アンダータウン_実力至上主義の町
森を抜けた2人は野営をしていた
「それにしてもあのブラックベアーを倒してしまうなんて…」
「あの程度の獣なぞ飽きるほどしておる」
「あの程度って…たはは」
正直言って厄介な人物に出会ったと思っていた、目の前にいる少女は見た目は可憐で人畜無害そうな印象を抱くかもしれない
それはあくまでも一見である場合だ、私にはわかるこの少女は「普通」ではないと
「…なにをそんなに見ている?」
「い、いえいえ!あっそんなことよりそろそろ焼けそうですよ!」
目の前にある焚火に刺して焼いてあった獣の肉を示す、うん旨く焼けてる
「そうか、ではいただこう」
「…!」
少女が思わず舌を出して熱がっている、なんとも微笑ましい姿だろうか
「慌てなくても沢山ありますよ」
「そんなに慌ててない」
くすっと思わず笑みがこぼれる、なんだかんだ言って年相応なんだなぁって
「ええい、その慈しむ笑みを浮かべるのをやめよ」
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「ここがアンダータウンです」
「ここに強者が集まると言うのだな」
獣ではなく人対人の闘争が得られるという町、想像するだけでも武者震いが止まらぬ
「クックック、ここまでの案内礼を言おう」
「ここからはワシ一人で充分だ」
とりあえず強者が集まる場所へと向かいたいものだが、まあ見当もつかない
「じゃあ私はこれで」
「…少々待て、ぬしは何処へ向かうのだ?」
「えー私は、ギルドへちょっと報告を」
「ぎるど…?」
「えっとですねまあ私みたいな冒険者が集まるところというか~」
ひらめいた
「ふむ、先ほどはここまででよいと言ったが、気が変わった」
「その「ぼうけんしゃぎるど」とやらへ連れて行ってもらおうか」
「えぇ…まあ別にいいですけど」
ユーバルは少し苦笑しながらも案内を承諾した
「ここが冒険者ギルド「ラアカ・イラム」です、イラムってよく略されるんですけど」
「ほお、ここがぼうけんしゃぎるどという場所か」
予想通りそこいらとは違う雰囲気を出しておるな
「ではゆくぞ、ユーバル」「ああ!待ってください!」
建物内に入ると屈強な男達がこちらを一瞥した
…が女2人とみると鼻で笑うものが多数だった
そんなものに気にもくれず、まっすぐ進み受付というところへユーバルに連れていかれた
「おつかれさまです、ユーバルです」
机の向かいに居た男はユーバルを見ると笑顔で答えた
「おお!ユーバルちゃん!無事だったか」
「いや~常夜の森に例のクエストに向かうって言うもんだから心配しちゃってねぇ」
「ありがとうございます、ですが実は成功したワケではなくてデスネ…」
男はわかってたかのように苦笑しながら
「いやいや、あれはいまだに誰一人として成功してないししょうがないよ」
「それで隣のお嬢さんは?」
ふとこちらに目線を向けてくる、ああお嬢さんとはワシのことか
「…強者を探し、闘争の頂を目指している」
「おぉう、血気盛んなお嬢さんだね」
「あ!いや、あのそのこれは」
「ああ!この子にもギルド員というか冒険許可証の発行をと思って」
それを聞くと男は少しいぶかしげな顔をした
「さすがに、このお嬢さんに出すっていうのもなぁ」
「実は…この子ブラックベアーを…」
ユーバルが男に耳うちに話すと明らかにワシを見る目が変わった
「嘘だろ…でもユーバルちゃんが嘘をつくわけないし」
「…わかった、許可証を発行しよう」
「む?きょかしょう?」
「お嬢ちゃん、名前は?」
「おい、ユーバルよワシには一体なんだか…」
すると今度はユーバルがワシとコソコソ話をしてきた
(いいから!許可証さえ作っとけばほかの町に行く時とかに便利だから)
(…より多くの地に行けるということだな?)
(そうそう!だから作ってたほうが得だよ)
正直ワシにはよくわからぬがこの世界の処世術にはユーバルに任せてたほうが良いな
「ワシは…リアン」
「「リアン」という名だ」
「それでこの薄っぺらいものが必要なのだな」
「そうそう、この町は実力至上主義といわれるけど、流石に街中での私闘はね…」
「治安維持として認めらるという訳か」
まあ過程や方法など関係ない、これで思う存分闘争を愉しめるというものだ
「それにしてもぎるどから出た時から随分と執着する者がおるとは」
「ユーバルよ気づいておるか」
「…できれば気づきたくもなかったんですけどね」
すると物陰から数人の男が姿を現した
「ほお、尾行に気が付くとは唯の冒険ごっこってなわけじゃなさそうだな」
汚いニヤケ面を浮かべて口を開く
「それともお兄さん達がお嬢様をお守りいたしましょうかってか!」
「…もうよい、うぬらの実力を測るまでもない」
「失せろ」
男たちが顔を見合わせて再度笑い出す
「ぎゃはは、失せろだってよ!笑わせてくれるぜ」
「お嬢ちゃんよ、訂正するなら今のうちだぜ」
ユーバルがこっそり耳うちをする
(この人たち、ろくな実力もなく冒険者ってだけでイキってる連中ですよ)
(無視したほうが…)
それはそうだ、さっきから少しでも実力があればわかるレベルで殺気を放っているが、まるで感じていない
ユーバルはそれを察知して穏便に済ませるためワシに助言したのだろうが
「聞こえなかったのか、失せろと言ったのだ」
「…手加減は要らねえ、痛い目を見せてやらぁ!」
ユーバルはその日居酒屋で語った
それはあっという間の出来事だったらしい
「そりゃあいかにブラックベアーをぶちのめしたとはいえ大の男数人だよ」
「少しは手こずると思うぢゃん?」
一方的なやられっぷりならまだ良い
一瞬といっても過言ではない短時間で男たちは地に伏せたのだ
「あの程度草をかき分ける程度にも至らぬ」
「ぬしは道に落ちている小石を蹴飛ばして勝った気になれるのか?」
「いや、なんないですけど」
「だろう」
当然という表情で目の前のお肉をほおばるリアン
「ああー!それ楽しみにしてたお肉!」
「ふふ、今日の露払い料としてもらったぞ」
「そんな~」
にぎやかな店内で戦利品のお金で食事を楽しむ二人であった
一応戦闘描写もない雑魚にも名前はあります
リーダー格「ザッコ」
名前通りの強さ、町周辺の雑魚狩りでイキってる集団のリーダー
ちまちま格下や住民からカツアゲして貯めていたお金はすべてリアンに献上(強奪)された
ちなみにぶちのめされたことを理解する前に意識を失ったので何も覚えていない