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71 因果応報2

 キャロラインの功績を自分のものだと勘違いし、嫁いでから能力の低さが露呈した姉達は、婚家から詐欺だと罵られたことに激高して本性を見せてしまったことと、本国で妹であるキャロラインへの態度が暴露されたため、幾ら見た目が美しくても性根の悪い妻では国民に寄り添えないと嫁ぎ先から冷遇されていた。

 それでも離婚するのは外聞が憚られるため、婚家にいさせてはもらえたのだが、ある朝屋敷に絶叫が響き渡ったのだという。


「いやああああ! 瞳が……顔が……髪が……! 嘘よ! こんなの嘘よおおお!」


 いつものように自分の美しい顔を見て鬱屈した気持ちを晴らそうと、鏡を覗いた姉達は絶叫をあげた。

 何故なら宝石のようだった青い瞳は灰色に濁り、顔には皺と染みが刻まれ、美しかった金髪はくすんだ灰黒色に変化していたからだ。

 双子だったからか同日に一夜にして老婆へ変わってしまった二人の姉達に、流石に驚いた婚家が出生の調査をした結果、驚くべき事実が判明したのである。


「お二人は獣人である鷺の血を引いておられました。ご存知の通り獣人と人族が交わった場合、優性遺伝子は獣人であり人族の子は生まれません。ちなみに王妃殿下の子であることは産婆へ確認済ですので、お二人の父親がアカシア国王ではなく鷺であることが明白となりました。我が国はアカシア王国の王女を伴侶として望んだのであって、獣人と婚姻を結ばされた王子殿下と公爵閣下は大変なお怒りです。このことは重大な詐欺行為と見做し厳重に抗議をいたします」


 獣人をあまりよく思っていない国へ嫁いだ二人が、実は獣人だったなど笑い話にもならない。

 憤慨するような使者の口上に、国王はまだ不快気な様子を崩していないが、事前に真相と証拠を使者から提示されていた重臣達は力なく項垂れていた。


 アカシア王国の近隣国に鷺の獣人は住んでいないため、あまり知られていないが、鷺の獣人は見た目が人族と変わらない。

 背中に翼が生えた烏など他の鳥系の獣人と違い、人族と一切見た目が変わらないのである。

 唯一の特徴といえば金髪青眼なことであり、見た目も儚げで美男美女が多いということだ。


 鷺はその美しい見た目を利用し旅芸人や占い師などに扮し、他種族から金を巻き上げるのを生業としている者が多い。

 しかしそれは若い時だけの話だ。

 個人によって差はあるが大体20歳を過ぎると、艶やかだった金髪はパサついた灰黒色の髪になり、綺麗な青眼は灰色に濁ってしまい、一気に老け込む習性がある。

 そのため鷺は若い間に一生分の資金を他種族から奪い取るのだ。


 身体能力が優れる獣人の中で、鷺だけが人族と変わらないため、他の種族への劣等感からそういった行為に及んでいると噂されるが、面と向かって鷺の者を問い質した輩はいないので、真意の程はわからない。

 けれどそういった者が多くいることから獣人の間では、若い鷺は白鷺、年老いた鷺は黒鷺と呼ばれ鷺族だけに詐欺族と揶揄されていた。

 勿論白鷺の時の美しさは格別なので承知の上で囲っている輩もいるという話だが、鷺は黒鷺になってから得た同族の伴侶と一生添い遂げるため、基本的に白鷺の間に関係した他種族の異性は金目当てなのである。


 使者が提示した証拠には、王妃の実家の使用人や鷺の獣人の証言などの他に、実家へ里帰りをした王妃が大金を払って、旅芸人の男を自室へ呼び寄せた期日まで克明に記されていた。

 金髪青眼の美しい旅芸人の一行が当時アカシア王国を回っていたことは、公式の記録にもある。

 だがその旅芸人達が鷺の獣人であったということは記載されておらず、ましてや王妃がその中の一人と不貞を働いていたなど思いもよらなかった。


 しかし様々な証拠と、双子の王女が一晩で白鷺から黒鷺へ老化してしまった事実が、王妃の不貞を確実なものとしている。

 たぶん当の王妃も不貞の相手が鷺の獣人だということは知らなかったのだろう。

 獣人の身体的特徴がなかったことと、鷺の特徴である金髪青眼が、たまたまアカシア王族の特徴と似通っていたため、これまでキャロラインの姉王女達の出自は疑われたことがなかったが、嫁いでから発覚するという最悪の事態に重臣達は頭を抱えた。


 鷺のことをよく知らない国王はまだ信じられずにいたが、重臣達の説明と使者が提示する証拠に徐々に顔色を変え、やがて土気色になった頃には、婚姻無効の手続きと多額の慰謝料を払うことを承認せざるを得なかったのだった。


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