあるわよ!」
「みんなでお揃いのドレス……最高です!」
フレイとアクアが便乗してきてしまった。
「それはいい考えだな」
「お姉ちゃん、ナイスです!」
「ふふん。もっと褒めてもいいのよ!」
しかもエレナをそっちのけで、話が急速に進んでしまっているではないか。
三人の頭の中では既に、エレナもお揃いのドレスを買うことになっているみたいだ。
この空気で、私は別にドレスを買わなくても、と言えるだろうか。
いや、無理だ。もう断れない。
「……私も買わせていただきます」
父と娘たちのコンピプレイに、エレナは完敗。
双子と同じデザインの、はちみつ色のドレスを買ってもらった。




