出会いと肩慣らし
世界観:ドラ◯エみたいに魔物や魔法もあるよ
充分な食糧を持ち森の中を歩き続け数日、ある事に気がついた
「ふむ…取り敢えず人のおる場所へとと思っておったが」
所々で人が野営していたであろう痕跡はあったものの人の気配というものが一切しなかった
「これもまた鍛錬ということか」
ふんっと一息入れ木に飛び乗り頂上から辺りを見回すも一面森であった
「そうか、取り敢えず山を背に進むとするか」
降り立つとまた草木を掻き分けて奥へと進むのであった
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「まったく、こんな面倒な依頼引き受けるんじゃなかったなぁ」
ぶつくさ言いながら重い足取りで森の中を進む
「でもなぁ、私みたいな駆け出しにしたら条件が良かったし」
「格好良く冒険者になったのは良かったけど…現実は厳しいなあ」
朱色の髪をなびかせながら愚痴を言うのもそろそろ飽きてきた
「にしても、かつての公爵家の娘の安否なんてこの広大な常夜の森じゃあ無理だよぉ」
「でもやらないと、もうあの村に戻りたくないし」
グッと剣を握ってまた一歩踏み出す
「えっ…?まさか人の気配?」
サッと木の影に隠れると五感を研ぎ澄ます
こういう悪い感は外れると良いんだけど、確かに前方の方から人の気配を感じた。
(魔物…?いや、確かに人の気配…?)
剣を握る手に力が籠る
ザッザッザッと力強い足取りでこちらに向かってくるっ!
(やられるっ!?)
「さあ!潜んでいるのはわかっておる!」
「出てくるつもりがないのであれば…こちらから参るッ!」
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「ひぃぃぃ!こちらに敵意はないですぅ!」
完璧と言っても過言ではない、完全に気配を断たれていた
キッカケは些細な事、微かに人の動く気配が感じられただけであった
「…興が削がれたわ」
実際に死角から出てきたのは赤い髪をした女、武装はしていたが全くと闘志が感じられなかった
久々の人との接触、もしかしたら手合わせ等と希望を持っていたが当てが外れる、一瞥もせずに通り過ぎようとした時
「ま、まままま待ってください!」
「なんだ?」
「こここのあたりで、貴女のような金色の髪をした女性を見ませんでしたか!?」
「…久方ぶりに人に会ったのはうぬが初めてだ、ではな」
このような敵意のない者には興味はない
「待ってください!お願いがあります!」
懇願する様に追ってきたが見向きもせず歩き始める
「話だけでも!何でも協力しますから!」
協力…?
ピタリと歩む足を止める、このまま闇雲に歩いていては埒があかない
「…話だけ、聞いてやろう」
「ありがとう!ございます!」
〜〜〜
「私の名前は「ユーバル」と言います、駆け出しの冒険者なんです」
「そうか」
「よくバルなんて言われてるんですよーなんて…」
「それで、話とは?」
緊張した顔でこちらを向いて喋り始める
「…探してる人がいまして、貴女のような金髪でマリアンって言う公爵家の元娘なんですが」
「数年前に崖崩れに遭いまして、そこから行方不明なんです…公爵家の方から安否の確認の依頼があって探しているんです」
「知らぬな」
「そんなぁ…では貴女は一体何者なんですか?この常夜の森に1人で居るなんて…」
「ワシは闘争を求めておるのみ、ここに居る理由など己を高め強き者を追い求めておる、それだけだ」
引き攣った笑顔で「そ、そうですか」と呟くユーバル
「それにうぬが言った「なんでも協力する」に嘘偽りはないか?」
「え、ええお金は少ししか持ってませんけど…」
「いや、銭などいらぬ」
「ワシが求めておるのは闘争のみ、故に強き者が集まる所を知りたい」
「えっ!?ちょっと待ってくださいね!」
…
「あっ!そうだ!私の滞在している街なんですけど、まさに力こそ正義というか…そんな場所があるんですけど」
「丁度良い、そこに案内をしてくれ」
遂に闘争の集まる場所へとゆくことができるというもの拳を交えることを想像すると悦びが止まらぬ!
「あの、笑顔が怖いんですケド…」
「では、いきましょうか」
「うむ」
火を消して立ち上がるとこの場に合わないワシを狙った殺気が突き刺さる
「ユーバルよ!引いて身を隠せ!」
「えっ!ひっひい!」
叫んだと同時にその場に抉れた爪痕が残った
「フンッ、所詮獣風情が殺気が漏れ出ておるわ!」
その肉体に1発カウンターを叩き込むと同時に間合いを取り構え直す
1匹の獣と女性が相見える形となった
(あれって危険度高ランクのブラックベアーじゃない!?)
「隠れながら身を守れい、ぬしの面倒までは見切れぬぞ」
人間のサイズを超す凶暴な魔物に対峙する女性
いくら腕の立つ達人らしい佇まいだが相手が悪すぎる
隠れながらいざという時には逃げることも考えている矢先に魔物が動いた
「ほう、そこら辺の獣とは一線を引くか…」
軽々と避けると恐怖を感じていないのか笑みを浮かべていた
「血湧き肉躍るとはこのことッ!」
女性が金色の髪を躍らせながら素早く打撃を叩き込んでいく…全てを肉体の急所の箇所に
しかし相手も怯みはしているが攻撃が効いているのかも怪しい
「ふははッこれこそ闘い!闘争!命を賭けた戦い!」
再び距離を取る1人と1匹
「だが、もう獣の相手は飽きておる」
雰囲気がガラッと変わるとその構えを変えた
動くと予感した時には既にその拳は魔物の頭、側頭部に鋭く命中していた
ぐらりと魔物の姿勢が崩れるとドォンと倒れた
「二撃必誅」
「…」
思わず言葉を失った、あの魔物は数人掛かりで致命傷を負わせられるかどうかのレベル
それをこうもあっさりと…
「ふぅ、やはり知能のある者と手合わせせねば獣相手では単純でたかが知れる」
「あっあの!本当に強いんですね!」
「同じ女性として憧れます!」
こちらをじっと見てくる
「…強き者におなごやおのこなぞ関係無し」
拳を握りこちらを向き真っ直ぐな目で続ける
「勝利こそ強者…ただそれだけ」
「ゆくぞ」
「あっ待ってください!」
金色と赤色の髪がまた森の中を進んでいくのであった
簡単な人物紹介
マリアン(転生前)
冷酷な令嬢、伯爵家の娘であり美しい娘として様々な求婚を受けていた
とある人物に婚約者を盗られそうになり色々と画作するも無事看破され流刑に会いその移動途中で悲運な最後を迎える
実は元から戦闘に関する肉体能力の才能はあった
元マリアン(転生後)
馬車から投げ出され絶命するも戦闘狂の魂が転生し新たな生命として蘇生、鍛錬と身体作りにより強化、猛者が集まる所を目指す
闘争こそ求めているが実は美味いものも大好き
ユーバル
令嬢の安否確認任務を引き受けてしまった駆け出し冒険者、自身の運の無さを嘆いている
出身の村を出たいがために冒険者となった、主人公が位置を完全に把握できないほどの隠密スキルは天性の実力