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第68話現実問題~自警団長side~

 仲間を供に傭兵をしていた俺は、ある国のある男爵領の自警団に入団した。理由は簡単だ。金払いが良いからだ。

 なんでも元国王だって言うじゃねぇか。

 ただし王様の血は一滴も受け継いでないって話だ。

 それを聞いた時はどんな毒婦に引っ掛かったのかと思ったぜ!

 まぁ、聞けば母親は将来を約束した恋人と引き離されて無理矢理手籠めにされたらしい。妾にされて散々弄ばれたって話だ。別の話は、結構野心家で胎にガキがいる事を知っていて王様の妾になったんだろうってのもあった。どれが本当か分からん。ただ、本人を見て野心家の毒婦ではない事は理解できた。


 流石は王様が惚れ込むだけあって容姿は抜群に良い。

 絶世の美貌ってのはこういうものか、と感心さえした。質素な装いをしても光り輝いてやがるぜ。それと同時に、この人じゃあ、王侯貴族と渡り合っていくのは無理だとも思った。貴族ってのを理解してない。


 本当に側妃まで上り詰めたのか!?――と、疑いたくなるくらい貴族社会の常識を理解してなかった。傭兵崩れの俺だって解っている事を全く知らないのだ。驚くほどにな。これには俺だけじゃない。仲間達ですら驚きを隠せなかった程だ。


 俺がその事を指摘すると「私は貴族の常識を知らないから」と恥ずかしそうに返された。だから他の妃達から教え込まれたようだ。もっとも全然身に入ってない。本人もなんとか貴族社会に馴染もうと頑張ったらしい。まぁ、殆ど平民同然の暮らしをしてきたせいか、貴族としての生活習慣に戸惑い、そこでの暮らしが肌に合わなかったとか。


 貴族同士の付き合い方が解らなかった、とも言っていた。


 どうやら社交場にも顔を出さなかったようだ。


 それはもう妃じゃねぇ――と思った。


 まぁ、あの容姿だ!側妃の立場じゃなければ何処かの貴族の愛人になっていただろうな。

 恋人がいたそうだが、そんなもの貴族の世界じゃあ関係ない。無理矢理奪われてただろうさ。それか最悪の場合、恋人が殺されていた可能性だってある。

 しかもだ、息子の方もあれだけの器量よし。母親似とあっては貴族社会に知られた時が問題だ。それこそ王侯貴族の玩具になってた可能性すらあるな。それを考えれば王様に見初められたのは運がいい。




「はあ!?護衛!?俺が!?」


「そうだ」


「いやいや、俺は騎士じゃない」


「男爵の希望だ」


「それこそ訳が分からない。何だって自警団の俺が男爵の母親の護衛をしなきゃならないんだ?」


「お前が一番腕が立つからだろう」


「ぐっ!」


 そう言われると反論し難い。

 確かに俺は傭兵崩れで他の自警団の連中よりも腕が立つ自信がある。だから過去に貴族から護衛の仕事をこなしていた事もあった。まぁ、出来なくはない。問題は……。


「男爵の母君、シュゼット様は承知してるんですか?」


「ああ、御子息が選んだ護衛ならば文句はないそうだ」


 いや!そこは問い詰めろ!せめて騎士階級の奴にしろ!

 俺は思わずそう叫びそうになりながら言葉を呑む。


「それにこれは既に決まった事だ」


 無慈悲な役人(監視人)の言葉に俺は項垂れてしまうのであった。

 ああ~~憂鬱、だ! なんで護衛なんかしなきゃなんねぇ~んだっ!?

 そもそも護衛なんているのか!?この田舎で!?

 あ、いるか……。

 山賊も出るし、盗賊団だって出現するからな~!田舎には!!それに獣だっているしな! 男爵が母親の護衛を必要とする理由は十分あった。

 だがだ!それでも腑に落ちないものは残る。


「確か、専任の騎士がいた筈ですが?」


「ああ、いたな。側妃時代に一人」


「その男じゃダメなんですか?」


「騎士家系の男が男爵になった元国王や妃の位を失った女性に仕えると思うか?」


「……普通は仕えませんね」


「だろう?しかもその騎士は曲がりなりにも騎士家系の出身だ」


「ですが噂じゃあ、元国王親子にかなり心酔していたって話ですが……」


「本人が良くても、家族や親族がそうとは限らないだろう?」


「反対されていると」


「まともな親ならそうするだろう?自分の息子が泥船よりも酷い、底なし沼のような場所に自ら進むとあってはな」


 まぁ、確かにその通りだ。俺だって自分の息子がその道に行こうってのなら大反対するだろうぜ。俺や仲間たちは金で雇われている身だ。給料分の仕事はする。だがそれ以上の事はしねぇーんだ。


「仕方ありませんね。分かりました」


 俺は渋々だが頷いた。まぁ、仕事なら仕方がねぇーよな!!





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