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プロローグ

 肺が苦しい。

 息が出来ない。


 制御できずにグルグルと回る自分の身体を容赦なく濁流が押し流してゆく中で、キャロラインは死を覚悟した。

 脳裏には番だからと優しくしてくれた婚約者の顔が浮かぶ。


 家族に蔑まれていたキャロラインへ、優しさをくれた人。

 役立たずの自分を、選んでくれた唯一の人。

 そして、初めて好きになった人。


 けれど、全部、全部……偽りだった。


 滝へ落ちるキャロラインへ、必死に手を伸ばしてくれた彼の手を拒んだのは自分だ。

 キャロラインだってこんな別れ方をしたかったわけではない。

 だが、これで良かったのかもしれない。

 本物の番ではないのに、中途半端に優しくされても虚しさが広がるだけだから。


 苦しいのも痛いのも、愛されないのも、もう嫌なのだ。

 でも……。


 ゴボッと肺に残っていた最後の空気が漏れ、キャロラインの意識が薄れる。

 川底の阿僧祇の闇と水面に映る那由多の光が目まぐるしく交錯する水中で、キャロラインは今更ながら瞼に浮かんだ白銀の面影へ無意識に手を伸ばそうとして、力尽きた。

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